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文学フリマ東京|本を買った決め手

はじめに

2023年5月21日(日)開催の、文学フリマ東京36に一般参加してきました。正確には、「サークル主の代わりにお留守番をしたり、買い物をしに行ったりする係」として参加しました。(俗にいう「売り子」)

帰る道中、車内でサークル主から「何を基準に本を買ってきたのか」という質問があり、それについて「私はこう」という話をしていました。
サークル主と同じような疑問をもった作家さんや、もっと手に取って貰える作品を作りたい、と思っている方の何か参考になるかもしれないね、ということも話していたので、役に立つことがあればと思い、noteにまとめてみることにしました。

あくまでも、「私は今回の文学フリマ東京でこういう風に本を選んだ」という基準なので、全ての方に当てはまるとも思いません。色々な理由があって、手に取って、選んで買って行かれたというところが一番素敵なことだと思っているので、「こういう人もいるんだな~」くらいで読んでいただければ幸いです。

私の読書スペック

私がどの程度の本読みなのかスペックをあげておきます。

商業本

本を読む頻度 | 月に数時間
本を買う頻度 | 多いとき 月5冊
         少ないとき 月0冊
        (好きな作家さんの本が出ていたら買う)
買う本の種類 | 文庫本
所蔵数    | 200冊~300冊くらい
本の買い方  | 基本的に作家買い、本屋で気になったら買う
好きなジャンル| ミステリー、推理小説
好きな作家  | 辻村深月、米澤穂信、湊かなえ

作家買いしている作家
ノールックで買う| 辻村深月、米澤穂信、湊かなえ
あらすじを確認 | 中山七里、恩田陸、相沢沙呼、今村昌弘、澤村伊智

WEB小説

小説家になろう(通称 なろう小説)

アプリ    | なろうリーダー
本を読む頻度 | 月に10時間前後
        (ハマっている作品があったら読み終わるまで)
読む作品   | 基本的に完結済みを読む
好きなジャンル| 悪役令嬢・令嬢もの、未来の技術で無双もの
         異世界転生もの、SF、都市伝説系

読むスピードは速い方だと思います。また、読書ジャンルが偏っているので、そうそう鵜呑みにしてはいけないな…というのがお分かりいただけたかもしれません。それでもちょっと気になるな、という方は続きをどうぞ!


文学フリマの歩き方

文学フリマに参加したのは今回が初めてでした。これまでは、コミティアに3回程行きました。(内1回は今回と同様、サークル主の売り子として参加)

元々本を読むのも、本を読んだ感想を話したり文章にしたりするのは好きです。また、演劇をやっているので、役作り等でも読書をしたり、戯曲を読み解くという訓練などもあり、文字を読む機会は多いと思います。

同行したサークル主からは、「お酒を飲むような感覚で本を読んでいる。本を浴びるように読んでいる」という風によく言われます。
同じ姿勢で数時間、スマフォでなろう小説を読み続けるというのも休日には良くみられる様子です。

今回は、サークル主から「好きな本を買ってきて欲しい」という依頼を受けて文学フリマのスペースを見て回りました。

・予算4,000円
・自分が読まなさそうなもの
・最後まで読み切れそうなもの
・ジャンルはファンタジー、SF以外
(小説家になろうでサークル主が読んでいるため)

サークル主からの要望

というリクエストがあったため、ジャンルによっては買わない前提がありました。結果、4冊購入しましたが、特に縛りがなければ、あと5冊くらいは買っていたと思います。

文学フリマが開場して、壁サークルの記号Aのスペースから見ていきました。その後は、Bから順に、歩いている方向の右側のスペースを見る、という風にして進んで行きました。

一応気になるサークルスペースはチェックしていましたが、そのときに見たお品書きの画像や、大体の位置を頼りにしました。カタログに書きこみましたが、結局見なかったですね…。

