見出し画像

札幌でおいしいお酒とごはん #5「積丹雲丹ツアー」(佐々木禎子)

 私のウニゲル係数が高まる時期がやって来た。
 夏だ!!
 ここ数年、夏になると、積丹方面の、雲丹料理で有名な宿をとり一泊二日で旅をすることにしている。
 札幌からだと車で日帰りで雲丹丼や雲丹料理を楽しんで帰宅もできるのです。できるのですが、それでは運転手がお酒飲めないんですよね。だからできるなら宿泊がいいよなーって。
 宿に泊って好きなだけ雲丹で口んなかをいっぱいにしたい。胃袋を雲丹で満たしたい。雲丹酒雲丹酒雲丹酒海鮮なにか雲丹くらいにしたい。
 という謎の欲望を発動させる私にムリに連れ出されたのは、今回も藤沢チヒロさんであった。いつもすみません。彼女は、つきあいのいい人である。チヒロさんは特に文句も言わず「ワーケーションです」って言いながら宿でずーっと仕事してました。そして私はそれを眺めながらソシャゲをしつつ酒を飲んでいました。

 お宿、人がたくさんいらしてて「雲丹の時期だからか」とぼんやり思ってたのですが、宿のかたに「美国神社のお祭りなんですよ。お祭目当てで泊りにいらっしゃるかたも多くて」と教えていただいた。
 とても親切に、
「火祭りというのがあって、火のなかを歩くんですよ」
「天狗さんは洗濯ものが嫌いで、洗濯ものを干していると怒るんです」
「神輿と天狗さんたちが練り歩いていて、すぐ目の前の駐車場でも天狗さんが暴れてて」
 などなどと祭りの説明を熱く語ってくださって。
 ……え、なんぞ!? それ、なに!?
 私はわりとトンチキななにかを想像して、そんなん見たいじゃんと「じゃあ見たいので夕飯早く食べて、お祭見にいきます」って夕飯時間を早めて設定いただきました。
 私はかなり不可思議な祭りを想像してたんですが、チヒロさんはおなじ説明聞いてちゃんと理解してたみたいですね。
 
 頭の片隅で「なんで海沿いの町なのに天狗さんが火渡りしてんだろうなあ」「龍神じゃないんだなあ」みたいなことを思い、帰宅したら検索して調べようと思っていた。のは、まあ、さておいて。今回の旅の主役は雲丹なので。
 
 という、今回の宿は料理旅館「美国観光ハウス」さんです。

美国のバス停からすぐのお宿


 http://www.bikunihouse.com/

 こちら、夏のお料理の主役はもちろん雲丹です。
 前菜が出てきて座った椅子から腰が浮く。
 見た目が綺麗。食器も美しい。

前菜。日本酒を呼びまくる!

 だいたい「とりあえずビール派」なんですが、今回、ここに至るまでに勝手にビールはじまっちゃてたこともあり「もういきなり日本酒いっちゃおうね」で、ここは地酒が欲しいので神威鶴でスタートです。

地元のブランド、神居鶴。名前がカッコイイ

 私、ちょっとずつつまめるものがたくさん出てくるってのが大好きで。「アワビの肝煮山椒入り」の山椒の香りとアワビの肝ものほろっとした苦さが舌先を刺激します。「ツブと柔らかアワビとイカの雲丹和え焼き雲丹のせ」の、てっぺんに載ってる焼き雲丹ちょっとだけつまんで「うま」って言いながら日本酒を飲み、突き崩してツブアワビイカウニを口のなかにつるっと滑り込ませ「うまっ」ってまた言って日本酒を飲み。はい。エンドレスそうしたいけど、酒はね。飲んだら尽きるのよ。速いペースで日本酒飲んじゃう。「南蛮海老の足の唐揚げ」をカリッポリッとしてから「タコの柔らか煮」を食べると、ついつい言っちゃうのは「タコって鮮度がいいのは本当に美味しいんだよね」みたいな話。たぶんこれあらゆる場で美味しいタコ食べるとみんなに言ってるので、周りの人はきっと聞き飽きてるやつ。なぜか私は人に「どこで食べたタコが好き」というのを聞きたがる。チヒロさんは今回、直前にワーケーションで道東にいっていたのでもそこで食べたものの話などを聞いたり。

どーん✨

 そうこうしてると「磯の宝蒸し」という茶碗蒸しに雲丹とアワビがつまった命名とおりの宝貝が運ばれ「これ、次はなに飲みます? 日本酒もいいけどいっそ白ワインもいけちゃいませんか(私たちならボトル一本は確実に飲めるよねという信頼)」の提案に「そうしましょう」と「NIKI Hills ワイナリー/HATSUYUKI はつゆき」。何年のかまで覚えてないけど、フルーティで飲みやすい美味しい白でした。

仁木は積丹からみると余市を挟んで二つ隣の町。フルーツで有名。

 そこで本日の!
 私にとっての真打ちである!!
 生雲丹がやってきた。お造りオールスータズを従えての登場です。雲丹とアワビがどーんとツートップで「掬っててくれていいんでよ。どうぞ好きなだけ」ってど真ん中に。いくらが添え物として小脇で支えてくれているプレート配置に「夏だ。夏の雲丹食べにきたんだなあ」って気持ちになりました。なんとなくですが、私のなかで、いくらが主役になるのは秋以降だからね……。

幾何学的に美しく配置されたお造り、2人前。雲丹と鮑は中央に
雲丹! この三角の器、思ったよりも深い

 雲丹食べているうちにどんどん満腹になっていく。なっていっていましたが、今回、贅沢旅なので「宝楽焼き」をチョイスしているためここで宝楽焼きも登場です。
 アワビ海老ツブ帆立を焼いたもの。旨味がぎゅっと内側に閉じ込められていて噛むとじゅわっと頬の内側で「美味しい」が滲み出てくる。滋味、いただいてますって感じになり、白ワインで喉を潤す。

海の滋味たちが仲良く焼かれている。ヘルシー!

