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カルテットって。

去年だったか、おととしだったか。
アマプラであてもなく彷徨ってたときに
あー、これ放送してるとき妹がおもしろいって言ってたから見なかったやつ。って思い出して。あんまり期待せずに見てみたらどツボだったんです、カルテット。
以下、回の順序などあまり気にせず書きたいように書いてまいります。
ネタバレ度合いは小さいと思います。


押されたツボ


・冬の軽井沢
・そこに年季モノであろうけどしっかりとした造りで暖かげな別荘
・毎回食卓に上がる親しみやすいごはんの数々
・個性的な登場人物が発する示唆に富んだセリフ、クセ
・壁に画びょうを刺すことや唐揚げにレモンをかけるような何気ないことに生き方や人間関係を投影するおはなしの持っていきかた
・ストーリーを遮ることはないのに耳に残るサントラ
・なによりバイオリンx2・ヴィオラ・チェロのカルテットが紡ぐように見せる鮮やかな音楽
・聴いた瞬間に椎名林檎の香り漂う、カルテットが歌う主題歌と美しいMV
 (何も知らずに1話を見終わるところへ流れてきて度肝を抜かれノックアウト)

どう思って観てたか。



みんな大人なのに個性的な1人1人ではちょっと立ち行かない感じ。
4人で演奏するから成り立つカルテット。
一軒の別荘で、音楽を奏でない時間にでも各パートの役割のようにこれまで経験してきた何かを持ち寄ることで毎日を送っている。

私にとって、ちょっと辛い時間が実生活の傍らで流れるような時期に観るにはもってこいで、そのとき欲しかった言葉がちりばめられていた。
現実逃避のつもりで見始めたのに現実をやさしく、かつ、くっきりと照らしてくれた。そんなお話。

見ていると、カルテットドーナツホール5人目になったような、またはあの別荘のリビングの一部にでもなったような気になって時を忘れて一話なんてすぐに終わってしまう。
寒い夜に迷子になったとき、さぁどうぞ遠慮なく言われて入った暖かい家に安心させられたような感じ。

そんな物語をひとしきり見たとろへ、あの上質な主題歌。

”好きとか嫌いとか欲しいとか気持ちいいだけの台詞でしょう
ああ白黒付けるには相応しい滅びの呪文だけれど”

当時の私を戒め、一線を越えずにおく言い訳をくれた歌詞。
「ほら、あの歌もそう言ってる。白黒つける必要なんてない」って。

登場人物で、誰がいちばん好きか、なんていうのは野暮ですが。


みんなのどこが私にとって素敵なのか。

・別府 さん
物静かで冷静なようでいて(びっくりしても、まじか。ぐらい)
いつも敬語のような人なのに、火照っちゃって女性に対しては強引な一面もあるというギャップ。
ストレスを感じると袖と裾をめくりにめくって両腕両脚むき出しになる。
育ちの良さのようなものが、音楽で世界の別府ファミリーと言われるおうちのその他1名であるという背景以上に、彼の言動のそこここに見える。
ライブレストラン、ノクターンのステージから自分たちが追い出してしまう
形になった年老いたピアニスト、ベンジャミンさんの
「音楽っていうのはドーナツの穴のようなものものだ。何かが欠けているやつが奏でるから、音楽になるんだよね」っていう言葉を、"カルテットドーナツ"だった自分たちのグループ名に"ホール"を付け足して受け継いだのだなと。

・巻さん
巻真紀(まきまき)、早乙女 真紀、山本 彰子。3つの名前を持って生きてきた
謎めいた存在。
コミュニケーションに障るほど声が小さいけど言うときは言うし
淡々と語る口調が松たか子さんの透き通るような声と独特の丁寧さと合わさっていつまでも話が聞ける。

夫が自分を置いていなくなった事、さらにその前の自分の生い立ちが
人の痛みがわかる部分と、逆に、自分たちの居場所を勝ち取るような無理のあるような強さの両面を作り出している。
泣きながらごはん食べたことある人は生きていけます。とい台詞に私は救われた。

・すずめちゃん
小さな女の子がそのまま大人になったような、天真爛漫さ。
と、風邪ひいたらしっかり熱が出て治るとか
お風呂に入ったらたくさん汗かいて出てくるとか
ピュアで身体の回路から単純そうな人なのに、どこか人とは距離を取る癖があるような影も見せる。
あと、「この人危険だ」とか人を嗅ぎ分けるような力も鋭い。
あたまが良い人なのだなと思ってうらやましかった。

・家森さん
くせつよ。独特。
彼独特の価値観を人に伝えようと言語化すると、すんごく面白い台詞になる。間合い、喩え方、ときには寸劇を駆使して。
正論すぎたり、マイノリティな人を代弁するときには勢いあまって周りが引いたり。

軽薄で狡猾なようで情に厚くてめちゃくちゃ人間くさい。
人を呼ぶ時の語尾の抑揚がクセになる。

いちばん好きかもしれない。

くすぐってくるキーワードたち

・みかんつめつめゼリー
すずめちゃんが、家森さんのものを勝手に食べようとして何食べようとしてるのって聞かれた時。
「え、ゼリー。」って言わずにフルネームで答えてそのまま会話中ずっとみかんつめつめゼリー。

・ノーパン、ありパン
家森さんが時々ノーパン。穿いてる時のことをサラっとありパンと表現していた。

・コーン茶
4人の時間になかで、話し合ったり間をつなぎたいような時にお隣さんにもらったコーン茶を淹れようという流れになる。
後半回の中で、コーン茶がもうないという瞬間がある。
時が流れたことを表現するのに巧みに使われた感じがした。

・ふたりの夏物語(杉山清貴&オメガドライブ)+アポロ
家森さんを追いかけて軽井沢まで来た、家森さんの前妻の関係者・半田さん(Mummy Dさん)がちょろっと出てくるシーンにはつきもの。
ダッジか何かのアメ車のバンの車内でいつも流れているし、そこに乗ってるオッサンはアポロをぼりぼり食べている。
なぜか、私を元気づけてくれたその風情。

・コロッケデート
巻さんが週刊誌に追われるような生活を送る中で、担当弁護士とコロッケを食べながら出歩くところをうっかり撮られ、家森さんはコロッケと弁護士を足しちゃうと、地球上に勝てるものはないと表現した。
ほんとそうだなwと感心した。

こんなところで・・・

ご清聴ありがとうございました。
のべつ幕なしに、ただただ好きだ、おもしろかった、このドラマは有料級なんじゃないかと思った熱をそのまんま書いてみました。
坂本裕二さんのお話は、落ち込んだ時に効くものがあります。
大豆田とわ子と三人の元夫もそうでした。
また見ようっと。


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