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セミの声、少なくなったね

The Economist記事『Elon Musk's plans could hinder Twitternomics』(イーロン・マスクの計画はツイッターノミクスの妨げになりかねない)に目を開かれた。ツイッターノミクスはエコノミストの造語、ツイッターが生み出す経済とでもいうニュアンス。

記事の趣旨は、アメリカの中央銀行(The Federal Reserve)のリサーチャーがX(元のTwitter)を経済のバロメーターとして観察している、というもの。

イーロン・マスクがごちゃごちゃいじってるおかげで、ビジネスとしてはイマイチ信用できないものの、リサーチする母体としては重宝されているようだ。財政トレンドとマーケット・センチメントの両方で。

後者のsentimentが、今日ズドン、と胸に刺さった言葉。感情や感情の傾向を指す。つまり、「時代の流れ」とは、言い換えれば「センチメントの変化」。

高度経済成長期は「イケイケドンドン」が時代のセンチメントだった。

平成の30年は一貫して「下り坂」がセンチメント。

では、令和はどうか。

いつも、「現在放映されているドラマ(ストリーミング含む)や劇場で上映されている映画」をできるだけ観るようにしている。

時代のセンチメントを体感するためだ。

好き嫌いはあるので、観るタイミングが微妙にズレたりもするけど。ネットフリックスで評判だった『サンクチュアリ』、昨夜ようやく観始めて、ハマってる(笑)。ぼくはお相撲が好きじゃないので、観るのが遅くなった。

時代のセンチメントは、商品開発、プライシング、マーケティング、ブランディングすべてに関係する。

プライシングの技法としては、

コストプラスマークアップ;製造コストに一定のマージンを足して売価とする。多くの製造業の得意技、というかそれしか知らない(毒)

ペネトレーション;とっつきやすい低価格でまずは市場浸透を狙う

ダイナミックプライシング;需給の変化に応じて価格を変化させる。ホテルの客室料金やライブ・チケットに採用されている。航空機チケット代金もそうやね。AIが実用化されて、やりやすくなった。

などの他、アンカリング(Anchoring)がある。

心理学や行動経済学において用いられる概念で、人々が意思決定を行う際に、最初に提示された情報(「アンカー」と呼ばれる)に強く影響を受ける傾向がある現象を指す。アンカリング効果は、人々がその初期情報を基準として、その後の情報や評価を行う際に判断の参考とすることを示している。

ざっと手持ちカードだけでもこれだけあるが、これじゃ、答えにならない。

答えは、センチメントの中にある。

人の気持ちだ。

歴史は、お金で動いている。言い換えれば、お金に対する人のセンチメントで動く。

そして、みんなの意見は、案外正しい。

要するに「みんなのセンチメント」が時代を動かしているわけで、ビジネスはセンチメントで決まる。無色透明なものではない。

ドラマ『100万回言えばよかった』最終回(第10回)の評判が悪いようだ。

悪い理由はわかる。

それまで「幽霊×恋愛×謎解き」で動いていたエンタメ要素のうち謎解きが9回で終了し、残るは「幽霊×恋愛」なのだけど、ポイントが「許された残り時間、何する?」という哲学的なものになったのだから。そして現代日本のセンチメントは、哲学が苦手である。映画『君たちはどう生きるか』の哲学成分、抽象成分がまったく理解されないまま今日まで来ているのがその証拠であり、それは令和のセンチメントといえる。

でもぼくはね。『100万回』最終回は好きですよ。制作者サイドは、おそらく、最終回のためにそれまでの回を描いてきたはずで。

残された時間、何をするか。

特に特別はなくて、「どっちの服がいい?」と彼に選んでもらったり、一緒に食事して「美味しいね」と笑い合ったり、海辺へ行って並んで座ったり。

バブル時代であれば、そんなもん、鼻で笑われた。

一年先のクリスマスイブのレストランとホテルを確保するのが、当時のセンチメントだった。まー。しんどいセンチメントでした(笑)

今朝、奥さんとゴミ出しした。

「セミの声、少なくなったね」

と言いあって

「じゃ、いってらっしゃい」
「いってきます」

会社へ向かった。

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