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【期間限定無料記事】「マツコに知られたくないお店・十選」(佐々木禎子)

※このエッセイは、2017年発行のアンソロジー「キタノステラ 創刊号」に収録されたものです。「おうちで北海道気分」キャンペーン期間中、無料公開いたします。



 私はマツコ・デラックスが憎い。
 その日まで買い置きなどしなくてもよかった自分にとっての好物や名店が、マツコさんがテレビなどで褒めた途端に店頭から消え、店には長蛇の列となり、いきなり「入手困難」「食事困難」な幻の品になることがあったから。食に関するアンテナが鋭く、言葉選びが巧みで、かつあのルックスである。人は見た目によるものだ。マツコ・デラックスの脂肪の蓄積が「美味しい」という言葉に説得力を込めている。そしてだいたいマツコさんが美味しいというものは本当に美味しいので、つらい。私もね、マツコが勧めたっていうと買っちゃうよ。食べるよ。
 なので、私の知らない美味しいもののことは教えて欲しいのよ、マツコさん。
 だけど私の知ってる美味しいもののことは、そっとしておいて欲しいのよ、マツコさん。
 なんでいきなりマツコ・デラックスをディスってるかっていうと、テレビ番組で札幌の夜パフェ店のを紹介されてから某店に入れてないからです。あと札幌じゃないけど町田の中野屋さんも列がすごすぎて行けなくなったよ……。もともと有名な店がマツコさんに語られることで、さらに食べるのが困難になっていくのが、つらい……。つらい……。
 という、個人的にマツコ・デラックスに対して複雑な想いを抱く最近の私による「マツコ・デラックスに知られたくない札幌の美味しいもの」十選よ。

♥カフェアグリーダック狸小路店

 ソフトクリームが美味しいです。場所柄、一応は昨今の〆パフェブームを狙っての開店かなと思うのですが、パフェ食べる前にまずソフトクリームを食べて欲しい。
 濃いのだけれど、さっぱりしている。
 牛乳の濃厚さや香りが口のなかに広がり、でも舌のさきで甘みがしゃりっと溶けて全体にすっきり。どんどん食べてしまえる美味しいソフトクリームです。
 ソフトやパフェ好きな人はLサイズいけると思うので、Lと、あとコーヒーホットを頼むといいです。食べ終えると口のなかと身体が冷たくなるのでホットコーヒーであっためて帰る感。お好みですけど……。

♥農家の茶屋 自然満喫倶楽部


 立地が遠いのでそこはごめんなさい。こちらは苺のシーズンの苺パフェが有名です。苺がとにかく美味しいの。ソフトっていうより「苺の上にソフトクリーム」。果物メインで、そこにソフトクリーム。でも、ばらばらじゃなく、ちゃんと互いに補いあってる味。好き嫌いは出てくるのかなと思います。果物がどれだけ好きかで、評価が割れる気がする。私は「果物が、ちゃんと果物として美味しい」というフルーツパフェに対してすごく食いつきがよくなるのと、あと濃いけどさっぱりしているという乳製品が好みで、ここはまさしくそういうパフェ。昔はものすごいボロボロの建物だったのがいまはちゃんとしたお店になって、人がたくさん来ているね。

♥ミルク村 SAPPORO本店 (HOKKAIDO ミルク村) 


 アイスとソフト系続けてすみません。好きなので! 「ばんぱいやのパフェ屋さん」というシリーズを書くくらいにパフェとソフトが好きなので(宣伝・ポプラ文庫ピュアフルで五巻完結。そしてコミカライズも徳間書店で発売中~)
 ミルク村は看板が出てないので探すの難しい。昔からあるお店なんですが……。検索してから行ってみてください。店構えも独特ですが、店内も独特です。アイスの味はスタンダード。濃いよ。味が濃いアイスだよ。
 そこにリキュールをかけて味わうのが他店と違うかな。リキュールがたくさんあって選べます。私は、どんぐりのリキュールかけて食べるのが好きです。店内のあやしさは、やはり昔からある夜パフェの店「ぴーぷる・ぴーぷ」と並びます……。
 私にとっては誘う人を選ぶ店です。おもしろがってくれる人と行きたい。あとアイスが好きな人と行きたい。

♥ぴーぷる・ぴーぷ


 ここは有名だよね……。私はすごく好きですが。
 味は美味しいのよ。お店が独特なので、そこで苦手として行かないという人も友人にいる。
 ここのパフェは素材を追求するあまりときどき「甘くない。というか、しょっぱい」というような謎なパフェがある。でも美味しいのでそれでいいのだ。

♥札幌くるみや


 ソフトクリームも有名ですが、シフォンケーキが大好きです。ふわっふわ。で、添えられているクリームが甘すぎず、すっきりで、いくらでも「食べさっちゃう」。(「食べられてしまうのだ止まらないのだよ的なニュアンスの北海道方言よ)。この「押ささる」とか「食べさる」というニュアンスは、私、いまだに標準語でうまく伝えることができないのです。という伝えられない感覚を、くるみやのシフォケーキで味わっていただきたいです。しかしこのお店、私は札幌市民として子どものときからずっと親しんでいたのですが本店は明石なんですよね。兵庫県明石と札幌にだけあるお店ってすごく不思議だなあ。物語が隠れていそうですね。

