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【エッセイ】鍵ひとつ

わたしが何度も読み返している漫画の話をする。
アル中でうつ病の漫画家が主人公の漫画だ。

いちどネットで話題になったようなのでご存じの方もいると思う。

この漫画を読み返すのは、元々作者が好きなのと、主人公の考え方と主人公が漫画家になってからの境遇に共感しているからだ。

漫画では、芸術や文芸の解読方法の差にまつわる話が出ていた。
かいつまむと、人は文化に触れたときに「言葉で説明しがたいものに惹かれるタイプ」と「言葉で説明して理解できるものに惹かれるタイプ」がいて、違いは優劣でなく各々の人生で触れてきたものによって生じる差であり、互いの感覚は理解しあえないところがある。といった内容だった。

主人公とわたしは前者だ。
行間や物言わぬ佇まいの感覚に惹かれる。

同時に、世界観の理解や未知の用語に関係なく、稀に何がかいてあるか全くわからないときがあるのはその違いかと納得できてしまった。

感度の種類の違いは、国籍や宗教が違うくらい差があると思う。

では違いをどう捉えるのか。
分かり合えないからといって鍵をかけ続けるのは、余程変なものでない限りは避けたい。自分と同じ感性の尺度ばかり集まっても面白みがない。
かといって、なんでもかんでも受け入れていたら悪食でおなかを壊してしまう。

ときおり鍵ひとつ、かけたり外したりするのが身体にいいのかもしれない。





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