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離婚を"Move On"と訳す

日本の夫婦の3分の1が離婚すると昨今言われているけれど、ニューヨークで私の周りの離婚率は5分の4くらい。

これが決して、不幸せになった夫婦の割合というわけではないことを、私はニューヨークで学んだ。自分たちらしい生き方を一生懸命考えて、新しい一歩を踏み出す人たちの選択肢の一つに離婚は過ぎない。

"Move on"とは「前へ進む」と訳すけど、具体的には、後ろを振り返らず、背筋伸ばして鼻先を少し上げて颯爽と歩き出すイメージ。
このイメージを私に教えてくれた、私の大好きなK姉さんを紹介したい。

初夏の日曜の昼間、近所のマダムが友人を集めて開くスペイン料理お食事会へ行った時のこと。初対面の人もいたため、私たちは1人ずつパエリアを囲みながら自己紹介をしていった。
そのうちの1人、私の大学院の先輩で卒業後アメリカ人と結婚し、小学生の娘がいるK姉さんは、自分の番が来ると早々、
「私、Move  Onすることにしました!」
と打ち明けた。

私は2年ほど前からK姉さんの家族話などを聞いていたため、正直驚いたし、どうしてもこの物価の高いニューヨークでシングルマザーになり経済的に大丈夫なのか、と心配になってしまう。

しかし、他のマダムたちは、
「あら、そうなのね〜。」
と、食卓に並んでいるスペイン風オムレツに使用した卵のサイズが普段より大きかった、という小ネタと同じくらいの反応だった。

K姉さんは、夫の収入に頼れなくなるのが心配だったけれど、元々パートタイムで雇ってもらっていた仕事をフルタイムにしてもらえるよう交渉し、合わせてメインの仕事である水彩画も作り続けていくことで、その生き様を娘に見せるのが楽しみだと話していた。

半年前、イーストビレッジのカフェで、「やりたいことが最近見つからなくて」とため息をついていた姿からは見違えるくらい、K姉さんの目は活気に溢れていて、それはきっと情熱の国スペイン料理効果だけではないはず。

いつ見てもまた食べたい自家製パエリア

"生きていることは辛いこと" じゃなくて、
"辛いからこそ、生きてるって感じするよね!"

と食べ過ぎてベルトを外したお腹をさすりながらK姉さんと歩く昼下がりのハーレムは、上半身裸で逆立ちしている人、誰が買うかわからないガラクタを公園で並べてる人、わざわざスピーカーで音楽を流してそれに合わせて踊り始める通行人、今日を生きている人たちで賑わっていた。

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