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心底好きだから

夜も明けきらない早朝の商店街にできる行列。一日限定150本の羊羹を求めて並ぶお客さんの列は、40年以上にわたってとぎれることがありません。東京・吉祥寺の和菓子店、小ざさ(おざさ)の朝の風景です。

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「お客様のために真心をこめてつくるのは当たり前のことですが、いざ羊羹を練るときは、私一人きりの世界。誰にも邪魔されずに、羊羹と向き合う瞬間です。唯一、無心になれる時間。いろいろな思いを引きずっていては、絶対にうまくはいきません。工場や店のこと、人間関係、そして暑さもすべて忘れて、ただ小豆の声に耳をすましながら、無心になって羊羹を練る。そうして練り終わった瞬間には、なんともいえない爽快感があるのです」
 
1951年、小さな屋台から創業した父を納得させる味を目指して60近く年にわたって羊羹を練り続けてきた筆者、稲垣篤子さんは言います。
 
「結局、私は羊羹を創るのが心底好きなのです」

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ただひたすらおいしいものをお客さまに食べていただこうと、「125歳まで現役」を目標に味を追求し続ける稲垣さんの力の源は、この一言ですべてが表現されています。

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