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『The Goat Life』

監督:Blessy
出演:Prithviraj Sukumaran, Jimmy Jean-Louis and K. R Gokul など
公開:2024/3/28

知人からおすすめされて観てきた。
実話をもとに制作されたマラヤラム映画。

マラヤラムとはインド南西部に位置するケララ州の公用語。
ケララ州は教育や経済の水準が高いことで知られており、その影響からかマラヤラム映画は社会的な内容のものが多いとされている。
圧倒的スターが暴力で悪を成敗するといった派手な展開の多いタミル映画やテルグ映画とは異なり、リアリスティックな描写が好まれる傾向にあるらしい。

さて、本作もマラヤラム映画の特徴として、物語は淡々と展開されていった。
ストーリーは至ってシンプル。

あらすじ
出稼ぎで中東にやってきたケララ人の男性。空港での手違いから、砂漠のど真ん中にあるヤギ牧場に無理やり連行される。過酷な環境の中で奴隷のようにこき使われる日々が数年続いたある日、離れ離れになった仲間と偶然再会する。そして、故郷に向けて砂漠のど真ん中から脱出を試みる。

作品の舞台は砂漠なので、スクリーンに映し出される風景は基本的に見渡す限りの砂地獄である。
そこに主人公の回想シーンが挟まる。
乾燥しきった灼熱の大地とは対照的に、豊かで瑞々しいケララの自然。
森と川に囲まれた村で妻や仲間たちと楽しく暮らす主人公。
何でもないようなことが幸せなのだと気づく瞬間だ。

360度砂漠の中で逃避を続ける主人公は、頻繁に「Allah…」と呟く。
あらゆる生命がちっぽけに、そしていともたやすく潰されてしまうように見える砂漠の中で発せられる唯一神の名はとても切実で、イスラム教が砂の民から生まれた宗教であることに納得感があった。
多神教徒の私ですら最も大きな存在に祈ってしまうような、過酷な逃亡劇だった。

この映画は、厳しく美しい自然や何かを象徴するような印象的な描写が多い。
ストーリー展開は非常に緩やかで、主人公の葛藤や苦しみが静かに表現されていた。
普段は派手なアクションを中心にしたインド映画を観ることが多く、インド映画の多様さを改めて知ることになった。

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