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異邦人

[2016年1月9日の日記]

原題:Lo Straniero
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・カリーナ
公開年度:1967年
鑑賞:2016/01/09

ずっとずっと、この作品を観たいと思っていた。ルキノ・ヴィスコンティ監督、アルベール・カミュ原作。そしてヴィスコンティ作品にまさかのアンナ・カリーナ出演。でもなぜかこの作品、ずっとメディア化されていない。リバイバル上映の話も聞いたことがない。数あるヴィスコンティ作品の中で、なぜこの作品だけがそのような扱いなのか、その理由は知らないけれど、ふとしたきっかけでこの映画の「吹き替え版」を観ることができた。

僕はもちろん原作の「異邦人」も読んでいる。アルベール・カミュは好きな作家の一人だ。「シーシュポスの神話」はボロボロになるまで何度も何度も読み返した。このカミュの名作をヴィスコンティは一体どのようにして映像化したのだろう。きっとヴィスコンティなら、それは期待を裏切らないものに違いない。

20年の間に積み上げられた僕の期待は相当大きなものであったはずだけど、実際の作品はその期待を遥かに超える出来映えだった。素晴らしい。素晴らしすぎる。原作をただ読んだだけでは曖昧だった僕の解釈の輪郭が、ヴィスコンティによって鮮明になったとさえ感じた。

ムルソーという人物を、僕はとても身近に感じていた。なぜ撃ったのか。それはきっと太陽のせいだ。有名な台詞だ。この滑稽な言い訳にどれだけの真実が含まれているか。言葉では説明できないことがこの世界にはどれだけ沢山あるか。そしてそれを無理やり言葉で説明することで、どれだけ真実が歪められてしまうのか。

この作品を初めて読んだとき、僕は救われたような気持ちになった。あの頃の思いを鮮やかに蘇らせてくれたこの映像作品に、僕は心から感謝したいと思う。

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