1週目は、装丁が気になったもの、タイトルが気になったものを手に取っていきました。サークルスペースのすぐ前をゆっくりのスピードで歩きながら見ていきます。その際、ペーパーを配って下さる方からは直接受け取りました。「無配ペーパーがあります」と声掛けして下さった所も多かったです。

ただ、片手に本を入れる鞄、片手にペーパーを持っていたので、手渡しして下さった方のペーパーのみ受け取らせていただきました。後ろに人が続いていると、突然止まるのも申し訳ない気がしたので、手渡しでペーパーを下さる方々は本当にありがたかったです。

この段階では買う気がかなりありますので、ペーパーも貰えたら貰っていくというスタンスでした。

本を買った決め手

買うまでの流れ

サークルを見て回っている中で本を買おうと思った基準、決め手はなんだったのか…? 実際に、私が考えていたことを順に書くとこうなります。

①装丁、タイトルに惹かれる
②立ち止まって、装丁、タイトル、ジャンル、あらすじが書いてあれば読む
③見本誌を読む
④句読点が読みやすくつけられているか見る
⑤1ページ目の1行目をしっかり読む
⑥センスを感じる、読みやすそうなど思ったら、2~3行くらい読む
⑦2~3ページにざっと目を通す
 ストーリーや雰囲気、言い回し、言葉のチョイスなどが気に入ったら買う
⑧短編集、アンソロジーの場合は、1作品目だけでなく、真ん中くらいの作品も⑦のみ確認する

書き出すと、いくつか境目があるように見えます。

【1】 ①と②の間で、立ち止まらせることができるか
【2】 ③のあらすじが書いてあるか、または過不足なく書かれているか
【3】 ④の最低限の文章が形成されているか

⑤以降は、正直「その人の好み」「フィーリング」かなと思います。
ただ、①~④については、
「自分の作品を手に取ってもらうための姿勢」
「参加者(読み手)のことをどう考えているか」
というサークル側の意図が反映できるところだと思いました。
参加者がスッとサークルスペースの前で立ち止まりやすく、作品を手に取りやすくなっていたらいいのかもしれないなぁと思いました。

買った決め手

①~⑧について、その時考えていたことや心情を追加していきましょう。

①装丁、タイトルに惹かれる

「人は見た目が9割」なんていう本もありましたが、装丁やタイトルは作品の顔だと思います。目を惹く装丁や作品をあらわす世界観、タイトルは商品名なので、読めなければ伝わらないのと同じかなと思います。自己紹介の時に、自分の名前をごにょごにょっと言うよりは、はっきり伝えた方が印象も違いますよね。

各スペースの前をゆっくり歩いても、かけられる時間は5秒~10秒くらいなんじゃないかって思います。そこで目を惹けば足をとめて、近づいてみるという行動にうつります。
私は、装丁の雰囲気でいいなと思ったり、タイトルが素敵だなと思ったら足を止めて見ました。足を止めて見たサークルさんは10カ所あったでしょうか…?

②立ち止まって、装丁、タイトル、ジャンル、あらすじが書いてあれば読む

気になった本があったら、立ち止まって、近くで装丁を見ます。
大体、「近くで見ても素敵だな~~~~」と思っています。
タイトルと、ジャンルなどが書いてあったらそこを見ます。
今回は、ファンタジー、SFは外していたので、そのジャンルだったら見るだけで終わっていました。ジャンルが書いてあるととても助かりました。

あらすじが書いてあれば読みますが、文字が小さくて見えにくいところがほとんどでした。あまりにも読みにくい文字の大きさだったら、見本誌を読むか、諦めました。立ち止まってじっくり見たいのですが、他の参加者さんが見たかったら邪魔になるかも、と思うと、確認も急ぎ気味になります。見本誌コーナーに行っても良いのですが、読んでいるうちに本が無くなってしまったら怖いのでやめました。

