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伸展型腰痛に対する上位胸郭の評価法

こんにちは!腰痛マガジンメンバーのこじろう(@reha_spine)です。

前回の記事では胸郭を構成する「肋骨と腰痛の関連性」や「肋骨可動性の評価方法」をご紹介しました。


また、別の記事は頭部の位置関係と胸郭の可動性低下について、「上位交差症候群と腰痛」という観点でまとめさせて頂きました。

そして今回は、「頚椎・上位胸椎・肩甲骨を含む上位胸郭と伸展型腰痛」という観点で上位胸郭の可動性低下による腰痛への関連性についてまとめていきたいと思います。上の2つの過去の記事も今回の内容と関連しているため、参考にして頂けるとより深く理解できると思います。

今回の記事はこのような方にオススメな内容となっております😊

👉腰痛の原因分析について理解を深めたい方
👉上位胸郭(頸椎〜上位胸椎・肩甲骨を含む)と伸展型腰痛の関連性を知りたい方
👉腰痛評価の際に上位胸郭の評価を行っていない方
👉評価の際にどこを評価していいか分からない方


では早速いってみましょう!!

▶︎上位胸郭と腰痛の関連性

以前の記事にて「上位交差症候群と胸郭の関係性」について説明させて頂きました。今回の記事とも関係しますので簡単に復習しておきましょう!

まず、上位交差症候群とはどういったものだったでしょうか?

上位交差症候群を簡単に説明するとアライメントとしては、「頭や肩が前に出て、背中が丸くなっている状態」です。

そして頸の後ろの筋肉と肩の前側・胸の筋肉が硬くなり、頸の前側深部の筋肉と背中の筋力が低下している状態です。

胸椎後弯が強く、上位胸椎が前傾すると、頭部が胸郭よりも前方に位置するこの上位交差症候群が形成されます。

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【上位交差症候群と伸展型腰痛の関連性】
頭部前方変位(上位頸椎伸展、下位頚椎屈曲)
→胸椎を後弯位に固定
→肩甲骨外転
→胸椎伸展を制限
→上位胸郭拡張制限
→下位胸郭拡張制限
→胸郭が広がらないため体幹伸展時に腰椎前弯増強
→伸展型腰痛

このように頭部を含め、頸・胸椎、肩甲骨などの可動性が低下すると、上位胸郭周囲の筋緊張が亢進し、下位胸郭の柔軟性低下にも繋がり、結果として脊椎全体の可動性も制限されます。その傾向は加齢とともに強くなっていき、胸郭マルアライメントが『腰痛』『肩こり』の要因となっていきます。

▶︎頸椎と胸郭の運動連鎖

加齢に伴い、胸椎後弯が増強すると、胸郭に対して頭部が前方偏位し、下位頸椎では並進運動により前弯が減少し、屈曲が増強します。そのため、頸胸椎移行部の変曲点は上方へと移動します。

【胸椎後弯増強による頸胸椎移行部の前・後弯移行ポイントの上方化】

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このような変化は胸椎に対する屈曲モーメントを更に助長します。更に胸椎後弯によって肩甲骨の過剰な外転が生じることや、上下の肋骨間の狭小化により胸郭は下制しやすくなります。

胸郭が下制し、胸郭の拡張性低下を引き起こすと胸椎の屈伸、側屈、回旋可動域が制限されるため、腰痛にも関連してきます。

そのため、頭部と胸郭の位置関係、頸椎や肩甲骨アライメントも腰痛と密接な関係性があります。1)

▶︎上半身質量中心と胸椎後弯の関係性

胸椎後弯の増強に伴い、胸椎の伸展制限が生じると、上半身の質量中心と各椎間関節との距離が離れてしまいます。

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このような状態で姿勢保持をする場合、椎間関節の付着する多裂筋や半棘筋、長短回旋筋などのローカルマッスルへの負荷が増大します。
そして徐々にグローバルマッスルも代償として活動性が高まってしまいます。


これらにより、背部筋が過緊張状態となってしまいます。そして、胸椎の伸展制限により代償的に腰椎の伸展を増強させることになります。

▶︎上位肋骨(上位胸郭)と肩甲骨の関係性

では次に上位胸郭と肩甲骨との関係性について説明していきます。

以前の記事でもご紹介させて頂きましたが、吸気時の上位肋骨の動きとしてはpump-handle motionとして肋骨の前後径の拡大運動が生じます。

【水平面上の動き】

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【矢状面上の動き】

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そしてこの動きには肩甲骨の関わりも大きくなります。肩甲骨のアライメントや可動域は胸郭アライメントとその周囲の筋緊張にも影響を与えます。


胸を張った良姿勢を得るためには肩甲骨の内転・下制位をとる必要があります。通常、肩甲骨の内転・後傾の制限因子は小胸筋の過緊張も影響しますが、肩甲骨の運動に連動する鎖骨および胸郭運動も重要となります。そのため、肩甲骨内転・下制の制限因子として胸郭の挙上制限や鎖骨の水平伸展制限も考慮する必要があります。

上位胸郭と腰痛との関係性についてご理解頂けたでしょうか?
ではここからは、今までの内容をもとに上位胸郭の評価に移っていきます!

▶︎肩甲骨自動内転テスト

まずは肩甲骨の運動に対する上位(中位)胸郭の可動性テストをご紹介します。

【開始姿勢】
座位にて両手を後頭部で組んだ状態で胸を張ります。2)

【判定基準】
菱形筋を収縮させた際の肩甲骨のアライメントと上位・中位胸郭の参画程度を判定します。意識的に胸郭を挙上してもこれらの条件が満たされない場合は上位・中位胸郭挙上制限と判定されます。

【理想的な肩甲骨アライメント】
①前額面にて肩甲骨内側縁が胸椎棘突起から3cm以内
②矢状面にて肩甲骨内側縁が重心線に平行以上(後傾位)
③水平面で両側の肩甲棘が180°以上

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▶︎肋横突関節に対する柔軟性評価〜胸椎横突起の触診〜

ここから先では肋横突関節に対する柔軟性評価についてご紹介します。

胸郭の動きを作る主な関節は、肋骨頭関節と肋横突関節で構成される「肋椎関節」であり、その運動は滑り運動を伴った回旋運動になります。

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まずは評価する上で重要となる「横突起の触診」についてご紹介します。

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