Kito

ニューヨーク在住 日英ミュージカル脚本・作詞家。くだらないことしか書いてません。

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ニューヨーク在住 日英ミュージカル脚本・作詞家。くだらないことしか書いてません。

最近の記事

さくらももこ展で思い出す

私は文字を学ぶ前から、さくら先生の絵本を読めた。 "ことば"という存在に気づき始め、これから世の中のありとあらゆる表現を吸い込んでいく2歳の私の最初の一歩を、さくら先生の絵と文から始められたのだから、本当に日本人に生まれて良かったと思う。 さくらももこ先生の描く世界は、文字通り私の"心を動かす"のである。 しかも、さくら先生の作品の素敵なところは、どんな時もそばにいて寄り添ってくれる1冊というわけではなく、私が人生の新しいステージにのぼらなければいけないタイミングで、さり

    • ゴッドハンド金木じいちゃんの整体(生態)について

      私は高校生のくせして、偉そうに週に1回整体に通っていた。 10代なんて、食べて寝てれば、疲れともダルさとも無縁になれる年頃なのに。 当時の私は何の迷いもなくバレエ教室の先生に紹介してもらった整体を受けるため、週に1回江ノ島まで行き、交通費だってバカにならないのに1回6千円の治療費を親にせびり、治療費によって貯まる江ノ島商店街のポイントをコツコツためて漫画を買うちゃっかりさまで持ち合わせていた。せめてそのポイントで、母親に江ノ電最中でもお土産に買ってあげたらよかったのに。

      • ニューヨークのトイレの水圧は弱いので気をつけてください

        人に私の第一印象を聞くと、ありがたいことに 清楚、上品、おしとやか と言った、いかにも育ちの良さそうな人に向けて発せられる言葉が並ぶ。 残念ながら、数分話しただけでこの印象は大きく打ち砕かれ、かけらすら残らず、「見た目とのギャップが面白いね」と苦笑いされるのが、私の人付き合いのルーティーンだ。 そんな中、私は先日、この反応が打ち砕かれるどころか、 不潔、下品、くそったれ 3拍子そろい、もう会いたくない人リストに入れられてしまうほどの失態を犯しそうになった。 それは、ある雪

        • 彼氏の前でおならができるかどうか

          さくらももこ先生のエッセイ「必見!!おならレポート」に衝撃のアンケート結果が載っていた。 「あなたは、家族の前でおならをしますか?」 という質問に、なんと4割もの人が「いいえ」と答えるのだ。 今まで当たり前のように、というかもはやなにも考えず家族の前でおならをしてきた私にとって、この4割の人たちは一旦どんな家庭環境で育ち、どうやって一つ屋根の下に住む人々の前でおならをせずに人生を送れてきたのか、地味だけれどとても難解な謎が生まれてしまった。 「家族」を「彼氏」に置き換え

        さくらももこ展で思い出す

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        • 彼氏の前でおならができるかどうか

          LAの人気占い師さんに今後を占ってもらう

          「占いって信じます?」 お世話になっている心療内科の先生に「まさか、精神科医が信じませんよね」という意図を込めて質問を投げかけたところ、 「信じるも何も、僕の母親、霊媒師だからねぇ。」 と予想の斜め上の回答が返ってくるから、迂闊に人に同意を求めてはいけない。 ちなみに、先生は実家にいると突然物音がしたりコップが動いたり、家が揺れたりするらしい。モノが動くはまだしも、家が揺れるは流石につらい。ルームメイトを持つなら、なかなか理解のある人を探さなければいけないのではないか、

          LAの人気占い師さんに今後を占ってもらう

          離婚を"Move On"と訳す

          日本の夫婦の3分の1が離婚すると昨今言われているけれど、ニューヨークで私の周りの離婚率は5分の4くらい。 これが決して、不幸せになった夫婦の割合というわけではないことを、私はニューヨークで学んだ。自分たちらしい生き方を一生懸命考えて、新しい一歩を踏み出す人たちの選択肢の一つに離婚は過ぎない。 "Move on"とは「前へ進む」と訳すけど、具体的には、後ろを振り返らず、背筋伸ばして鼻先を少し上げて颯爽と歩き出すイメージ。 このイメージを私に教えてくれた、私の大好きなK姉さん

          離婚を"Move On"と訳す

          初めて絵を描き、初めて売る

          「何かをやりたいと思った瞬間、実現せずにはいられなくなる」 文字面だけだとかっこいい私の性格は、実際にはいくつかの黒歴史を生み出す厄介なものだった。 その代表作は、社会人6年目に突如開催した「カラオケ会社説明会」。なぜか突然、「会社説明会をカラオケで行ったら社風が伝わりやすいのではないか」と思いついた私は、誰かにアイディアをパクられる前に実現しなければと、居ても立ってもいられなくなり、出会ってからまだ3回も会ってない知り合いの仕事ができそうな青年を幹事にしたて、カラオケ会社

          初めて絵を描き、初めて売る

          マンハッタンアパートに招かざる客の到来

          「ニューヨークといえば?」 と質問された時、最初に頭に浮かぶものはなんだろう。 自由の女神、摩天楼、りんごにタイムズスクエアにブロードウェイ… しかし、今の私の頭に浮かぶものは、 「ネズミ」 である。 そう、数日前の深夜3時ごろ、リビングのカウチでうとうとしながら歌詞を書いているとき、私はついに出会ってしまったのだ。 ネズミに。。。 そんなニューヨークのシンボルは、「ぎや!」と間抜けな悲鳴をあげる私のことなどお構いなしに、引き戸の溝に消えていった。 私の家に、

