Yuya Kitai

プレホスピタル(病院前)からERに軸足を置く救急医です。ERで遭遇する重症患者や複雑な…

Yuya Kitai

プレホスピタル(病院前)からERに軸足を置く救急医です。ERで遭遇する重症患者や複雑な病態の診療において、「救急医の思考」を共有し、教科書や参考書などではあまり教わらないようなER診療をマネージメントする上での心構えを伝えていきます。

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自己紹介

①プロフィールはじめまして 都内の2次救急病院で救急外来診療を専属で担うEmergecny physicianです。 医師としては2023年時点で卒後14年目の絶賛中間管理職。 プライベートでは2児の父です。 アラフォーです。 ②医師になるまでの道のりまず、医師になろうと思ったのが高校3年生のころ。中・高とバスケットボールに明け暮れ、高校の部活の引退を機に進路を考えたときに、「人の役に立つ仕事がしたい」と思い立った職業が医師でした。 進学する人がほとんどの公立高校でした

    • 研修医指導の心構え.05「診断をもとめる」

      研修医のアセスメントでよく耳にする文言がある。 これが出た時は要注意であり、私は必ず続けてこの質問をする。 この問いにすんなり答えられる研修医はそう多くない。 大抵、「●●らしくはなく、△△には典型的ではなく、××も否定的です。」 と返してくる。確かにそれらの疾患である可能性は低いのだろう。 だからといって、それは患者を安全に帰していい根拠としては弱い。 この状況を犯罪捜査に置き換えて考えてみる。 この事件には数名の容疑者が浮上しているが、諸々の調査の結果、容疑者A

      • 北陸新幹線内被災備忘録

        13:52 東京発 かがやき531号 富山駅通過後、高岡付近で乗客の携帯電話から地震のアラート音が鳴り響く。 新幹線は左右に揺れながら速度を落とし停車する。脱線しないことを心から願った。 停車後、停電し非常用電気のみがついている状態。 すぐに家族に連絡し、机の下に避難していて皆無事との報告があり安堵する。 が、電話をしている間も揺れは続いている。こんなにも長く揺れた地震は経験がない。 Yahooの地震速報を見ると、震源が能登半島で震度5強の地震とのこと。津波の危険も

        • 「計算ドリル」と「抜き打ちテスト」

          救急外来には多種多様な患者さんが訪れる。 特に週末や休日、夜間など、診療所や病院の一般診療が終わっている時間帯や曜日では、患者さんの受け入れ窓口は救急外来のみとなるため、時間あたりの来院患者数は一気に増える。 数に忙殺され、一向に減らない未診察のカルテの山を見ながら、余計な感情をもたずにただひたすらに患者さんの診療にあたり続ける。 診断もわかりやすく、複雑な処置を必要としない場合には流れ作業的な感じで診療が進む。 このように淡々とこなすだけならそこまでのストレスはかか

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        自己紹介

          『コミュニケーション』。これに尽きる。

          「コミュニケーションが大切」 ということは、もうウンザリというほど耳にしていることでしょう。 これは医療の現場に限ったことではありません。 中間管理職的なポジションにいる私は、様々な職種、上司からも後輩からも、色んな不平不満を聞かされます。 色々と話をしてくれるのはありがたいことです。話してもらいやすい雰囲気を作れている、話したらなにかいい方向に向かうかもしれないという期待を持ってくれているとだと、肯定的に捉えています。 ただ、その不平不満の大半は、コミュニケーション

          『コミュニケーション』。これに尽きる。

          直観を切り捨てる

          ①ホットラインに救急要請が入る②診断ミスに対する感情の鈍化医師14年目にもなると、自分の診療スタイルがある程度確立されてきて、救急外来でのマネージメントに困ることがほとんどなくなってくる。 学年が若いうちは、どんな疾患に対しても「見逃したらどうしよう」、「診断をつけなくてはいけない」と、意気込んでいた。 救急外来診療で診断にこだわることはとても大切なことで 「大丈夫そうだから今日のところは様子をみて、また日中の外来に来て専門の先生にみてもらってください」 というマネ

          直観を切り捨てる

          Case.03: 50y.o M 突然発症の右下肢痛

          【設定】 ここは地域の2次救急病院。 夜間は医師2人、看護師4名体制。 平均1日20〜25台の救急車を受け入れており、walk-in患者の診療も並行して行う。 院内には内科系・外科系の医師が1人ずつ当直している。 ICUには専属の集中治療医が1人。 夜間の緊急手術は対応可能だが、麻酔科含めて各科on callで自宅からの呼び出しである。 【救急隊情報】 とある平日の深夜。就寝しようとしたときに一瞬胸がズキンとした後から、右下肢の違和感が出現してしびれ始めた。違和感が改善せず

          Case.03: 50y.o M 突然発症の右下肢痛

          死亡宣告の際の心構え

          救急の現場にいると、死亡宣告を行うことは特に珍しいことではない。自分なりの「型」のようなものも出来たが、それは今まで自分が見てきた上司・同僚のやり方がもとになっている。 今の医学生がどうかは分からないが、少なくとも自分が学生だったころに死亡宣告のやり方を学んだ記憶はない。ただ私は、「こういう死亡宣告はしたくない」という漠然としたイメージは学生の頃から持っていた。実際に死亡宣告の場に立ち会った経験があったからだ。 大学2年生の頃、祖母の看取りを経験した。 深夜の病室で、家族

