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ウォール厚みと透明度の関係性

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。

ヘッダー画像はペンケース制作に適した設定値を探っている際の試作物

疑問:ウォールのみで造形した際に、透明度のグラデーションは作れるか?

袋状のものは底面が閉じていないといけない。ペンケースをデザインする上で、底面をどのように閉じるかは非常に重要だ。もし次に意匠にバリエーションを与えるとしたらまず底面の閉じ方について考えるだろう。

底面の閉じ方を検討しはじめたころの断面形状

上図のように当初は外観に出る箇所を丸く、内側をテーパー状の形にしていた。外観をスッキリさせつつ底面を閉じれないか?と考えていたが、実際に作ってみると厚みが急激に変化するために触り心地が良くなかった。

底面の閉じ方についてあれこれ考えているうちにふと、半透明な造形物の厚みが増えると透明度が下がり、グラデーションが作れるのではないか?ペンケースの底にいくにつれて徐々に不透明に出来ないか?という疑問が湧いた。

結果:Curaのウォール生成のアルゴリズムでは難しそう

ウォールのみで造形すると
厚みと透明度に比例の関係性が出るわけではない

まず試行錯誤の結果としては、Curaのツールパス生成の仕組みでは難しいと判断した。インフィルを用いると実現出来そうだが、今回のペンケースではトラベル(吐出無しの移動)の徹底的な抑制をしたかったのでその方法は用いなかった。トラベルの徹底的な抑制をしたい理由については別途記事にしたい。

ウォールの厚みが一定以上の時には、ウォール同士が十分に密着せず隙間や空間が出来てしまう時がある。上図の個体がわかりやすいが、ノズルが曲がるところは色が濃く、つまり充填されている。逆にノズルが真っ直ぐ動く箇所では色が薄く、つまり充填できていない。

Curaに三角柱を読み込ませてツールパスで内部が埋まるまでパス数を増やしてみるとわかりやすい。頂点付近ではツールパスが近接しているが、すこし低いところではツールパス同士に隙間があるように見える。

概ね幅が1.2mmよりも大きくなるとツールパスが密着しなくなるようだった。※ウォールライン幅を0.8mmに設定している場合

頂点付近ではパス同士が密着して充填されている。
奥側と手前を一往復するので端面以外の箇所はツールパスが二本密着しているかたちになる。
頂点からすこし下がったところではパス同士が密着せず、隙間が出来て充填が不十分になる

ウォール同士の密着具合についてはCuraの設定値のフロー率を100%以上に上げることで解決できそうだが、各レイヤー中央に出来上がるウォールライン幅よりも狭い隙間に充填するのは難しそうだ。

赤矢印で示した箇所に隙間が生じる

仮にできたとしてもCuraではフロー率を同一レイヤー内で可変させることは出来ないので、外観や寸法精度を要求される箇所にも影響が出てしまうだろう。今回はファスナー部の寸法が狂ってしまうと使い心地に影響が出ると考え、この方法は取らなかった。

Curaのようなスライサーは一つの設定値がモデル全体に適用されてしまうため、任意の箇所の造形方法、ツールパスを直接指定できない事にもどかしさを感じ始めている。

Curaの通常のスライシングでは出来ないようだが、ウォールの厚みによって吐出量を調整し、樹脂が造形物内部に常に充填されるようにすれば透明度のグラデーションは実現できるかもしれない。

ともかく、現状自分が探ったところではCuraを使って透明度のグラデーションを作ることは難しいと判断した。

余談

ウォール間の隙間がどの様な条件で発生するのかを調べるために色々試しているうちに、逆にウォールを密着させない設定も見つけた。これはコレで応用が効きそうだ。

今回はこのあたりで。

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