          マンハッタンアパートに招かざる客の到来

          NYPDにナンパされた話

          ある週末の夕方、私は必死になって抹茶プリンをソーホーで売っていた。 Japan Fesというストリートフードフェスに出店しているシェフのお手伝いをしていたのだ。 ちなみに、このシェフは、私の女友達が紹介してくれたのだが、シェフが手伝ってくれる人を探す際、その女友達に、 「可愛くて英語できる子知らない?」 という聞き方をしたことにより、その女友達は間接的にシェフにとって「可愛くもなく、英語もできない人」と言われたことになり、ひどく気分を害していた。 にもかかわらず、私を「

          NYPDにナンパされた話

          ニューヨークのデートは怖い

          アッパーイーストサイドのオープンカフェでブルーのワンピースを風に揺れらし、上品な男性とラテを飲むこれまた上品なレディを見て、 「あぁ私3日連続同じパンツ履いてる、そろそろランドリーのタイミングだわ。」と思い出していた時のこと。 Facebookを通して、会ったことのない男性から今度お茶でもしないか、とお誘いがあった。 彼のプロフィールを見てみると、指揮者で作曲家。リンカーンセンターでもコンサートを行なっているらしい。 しかし、普通の人なら、Facebookで知らない人か

          ニューヨークのデートは怖い

          唐揚げとプライド

          こんなニューヨークの街にいても、結局食べたいものは唐揚げだ。 カリカリ程よい塩気の衣に包まれた肉汁たっぷり鶏肉とレモンのさっぱり後味。ベーグルやピザなど、唐揚げの前には無力である。Tボーンステーキとだっていい勝負ができる。 30年間料理をほとんどしてこなかった私も、ニューヨークに来たばかりの頃、無性に唐揚げが食べたくなり、夜な夜な唐揚げを作ったことがある。 ニューヨークで鶏肉を買って驚くのは、"ボーンレス"と書かれていない限り、骨付きになっていること。私はこれを知らず、家

          唐揚げとプライド

          ニューヨークで理想のパートタイムに出会うまで

          働かぬもの食うべからず。食っていけないだけでなく、私のような移民の場合、国からつまみ出されてしまう。 大学院を卒業した私はニューヨークで職を探した。 最初はカッコつけて、脚本作詞家だから何かニューヨークの舞台の仕事に〜、なんて偉そうなこと言っていたけれど、ニューヨークの街はそんな甘くなかった。 劇場へレジュメを出せども書類審査すら通らず、友人が働いていた日系広告代理店の仕事を「イベントとかやってるからギリギリ舞台関連」と言い聞かせ働き出したものの、パワハラあり、残業代なし

          ニューヨークで理想のパートタイムに出会うまで

          ニューヨーク貧乏食べ歩き

          私が尊敬する岡田斗司夫先生は、貧乏と貧困は異なるといっていた。 貧乏はお金のないという「状態」、貧困とは、お金がない状況により、悲しくなったり心に余裕がなくなり不幸を感じるという「感情」と区別するらしい。 この解釈に照らし合わせると、ニューヨークで暮らす私は毎月家賃を払えるかギリギリの口座預金状況なので(日本で働いていた時の私と比べると)いくらか貧乏ではあるが、それでも心はぼんやりのんびり暮らしているので貧困ではない。むしろ、貧乏ながらどれくらいニューヨークのグルメを楽しめ

          ニューヨーク貧乏食べ歩き

          にほんのみのる ① - また始めるかぁ

          2022年9月11日、私たちの初めてのリーディング公演「ミノル」はなんとか無事に、幕を閉じた。劇場の1番後ろの入り口に立ち、満席の客席を見ながら思ったことは、ミュージカルを書くって怖いことだなァ、と。 そして、初めてレストランでバイトした時のことを思い出した。18歳の私は、ウェイターで雇われたのに、なぜかそこそこ味自慢のイタリアンでパスタのレシピを言い渡され、1回だけ試作品を作り、その後すぐにお客さんに提供することになった。作るまでは一生懸命だったけれど、お客さんのもとに私

          にほんのみのる ① - また始めるかぁ

          にほんのみのる -はじめに

          日本からニューヨークに戻って1週間、いまだに時差ボケに身を任せたまま太陽と出会えない生活を送っている。歳のせいにしていたけれど、間違いなくここまで長引いている理由は、前向きな言い方をすると、囚われない生き方に変えたから、ありのままをいうと、売れないアーティストだから。 あぁ、今となってはサラリーマン時代が、なんと輝いていたことだろう。 東京-ニューヨーク間を当たり前のように直行便で移動できるなんて。そりゃ、一晩寝れば疲れも取れるさ。次こそビジネスで・・・、なんて思い上がった

          にほんのみのる -はじめに

          Broadway Musical "KPOP"たった17公演で閉幕に考える多様性

          ミュージカル「KPOP」がたった17公演で閉幕が決まった。アジア人がメインキャストとなり、韓国のカルチャーを題材にしたミュージカルがブロードウェイで公演されることは前代未聞で話題になった分、呆気ない終了となった。このミュージカルはアジア人女性初のブロードウェイ作曲家となったHelen Parkさんらが8年かけて作ってきたもの。 商業的な成功は収められなかったかもしれないけれど、これからHelen Parkさんのように「アジア人が正直に自分たちのカルチャーを描いたミュージカル

          Broadway Musical "KPOP"たった17公演で閉幕に考える多様性