          死亡宣告の際の心構え

          Emergency Physicianの役割

          「救急医」と一口に言っても、全ての救急医が同じことをできるわけでなく、各々が専門としている分野が存在する。 ・重症外傷患者に対して手術を行う外傷外科医 ・様々な臓器や血管の損傷に対してカテーテルで治療を行うIVR医 ・ICUで重症患者の集中治療にあたる集中治療医 他にも、脳神経外科、整形外科、循環器内科など、各専門分野の専門医が救急医として働いている場合も多い。 その中で、軽症から重症患者まで、年齢・性別を問わず全ての患者の初期診療を行うことを専門とする救急医もいる。そ

          Emergency Physicianの役割

          【デキる医師に成長するための秘訣】

          これは、自分の元上司からの教えです。その上司は、臨床・教育・研究に熱心で、今の自分の医師像に大きな影響を与えてくれた上司の一人です。医学以外の様々なことに造詣が深く、それらをアウトプットして伝えることに非常に長けていました。その先生が、ローテートしてくる研修医によく質問していました。本来関西弁なのですが、再現できず済みません。 たくさん参考書や論文を読むことでしょうか。それともたくさんの患者を診て経験値を増やすことでしょうか。 経験値は大切ですが、いくら経験数を重ねても「

          【デキる医師に成長するための秘訣】

          研修医指導の際の心構え.04「決断させる」

          研修医のレベルには様々な段階がある 1→2への成長は、型を覚えることで比較的容易に到達できるが、2→3への成長が大きなハードルの一つだ。 研修医はどのようにして自分の臨床能力の向上を実感できるか。色んな講習会に顔をだしたり、教科書や文献を読んだりして知識を増やせば「できレジ」になれるかというと、そうではない。 外科的な手技であれば で、自分の実力を認識することはできるが、臨床能力は簡単には評価できない。 自分の成長を感じるポイントの一つは、上級医からの「ツッコミ」の

          研修医指導の際の心構え.04「決断させる」

          【もし今病気になったらどうなるか】 2021年8月時点

          医師になって、救急医を志した大きな理由が2つある ・時、場所、人を選ばずに行動できること ・一番身近な家族、親族の助けになること 今の現状では、これが出来なくなっている。家族が苦しんで困っていても、適切な医療を受けさせてあげることが出来なくなった。自分の身体は自分で守らなければならなくなった。 両親、キョウダイに今の現状を知ってもらうために、このような文書を送った。知り合いにも伝えてもらうようにお願いした。 一刻も早く、安心して医療機関にかかれる日が戻ってくることを願

          【もし今病気になったらどうなるか】 2021年8月時点

          たくさんお手紙を書く

          救急診療は、救急外来だけで完結することの方が少ない。たいていの場合は帰宅できたとしても翌日以降に専門科の外来受診やかかりつけ医の受診を指示する。 そこで重要になってくるのが、「紹介状」や「コンサルト文」である。自施設の外来を受診して欲しい場合には基本的にはこの「コンサルト文」が必要になってくる。なぜ、外来受診が必要と判断したのか、何を診て欲しいのか、どんな懸念が残っているかを、端的に、明確に示す必要がある。 このようなコンサルト文は御法度である。ERではどこまで精査してい

          たくさんお手紙を書く

          Case.02: 50y.o M 傾眠

          【救急隊情報】 昼頃、とある風俗店に入店した。男性が待機している部屋に女性が入室したところ、男性はいびきをかいて寝ていたのでそのまま様子を見ていた。50分ほど経過したところで覚醒したので入浴したが、そこで再度いびきをかいて寝だしたので店員が救急要請し搬送となった。 救急隊接触時のvital signは、BP:92/54mmHg、HR:80bpm、SpO2:96%(RA)、RR:14/min、BT:36.5℃、意識レベル:JCS1、GCS:E4V5M6 ①この時点でどういう

          Case.02: 50y.o M 傾眠

          研修医指導の際の心構え.03「気遣い」

          円滑に診療を行う上で、気をつけること 人に気を遣いながらやる救急外来を受診した患者さんは、医師を選ぶことができない。診察室に入ったとき、もしくは救急車から降りた時、目の前にいる人がその日の担当医となる。それが、20年目のベテラン医師かもしれないし、はたまた医師成り立ての1年目初期研修医かもしれない。ベテラン医師に診てもらえるのが果たして「アタリ」なのか「ハズレ」なのかは置いといて。。どちらにせよ、患者さんにとってはその日命を預けることになるかもしれない「一人の医師」なのであ

          研修医指導の際の心構え.03「気遣い」

          研修医指導の際の心構え.02「安心感」

          研修医指導を行う上で、安心感を持たせてあげることが大切だと思っている。これは、「自分で考えなくても手取り足取り教えてもらえるから安心」というものでも、「何をやっても研修医は守られるから安心」というものでもない。 私の研修施設は野戦病院というタイプではなく、必ず学年の近い上級医が上に付くいわゆる「屋根瓦方式」の教育スタイルであった。必ず上級医の目が入り、適切なフィードバックを受けられる。そういう意味では手厚い教育を受けてきたと思う。 私が初期研修医だったころ、絶大な支持を得

          研修医指導の際の心構え.02「安心感」