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編集、編纂の視点、記事の見せ方と構築の基本について ~情報構造体の類型~

短文の記事や、1記事=1テーマ程度のシンプルな情報構造の場合は、大して気にならない。しかし、大きくて複雑な情報構造体(長文や本やら)を作っていこうとすると、どこから、どう見せて、どう話を展開するのかが、読者の興味や反応に大きな違いをもたらしてしまうので、その点について今回整理してみようと思う。




価値4タイプと4分類

そもそもその情報構造体に読者やらがアクセスするということは、そこになんらかの価値を見出していると言い換えられる。読者が抱く価値とは様々あるが、大きく下記4つに分類される。そして基本的に、求められる構造も価値に関連して構築されることになる。

4つの価値


0、4分類の説明 

主観的価値(数字にできない価値)と客観的価値(数字などに置き換えられる価値)とにまず大別される。前者はかわいい好きという身近な主観感覚のものから、迂遠で複雑な正義と悪とかの人生観や価値観や主義主張に関連した価値もある。一方後者は、誰が見ても同じ数字としての価値、値段や効率やお得といった価値である。○○を利用すれば、○○円お得という身近なものから、科学の法則や原理や真理のような、Aの条件下ならば必ずBになるといった、抽象的で複雑な理論探求の価値もある。




1、理論原理構造 (左上)

ノーベル賞をとった功績の原理(なぜそうなるのか、こういう条件ならばどういう結果になるのか)を知ろうとするような価値であり、専門家や研究者の視点ともいえる。ここに求められるのは、観測方法、前提条件、結果、演繹や帰納で導かれる原理や法則としての結論。それから導かれる推論や応用アイディアである。

この構造体で必要なのは、論理であり推論過程と論拠である。例えるならば、レゴブロックのような複雑に高く積みあげられた積み木を、どう詰みあがっているのか、わかりやすくみやすく興味を持ってもらいやすく説明するプロセスである。具体的には下記の通り。


・推論や応用アイディアの価値を最初に強調することで原理の価値を上げる=どういう成果をもたらすのか始めにふれる
・結論から言う。研究の核からふれる。積み上げた高さをみせる。
・見出しや小見出しを多く設けて、情報構造の結論や推論、論拠の筋を追いやすくする。振り返りやすくする。
・行間を多く設けたり、意識的に多用し、情報構造の結論、推論、論拠などのブロック区画を判別しやすくする。
・専門外の人にも理解しやすくなるような、例えや言い換えの適切な利用




2、説明、ノウハウ構造 (左下)

野球において球をバットで飛ばすという現象には、本来複雑な原理法則が作用している。学者研究者はこの原理法則を明らかにすることに腐心する。しかし、ただその分野に関わっているだけの一般人の多くは、原理法則に興味はない。彼らは身近で目に見える数字の価値を求めて、バントするときに注意する3点とか、HRを打ちたいなら、球の下にバットを入れろ等、すぐに飛びつき実践できる説明に価値を見出す。

この構造体に必要なのは、説明やノウハウである。つまり、どれだけ具体的な現在より上昇する数字的価値を提示しているか。その数字の信用性を保証しているか。それを手に入れるために明確明瞭で簡潔で具体的な方法論を提示しているかである。例えるならば、毎日3分の○○で、○kgダイエット法みたいなものだ。

・数字と負荷のバランスをどの点に定めるか。負荷を少なくしすぎるぐらいが興味をひきやすい。(誰しもできるだけ楽して成果を達成したいのだから)
・真似しやすいよう、具体的でわかりやすい写真イラストや動画による説明の徹底
・他の実践者の感想や成功体験談の提示
・複雑なモノよりもシンプルで実践しやすいものを求めるので、できるだけ記事や単元を小さくして、各回で簡潔にまとめる。区切る。




3、共感構造 (右下)

美味しいラーメンを食べた。他の人の反応はどうなんだろと検索したり。面白い映像作品を見た後に、他の人も同じように面白がっているかなと検索するような視点であり価値である。

この構造体に必要なのは、読者と一体化する為に必要な具体的な情報の数。または、読者が面白がるために必要なドラマチックな物語性(フリとオチ=どん底から這い上がった、頂上から落ちた等)である。つまり、論理や論拠が不要な日記やエッセイのことであり、自分語りの量と物語性が多ければ多い程。そしてそれが読者にかみ合うほど、共感されて高評価、高価値になる。自分と同じをいかに提供できるか、いかに物語(フリとオチ)をその記事内で展開できるかである。


