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続き。

・では円錐切除はどうかという話になると、グレーになる。円錐切除くらいの手術であれば大丈夫だという医師も沢山いる。もっと安全に手術を行うのであれば1カ月待った方が良い。

「…そういう問題点があって、それはどうしようかなと思っていました。もしピルの話がなかったら急ぎで入れて、ぽんぽんってやっちゃおうかなと思ってたんですけど、実は。笑
どうかなぁ…。自らリスクに足を突っ込む必要があるのかと思って、それは…お任せしてもいい。笑」

私はクリニックの担当医師が私の渡英のスケジュールを気にして、かなり情にかけてくれていたことを話した。と同時に、彼女もコルポスコープを担当した医師も、健康を蔑ろにしてまで渡英するのはどうかと思う、身体を一番に考えるようにと常に話してくれていたことも伝えた。長谷先生は笑いながら相槌を打ちながら聞いていた。たまに「そうそう、その話がね〜。笑」とか言う。まるで病気の話をしていないみたい。気持ちがほぐれる。

自分も健康を最優先にすべきだとわかってはいるものの、やはりビザの事が気になっていて、ベストな状態で手術・治療をした場合、いつ渡英が可能な状態になるのか?と質問した。

・手術をした後心配なのは、だいたい2週間後くらいまで、長い人はもう少しの期間、出血をする。この出血が大量出血になった場合、医学的な介入をして止血しないと止まらなくなる。稀に、その出血で輸血になる人もいる。

「…だから、その時期にガツガツ動いて仕事するのは、やめた方がいいんじゃない?って僕は思う。ダラダラしてた方がいいと思うんだよね〜。普通に仕事しててもいいんだけど、出たら(出血したら)きて欲しい。笑 そしたらなんとか止めてあげられるんだけど。
だけど、まあ、飛行機の中でそんなことが起こったら、下手したら死にますから。笑 それは、やめた方がいい。素直に。」

僕が思う選択肢としては、と前置きをして先生が提示した選択肢は2つ。

  1. この病院で待機的に治療をして、出血が治ったら出発する。

  2. イギリスで治療する。

・日本で治療をしないということが選択肢に上がるのは、先ほども伝えたように(※5で書いた内容)本当に癌になるまでは時間がかかる病気だから、急にとても悪くなると言うことはない。例えば1ヶ月〜2ヶ月待ったところで大丈夫(大きく状況は変わらない)。
向こうで治療することが金銭的に、また気持ち的に大丈夫なのであれば、そこに大きな差はない。

お、なるほど…その選択肢もありますか、と思った。イギリスで1人で手術を受けるなんて大冒険じゃない!と心のどっかで思ってしまった。なんでも挑戦したくなってしまう、向こう見ずな自分が一瞬はしゃいだ。馬鹿野郎。
その声を黙らせて、冷静に渡英してから手術ということを考える。浮かんできた疑問があった。

この日面談をする迄に、やはり多少怖くなって色々と調べたら、円錐切除手術を受けるために脊椎麻酔をした人の体験談に行き当たった。
その方の体験では、円錐切除をしたことよりも脊椎麻酔をしたことによる後遺症(頭痛や腰痛)が酷く、仕事復帰までに時間がかかったということだった。おおよそ半年かかったと綴られていたように記憶している。
そのブログを読んだ事を先生に話して、自分は脊椎麻酔をする可能性があるか?と質問してみた。

長谷先生は少し間を置いてはっきりと「ないです。」と答えた。

「何故かと言うと、円錐切除は基本的にリスクがない限りは全身麻酔でやるから。」

なるほど。少し間があく。

「そんなところ、、、かな。日程との折り合い、リスクとの折り合い、ここで治療することの気持ちの問題。笑 それくらいかねぇ、うちでやるかやらないかって。」

私も笑った。
おそらく日本で手術を受けてから出発することを選択すると思います、と伝えた。

「どういう対応も僕らとしては可能なので、というのは、時期的には大事に行くんだったら1ヶ月後にしたほうがいいと思うし、手術の時期を。今日(違う段取りをとることを)決めるんだったらそれを目標にやればいいとと思うし。」

と返答した。

すごい人だなと思う。淡々とできることできないこと、やるべきことやるべきでないことを説明した後にこの台詞が言えるんだ。先生はきっと信用できる人なんだろう、と思えていた。

もうこの病院で手術を受けることは決まったなという気持ちだった。イギリスに移ってから手術をする事について私の中で可能性は0ではなかったけれど、父が許すわけがないし(実際ありえない!という感じだった。彼にとって日本以上に信用できる国はないらしい。)、渡英の延期は避けようのないことだということは、最初にクリニックから電話を受けた時よりもまだ受け入れられていた。
それに、長谷先生の病院は、以前も書いたかもしれないけれど、厚生労働大臣指定のがん診療連携拠点病院で、つまりがん治療に長けた病院ということだった。偶然とはいえ幸いなことだ。渡英する前に病変に気付いたことも幸いだし、信頼に足る病院で信用できる医師に診てもらえるならやるべきだ。そういう気持ちになっていた。

先生が思うベストなタイミングで、予約が取れるのはいつですか?と尋ねてみた。今みますね、と言ってすぐに確認をしてくれた。



30th May 2023


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