【短編】僕の自由は袋小路の中にある
いつもこの時間になると道を見ている。
袋小路に座った僕は、右から左、左から右へと流れていく人を見ながら、この時間を過ごしている。眺めているのが珍しいのか、大抵の人がこちらを見ていく。じっと観るだけの人や睨む人もいるが、それ以外が圧倒的に多い。最近は顔を布のようなもので覆っているけれどわかる。あの目の形は笑顔だ。
そんな笑顔を受けながら、僕は目を合わせることなくすました顔でそこにいる。通りすがる人は大勢で、僕はひとり。全員に声をかけるわけにも、愛想を振りまくわけにもいかない。