「流行る店、潰れる店」
今週のぜったにつぶやけない話
「2019年第1週」
職業柄、多くの飲食店の立ち上げ(オープニング)に携わる
ぼくの携わり方というのは
立ち上げ業務、いわゆる内装やキッチンの図面設計のアドバイスや
メニュー、カトラリーやグラスなどの手配
食材や飲料の業者をつないだりというオペレーションの組み立てから
マーケティングやPRまでと多岐にわたる
その中で良くレストランオーナー(この場合はぼくのクライアント)から質問に上がるのは
立地って大切ですか?
というものである
これは近年急に増加してきた質問で、以前はこんな質問をされることはなかった。
それはそうだ
飲食店に限らず、すべての商売にとって立地というのは大切どころか成功への必須条件。立地こそマーケティングであったといってもよい。
しかし近年は皆さんのご想像の通り、テクノロジーの発達によってその立地というのもの価値が相対的に大きく下がった
amazonで食品を買って、ZOZOで衣料品を買うのだから
飲食店に関して言えばWEBサイトの情報によって人々は扇動され、美味しいものを求めて町のはずれどころか、山の中にまで行く
東京から数時間かけていく岐阜のお店が、ジビエの時期は予約で満席なのだ
だから新しく飲食店経営をしようとする
特に飲食業界以外で成功した新店舗のオーナーたちは口をそろえて同じ質問をする
「立地って大切なんですか?」
「おいしければ、コンセプトが良ければ、場所はそんなに関係ないですよね?」
と
これに対してのぼくの答えは
半分YES、半分NO
だ
いや、正確に言うと立地が重要なジャンルと、そうでないジャンルが存在するという事だ
失礼を承知で言うと
ぼくの感覚からしたら僻地といってもいいほどの鹿浜に美味い焼き肉店がある
ご存知「スタミナ苑」である
こちら超人気焼き肉店は総理大臣であっても予約不可
代理(秘書)でもいいので他のお客さんと同じようにオープン前の行列に並ぶ
16時オープンだが土日であれば14時前には並ばないと1回転目、つまりオープンと同時に席に着くことは難しい
最寄駅からタクシーで20分
周りにカフェもなければ飲食店もない
こんな場所に100名近い行列、それも毎日
この異様な光景を見たらだれもが驚くでしょう
暑い夏は缶ビール片手に行列に並ぶ
これがスタミナ苑の風物詩です
なんだ
やっぱり立地は関係ないじゃないかと
焼肉に関して言えば
確かにそうである
ではフランス料理はどうだろうか
確かに一部、田舎ではやっているオーベルジュや地元の野菜を使ったフレンチレストランは存在する
しかし都心部においては
たった数十メートル場所がずれただけで、かっこいい店からイケてない店へと評価が急降下する
それがフランス料理である
町のど真ん中にあればいいとか
それこそ銀座並木通りが最高だからとかいう単純な話ではなくて
導線、つまり人の流れに沿っている立地かどうかというのが、非常に重要なのである
つまりそれは利用シーンの違いであり
マーケットという名のお客さんの頭の中で想像される今日一日のストーリーに沿って、美しくビジュアル化されているかどうかという事である
とにかく飲食店経営というのは非常に難しい
一歩、いや本当に少しずれただけで店は簡単につぶれる
スタミナ苑のすばらしさは
味もさることながら
おやっさんの鬼気迫る仕事ぶりが物語を生み出し
鹿浜の地で文化になったことであろう
夏の高校野球選手権や正月の箱根駅伝と同じく
スタミナ苑の行列はもはや文化なのである
それにしてもおやっさんは本当にすごい
2時間並んだ行列の前にオープン直前に姿を現し
「飲み屋じゃないからね、美味しく食べてさっと帰ってね。何時間も待ってるお客さんいるからね」と
一枚一枚お肉の包丁の入れ方は違う
保存は一枚一枚ペーパーとラップにくるみ
もはや我が子のように大切にしている
あの仕事を見たらね、
これは文化だなと
そうなって初めて立地は関係ないといえるんでしょうね
夜中3時まで次の日の仕込みをしているみたいですから
鬼気迫る仕事
飲食店は簡単に手を出しちゃいけないよ
5年持っても10年持たない
10年持っても30年は持たない商売です
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