 このへんでご飯どうしますかと問われまして。雲丹丼にして食べたりいくら丼にして食べたりするのに白米がもらえるのです。私はご飯はパスしてましたがチヒロさんは少しだけ白米をいただいて、いくら丼にして食べてました。美味しそうでした。
 そこでさらっと「雲丹の磯辺揚げ」に「ヘラ蟹の味噌汁」。

雲丹って、海苔と一緒に火を通すのも天才
蟹のポーズが元気いい

 ヘラ蟹は出汁が美味しい蟹みたいで、食べづらいんだけど味噌汁ガチ旨でした。
 旨いアイスのデザートでフィニッシュ。

デザートまで抜かりなくおいしかった


 ごちそうさまでしたーってしてから、部屋に一旦戻ったその隙間も仕事をする藤沢チヒロさん。
 そしてその隙間もなんか飲んでごろごろする私。自分がだめだなあと感じたが、私が働かないあいだも誰かが働いているんだなーみたいな、ほんわりとよくわからない安堵感。「これが社会というものだ」って思ったけど、きっと違うね。違ってもいいね。しかし今回、藤沢チヒロさんには「ご自愛ください。さすがにあなた働きすぎじゃね!?」という強い感情が生まれました。
 というのは、さておき。

徒歩10分ほどの美国神社に向かいます

 出かけた火祭りは勇猛なもので天狗さんはかっこよかったし祭りの若い衆もかっこよかったし炎の守り役のおじさまたちもかっこよかったし、ぜんぶがぜんぶかっこよかったです。

起こした火に大量のおがくずをくべて大きくし…
「天狗さん」が、勇猛に炎の中を突っ切る!
くぐりぬける!

 調べたところ、天狗さんは、猿田彦さんなんですね。海近いからってことばかり考えてたけど美国とか積丹、山もあるもんね。崖沿いの道やら山道やらを歩きまわっているだろうし、修験道かーなどと思ったり。

天狗さんに続いて、神楽や神輿もつぎつぎと火に突進していく

 神輿も、とりあえずまず海のなかに神輿担いで入ってくっていう日中の行事からスタートしているようです。女性だけの神輿「桜組」というのもあるというのは帰宅して知りました。あった。あったよ。桜組の神輿。見た見た。ひぇー。
 海のなか神輿担いでから、町のなか練り歩いて、最後は、道を清めて歩いた天狗さんが汚れを祓って炎をくぐっていったその後ろを神輿担いで拝殿するんですよ。
 すごいパワーだった。
 これは、この拙い私の説明でご興味もたれた方は、どうぞ検索して、そして生で見にいってください。
 こんなん、自分の地元でこのお祭りやってて子ども時代から見ていたら「私も火の中くぐりたい」「神輿担ぎたい」って思うよなーっていうようなお祭でした。

興奮して、帰りに撮った写真はこんなでした

 いいもの見たなーと思って宿に戻る途中、コンビニで藤沢チヒロさんがウイスキーの小さなボトルと氷と炭酸水を買おうとしたので「私、ハイボール缶とビール缶と日本酒をすでに買って宿の冷蔵庫にありますよ」と細々と伝えたのですが「ウイスキーのボトルがあっても困ることはない」とチヒロさんが即答し、そういうもんなのかなーと思ったので「わかった」と応じ、てれんとろんと宿に戻りました。
「大丈夫ですよ。ウイスキーのボトルにはキャップがあるから残ったら蓋をして持ち帰ればいいだけなんです」
 チヒロさんは元気に宿でハイボールを作って飲みだした。
 私も氷を淹れたグラスにハイボール缶を注いで乾杯。

 働く人をずーっと見守り、ずーっと酒を飲んだ良い一日。
 ウニゲル係数高まりではじまり「ご自愛くださーい」で隙間を埋め、おがくずで焚いた炎を突っ切る天狗さんに感動し、熟睡した雲丹旅行でした。ただし、今回は蝦夷馬糞雲丹を食べてないので、もう一回くらい、どこかで雲丹を食べたいなーともくろんでます。
 

おまけ:「美国観光ハウス」さんの朝ごはん。左下のこれは…
朝から贅沢に、うに丼!
こちらはうにといくらハーフ&ハーフ
雲丹100%にもしてもらえます✨

●美国観光ハウス
北海道積丹郡積丹町美国町船澗49
http://www.bikunihouse.com/

●美国神社例大祭
https://www.youtube.com/watch?v=PtGQvRL3qDo

文章・佐々木禎子(雲丹が好きすぎる作家) 
https://twitter.com/cheb1988
http://instagram.com/cheb1988/

写真とキャプション・藤沢チヒロ(夏は脳みそがウニになる漫画家)
https://twitter.com/uwabamic
https://www.instagram.com/kulahkitamori/(食べ物)
https://www.instagram.com/uwabamic/(イラスト)

この記事が参加している募集

ご当地グルメ

お祭りレポート

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?