③見本誌を読む

あらすじを読んで、もうちょっと詳しく雰囲気や作品を知りたいな、と思ったら見本誌を読ませてもらう、という感じでした。
見本誌を読ませてもらうのは、ポジティブな意味合いの方が強いです。

この見本誌を手に取った時点で、私は「買うかどうか」という範疇に入っていました。手に取った時点で「買う」という選択肢が出ています。
なかなか見本誌を手に取ってもらえないと思ったら、まず見本誌を手に取ってもらう動線を作った方がよいかもしれません。
既刊と新刊があるならば、どちらを売りたいのか、何冊も置いてあるならば、どれに一番注目してほしいのか、などです。2週くらい小説のエリアをまわって思いましたが、複数本が置いてあっても、目が追えるのは1冊くらいでした。何冊も試し読みをさせてもらう気にはなりませんでした。

④句読点が読みやすくつけられているか見る

これは必ず確認しました。どれだけセンスのある言葉を散りばめていても、最後まで読み切ることができなかったら申し訳ないですし、楽しめないなと思いました。
最低限の文章を構築できているか、基本的な文章力があるか、という「安心」を確認していたつもりです。

中には、「、」がほとんどなく、話し言葉で書かれている作品もありました。なんでこんなに「、」が少ないんだろうと思って3行ほど読むと、登場人物が話し言葉で話しているというのがわかりました。
こういう感じも好きなのですが、最初の印象で読みにくいな、と思ってしまったのと、登場人物の口調が自分の読むテンポやリズムにあわないなと思ったので今回は手に取りませんでした。

なろう小説は1文が長い傾向にある、という話も聞くことがありますが、スマフォの横画面に入る文字列が決まっており、短く次の行に送られていくので、句読点が少なくても読めてしまうのでは、と思っています。
文庫本の小説は縦書きなので、句読点が適切に無いと読みにくいなと思っています。(一般的にA4用紙横1行だと40文字以内が読みやすいと言われていたような気がします。)

また、演劇の戯曲を読むときは、句読点で感情が切り替わる、と思って読み解いているので、句読点が無いとどう感情が変化していくのかというのが読み取りにくい、と個人的には思っています。

本屋で売られている本は、編集さん、校正さんなど第三者の目が入っているので、文章の体裁は整えられているという前提があると思っています。
ですが、ここで並べられている本たちは、その前提があるかどうかわからない。基本的な文章としての形が保証されているか、国語の範疇にある常識で文章が綴られているかという、商業本では保証されている部分を、私自身で確認する、という作業が入っているのだと思います。

⑤1ページ目の1行目をしっかり読む

1行目がどう書かれているかで、作品全体の感じがつかめると個人的に思っています。湊かなえ先生の「告白」の冒頭1行。この1行でどんな状況かを読み手に伝えられるのは凄い、というようなのをどこかで読みました。
同じく、乙一先生の「夏と花火と私の死体」の冒頭1行も見事です。

演劇でも、冒頭の第1声、最初の台詞はそれはもうとてもとても大切にしますし、全体の中でも一番練習します。この第1声で、作品全体が決まってしまうといっても過言ではありません。

そう思うと、1行目を読めば大体どんな感じなのかわかるんじゃないか、ということで、1行目はじっくり読みます。ここで「上手い」と思ったら即買います。

⑥センスを感じる、読みやすそうなど思ったら、次の行から2~3行くらい読む

内容もそうですが、気持ちの良いテンポで読み進められるか見ている感じです。冒頭は世界観の説明が多いイメージなので、説明ばかりになっていないか、世界観を表現するような会話で読みやすくなっているかなども見たりします。

なろう小説もそうですが、冒頭で説明が多いとめげてしまうので、世界観に入りやすいかどうかも見たりしています。ここで「いい!」「やられた!」などの1文や言葉、会話があると買ってしまいますね。