 甘いもの続いたので、そろそろ、しょっぱいものについても書こうかなー。

佐藤水産のさけっぴ


 だいたいなんでも美味しいけど、こういっちゃなんだが「ちょっと価格がお高い」佐藤水産の、鮭の皮を高温でからっと揚げてマヨネーズの味かふわっとついているという「ビール飲むしかないな……カリカリバリッ、うま、たぶんデブの味だけどコラーゲンも入ってるから美容にもいいに違いないだろ……プハアッ」なツマミです。酒飲みなのでツマミだと断定するけど、酒飲まなくても美味しいですよ。常温保存可で350円です。佐藤水産のなかではわりとお手頃価格帯だと思ってます。カレー味も昔はあったんだけど……期間限定だったのか、いまは売ってない。カレー味もすごく好きだよ……。再販希望よ。

♥やきにく舎 太好了 すすきの店 (たいはーら)


 朝までやってるので朝まで肉が食えるのだ。でも最近いってないのでもしかしたら営業時間は変わっているかも。朝まで飲もうとするかたは事前にチェックしてみてね。生でジンギスカンのラム肉が食べられるお店。さらっと表面だけあぶってレア感高めで食べるのが好きですが、ゆえに、生肉好きかどうかで、評価が割れる気がします。もちろん焼いても旨しなので、レア度高めでちょろっとつまみつつ、焼きも入れつつで、酒をひたすら飲むのです。ビア!   29の日は安くなるサービスがあったのですがいまでもやってるかは調べてないです。そして最近まったく行けてないので最近の味はわからない。から、誰かに行って確認してもらいたい……。

♥石鍋亭


 有名だよねー。モツ鍋と生ラムジンギスカンの店です。私はモツ鍋がずっと苦手だったんですが石鍋亭で食べてから「あ、私、モツ鍋実は食べられるのでは」と開眼しました。でもどの店でも食べられるわけじゃないので石鍋亭の味が好きなんだと思う。臭みがない。そびえ立つニラタワー。きゃべつオンニラ。圧倒的ニラの存在感。でも火が入るとくたっとなって……ああ……書いてて食べたくなってきた……。翌日、人に会えないくらいニラやニンニクの香りをぷんぷんさせて、一心不乱にがつがつとモツを食う。鍋を見つめるとき、その場にいるみんなの心はひとつ。いや、ふたつ。
「〆は、雑炊にする? それともラーメンにする?」
 最終点に二種類とも食べるために鍋ふたつ頼んだりしたこともあったなあ。
 スープが美味しいのです。なのでモツ鍋をおえてからの〆の雑炊もしくはラーメンが楽しみなのです。
 ジンギスカンも美味しいよ。

♥えびそば一幻


 甲殻類好きとしてははずせないラーメン。トッピングになってる、エビを練り込んだカリカリ天かすが好きです。脂がたっぷり浮いてるスープの上にさらに天かすのせてるってなんだよ。でも美味しいからいいんだよ。

♥奥芝商店 スープカレー


 エビの流れでこちらも有名店ですが奥芝商店のスープカレー。スープカレーとしてはとてもスタンダードななかで、海老の香りが強い出汁スープが特徴。甲殻類が好きな人は絶対に好き。えびえびしい海老。奥芝商店はいつも海老のやつしか食べないので他をよくしらないのだった。
 スープカレー。ここのルーはさらさらしてる系スープですよ。
 ところで、奥芝の系列で、店で働いている人がみんなおばあちゃんであるという「おくしばあちゃん」という店もあります。「おくしばあちゃん」は天ぷらがとても美味しいのですが……最初に行く「奥芝商店」としてはすすめられないかも。まず普通の奥芝商店に行ってから、おばあちゃんたちの接客のおおらかさを眺めにいってみてください。「おくしばあちゃん」はスープカレーを楽しむというのとはなんとなく違う店な気がする……。個人の感想です。


 有名な店も混じった十選でしたー。
 スープカレーについては好きなお店がまだまだたくさんあるのですが「最初に食べるスープカレーが、その後のその人のスーカ人生を決める」と思っているので、とっつきやすい奥芝商店にしました。パフェやアイス、おつまみと燻製、海鮮の店とかたくさんあるので、どうぞいらっしいませ札幌観光に。
 で、十選しといて十一番目。

♥さっぽろテレビ塔の上のレストラン


 昔懐かしいナポリタンスパゲティが美味しいよ。パスタじゃないよ。スパゲティ。
 お薦めは、ホワイトイルミネーションの時期の夜です。
 大通り公園をみおろす窓際の席に座ってくださいね。
 そうすると遠近法で遠くになるにつれて細く見える大通り公園を飾ったイルミネーションがキラキラと輝いて、クリスマスツリーのように見えるのです。
 てっぺんの星はついてないのだけれど。
 街の明かりがクリスマスツリーの形になって瞬いているのをぼんやりと見て、ビールとナポリタンで(いつも飲み物がとりあえずビールなのは私の仕様です)乾杯。
「この世界には綺麗なものがまだまだたくさんあるんだろうなあ。札幌っていい街だなあ」って私はいつも思うのでした。

 
Auther:佐々木禎子(Twitter

このエッセイは、2017年発行のアンソロジー「キタノステラ 創刊号」に収録されたものです。店舗や商品の情報は刊行当時のものになります。電子書籍「キタノステラ」シリーズは、下記のリンクより各電子書店から購入できます。

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