正義と正義がぶつかった
私がよく行く図書館には、専門書コーナー・雑誌や新聞コーナー・キッズコーナーでざっくり階数がわけられている。どの図書館でも、本のジャンルでなんとなくゾーンが区分けされているのは一般的ではないだろうか。
ついさっき、行きつけの図書館でいつものように本を読んでいたら、甲高い声で泣いている3歳くらいの女の子、その子を必死であやすお父さんがあらわれた。
私がいたのはキッズコーナー。発売されたばかりの「14歳からの政治入門」池上彰・著があるのを発見し、階を移動するのも面倒だなあと思ったので、そのまま居座って読んでいたのだ。
私の頭の中はこう。「ああ、泣いちゃって大変、でも子どもはところ構わず泣くものだからね。そもそもここはキッズコーナーだから、ある程度騒いじゃうのは仕方ないよ。お父さんがんばれー」。
そのまま本を読み続けていたのだけれど、急に、私の目の前に座っていた男性が声を上げた。「うるさい!早くどこかへ行ってください。ここは図書館なんだぞ、みんなの迷惑だ!」。
私も、小さな子をあやすお父さんもいささか驚いて、ちょうど泣き止まない我が子に辟易していたタイミングだったのか、居づらい空気に圧倒されてしまったのか、言われるがままキッズコーナーから退出していくお父さんとその子ども……。
なーんか、変じゃないだろうか。
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もちろん、図書館は公共の場だし、中でもとくに静かにしなければならない場所だ。
そうだとしても、時と場合によって歩み寄らなければならないケースもあるだろう。子どもが泣いていたのはキッズコーナーで、ちゃんと保護者が近くにいたのだ。「出ていけ!」なんて第三者が言えるものなんだろうか。
私の目の前に座っていたその男性は、年齢は60歳前後くらいで、おそらく何かしらの障害を持っている方だとお見受けした。
あなたにとっての正義は、「図書館はみんなの場所、騒いではいけない場所で騒ぐ子どもはとっとと出ていくべき」かもしれないが、私にとっての正義はまた違うし、あのお父さんや子どもにとっても違う正義があるだろう。
正義と正義がぶつかった。
こういうとき、誰が悪で誰が善か、善悪の物差しで図るべきではないと思っている。けれど、キッズコーナーで堂々と本を読んでいるあなたもあなただし、私も私だ。出ていくべきはあなただったのではないだろうか。
私はといえばそんなことを自信もって言えるはずもなく、ただただ本に集中しているふりしかできなかった。
お父さん、娘ちゃん、ごめんね。来づらくなっちゃったかなあ。
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