⑦2~3ページにざっと目を通す
 ストーリーや雰囲気、言い回し、言葉のチョイスなどが
 気に入ったら買う

⑥の2~3行で決め手に欠けたら、2~3ページをざっとななめ読みします。ななめ読みをしても、ページ内に素敵な言葉や会話、表現を目が拾ったら、その辺りを細かく読みます。
ななめ読みをして、雰囲気や世界観が拾えれば買おうかな、という気持ちが強くなります。

⑧短編集、アンソロジーの場合は、1作品目だけでなく、真ん中くらいの作品も⑦のみ確認する

複数人が書いた作品がまとまっている本は、最初の作品だけでなく、真ん中くらいの作品も冒頭を読んでみます。1作品だけでもお気に入りがあればよいのですが、欲を言えば何作品もお気に入りの作品が収録されていた方がいいよね~って思います。


長い時間立ち止まると他の方のお邪魔になるかなと思ってしまうので、短い時間でも判断出来て、自分が納得して買うということで、①~⑧のような流れでどうするか決めています。
サークル参加側の方で、少しでも多くの方に手に取って貰ったり、立ち止まって貰ったりしてほしい!と思った方の何かヒントになればと思います。

#文学フリマで買った本

運営公式さんから提案の戦利品公開タグ、私も楽しませてもらっています!運営さんが、感想や行ってきたのツイートなどを促してくれるのは嬉しいなと思います。

そんな流れを経て、今回買わせていただいたのはこちら。

上段の4冊が私購入。下段2冊はサークル主が購入。感想は後日Twitterに流す予定

また、沢山頂いたペーパーの中から、面白そうだなと思ったもの。

たくさんもらいましたが、全部読んで本を買ってみたいと思ったもの。
百目鬼祐一さん。めっちゃ面白かった。TSUTAYAの下りも共感。
中に作品紹介があるのですが、どちらも読んでみたいなと思わされる文
何となく先の雰囲気や展開は感じ取れるんだけど、スイカの気持ちというインパクト
単純に上2作品、好きな感じ


おわりに

まだ見ぬ作品がこんなにたくさんある、ということに喜びを抑えきれないですね! 帰りの道中、「なぜ文学フリマで本を買うのか。同じ値段なら商業の文庫本を買えばいいのではないか。何を求めてくるのか。」という話もしました。

私の個人的な意見としては、

・ここにしかない本がある(特にエッセイや評論、解説本)
・商業にのらない内容のものがある(特に評論や解説本)
・実際に体験した人が書いてくれている(グルメ本や旅行記)
・その年齢で書いてくれたものでしか得られない栄養素がある
(学生が書いた青春小説、ジュブナイル小説)
・今、若い世代がこの世界に何を思っているのか知れる(小説)

かなぁと思っています。

随分年齢を重ねてしまったので、若い世代が何を考えて、どう感じているかを知る機会が本当にないなぁと思っています。また、演劇をやっている者として、若い世代の人に観劇してもらいたいと思うなら、その世代が何を求めているのか、どんなものを面白いと思うのか、というのは知っておきたいなという思いもあります。大学文芸サークルから、沢山声を掛けてもらえる機会なんて、ここでしかないですしね!(笑)

また、もし素敵な作品があったら、TwitterやYouTubeで、作品をちょっとだけ朗読させてもらえたりしたら嬉しいなぁとも思っています。ちょっとした動画にもできると思います。Twitterで、次の文学フリマの告知や作品紹介としても使って貰えたら嬉しいですし、逆にそういったプロモーションをしたいから読んでくださいというのも私は嬉しいです。

こんなようなミニドラマをボイスサンプルとしても聴いてもらえるようにしたりしています。朗読もやりたいなと思っているので、もし短編小説などで素敵な作品に出会えたらお声掛けできたらいいな~。

買った本の感想やペーパーの細かい感想は、Twtterにアップ出来たらいいなと思っています。気になる方がいらっしゃったらフォローしてお待ちください。
https://twitter.com/noto_emi

今年はサークル主のサークル参加の予定はなさそうなので、また来年、かな


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