・恥ずかしさ、無意味さ、やろうと思えば数行でまとめられること、そういうすべてを捨て去り、ただ自分の想いを表現するのに繋がる過去の体験のありとあらゆるものを具体的に描く。
・読者の気持ち感情を予想想像しながら書く。揺さぶるように書く。
・フリ(期待や予想)を十分に描いた後に、オチ(意外な結末、期待を裏切る)を練るようにする。
・誰も経験したことがないような意外なエピソードを探す





4、価値観構造 (右上)

3が日常的な領域での共感であることに対して、この4の価値観構造は、もうすこし日々の体験から抽出され抽象化された概念である。○○観や○○主義、人生観とよべるような物の見方への共感価値といえる。例えるならば、学歴の大事さ云々とか、マタニティブルーの大変さとか。フェミニズムが大事、保育園におちた国は子供を大事にしろ云々。

この構造体に必要なものは、3と同一であり、自分語りによる共通項の提示と物語性である。語る内容や領域がより抽象化されているかどうかの違いでしかなく、○○が大事、良い事、信じている等、結局は主語は自分は~で完結するような内容である。

説教臭さや持論(だから、○○した方が良かった、するべきじゃなかった。するときにはこうしろ云々)が過ぎると、2と混同されてしまい読者を混乱させるので注意が必要である。





情報構造の選択とおこりやすいミスについて


1と2の混同ミス

例えば、最近肩こりが酷いという人にストレッチを勧める際に、肩周りの筋肉がどうなっているのか、どういうことが原因で痛くなりやすいのか、それを踏まえてタイプに応じて、こういう運動をお勧めする場合。あるいは、夫婦関係が上手くいっていない人に、夫婦にはどういうトラブルがあるのか。こういう原因によるところが大きい。だからこういう改善策を講じたらどうかと勧めるような場合を考えてみてほしい。つまり、問題で苦しむ人に対して、問題を解消するという場合だ。

説明したいする側は、十分に本質を理解してほしい(理解した方が効果が高いと思っている)ので、ついつい2ではなく1の視点で語りがちになってしまう。1は、理論法則の重視でありなぜ?の掘り下げ視点である。なので、こういう原理作用があるを情報構造の結論にし、なぜそういう現象が起きるのかの説明に腐心してしまう。肩こりの原因は8つに分類されて、こことあれの筋肉が関連していて、だから、この筋肉の使い方にすべての問題がある等と、一貫したすべてに関係する法則の説明をしようとしてしまうわけだ。しかし、2の価値を求める読者は、上述の通り原理原則ではなくて、やること、それもできるだけお手軽なものを求めている。

2は、実際にやること、やるべきことという具体的行動を結論にして、その周辺知識や関連知識を提供するという話し運びになる。つまり、この運動をしてみよう!なぜなら、これこれこうだから。思い当たるなら、この運動がぴったりで間違いない!と説明し、その視点は、すること、やるべきことを結論にもってくるのだ。

読者が求めているのは1なのか2なのか。専門的研究的に知りたい相手なのか、ただのやるべきことを知りたい相手なのかどうか。それをついつい混同すると、1と2の説明の仕方が混同されて、的外れの期待外れのものになってしまいかねない。




4が2に寄る混同ミス

2も4も、○○するべき○○をやろうを結論にもってくると構造が似てきてしまうが、異なる成り立ち故に、その結論の説明やなにやらに働く力学は全く別物である。

4の領域をこじらせてくると、ただの自分語りを共感されるはずの内容が、説教おばさんおじさんの内容になってしまう。自分の経験や体験ベースでしかないこうするべき、こうすればよかった、こうじゃないといけないを結論として繰り返すようになってしまうのだ。当然、ただの1個人の体験ベースなものは、誰彼に完全に当てはまることはないわけで、的外れや思い込みの強い内容になり、読者に与える価値は低くなる。4ベースの話をしたいのならば、人生は○○だという確信や感想で踏みとどまる必要がある。





おわりに

noteで本を出版する目次を作ってみました!!という記事をよんで違和感があったので、違和感を整理してみました。どうしても詳しくなる詳しくなりたいと思うと1のなぜなぜ説明に偏ってしまうような気がします。それはそれで需要があると思いますが、多くの読者が求めているのは基本的に2か4です。身近な実利であり、そのために○○をするという簡潔な結論か、身近に共感やドキドキして楽しむことができる、誰彼の共通感想や物語です。

記事や本をどういう視点でどんな風にみせるかという編集の仕事って、やはり特別な能力や経験が必要なんだなと改めて思いました。余談ですが、一時人気になった残念な?絶滅した?生き物シリーズも、編集が専門家の話をひたすら数時間ヒアリングしてうまいことまとめて、パッケージ化した結果らしいですね。2か3、(まれに4なんとか美容法みたいなやつがそう)のどこでどう価値を作るか見極めるかが大事です。あるいは、自分のスタイルを知る事は大事ですね。

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