12月はこんなにも楽しかったのか。

FNS歌謡祭とM-1グランプリ。

今年叶わなかった些細な夢を供養する時間。
実現しないであろう来年の抱負を考える時間。

電飾に彩られたやけくそな街。

今年ももう終わりだね。
来年は何したい？

12月はこんなにも楽しかったのだ。

それなのにあの年のわたしは、この季節特有の浮ついた娯楽を何ひとつ味わうことなく、ただ人を待ってた。

会えるか分からないクリスマス・イヴのために、予約したアイスケーキ。

来ない連絡。

寒さを紛らわず方法さえ忘れて、きんきんと冷えたまま、放置して、心を。

寒くて仕方がなかったのに、年の瀬を楽しむ余裕がある今よりナット・キング・コールの「Th Christmas Song」は響いて。

定番のクリスマスソングを繰り返し聴いて、茶番じみた幸せな時間を空想する。

暖炉とクリスマスキャロル。七面鳥。サンタを夢見る2人の子供はわたしとあなた。
兄弟なのか、親友なのか、恋人なのか。

まるでマッチの火が消えるとすべて失われてしまう夢のようなイメージ映像。

切なくてばかみたいだ。

それでも、幸せだった。

あなたと過ごしたあの最低なクリスマス・イヴは、わたしにとって人生の最高の思い出だ。

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温かく満たされた心を揺らし、大切な人への贈り物を探しながら街を歩く。

そうか、12月はこんなにも楽しかったのか。

笑みを浮かべたわたしは、あるささやかな事実を目の当たりにし、反射的に泣きたくなる。

まだあなたを愛している。