【分子栄養学】脂肪肝と肝硬変

脂肪肝は、一昔前まで「アルコールをたくさん飲む人の病気」と思われてきた。が、近年は酒を全く飲まない人、少しだけ飲む人にも増えており、人間ドッグ受検者の2~3割は脂肪肝であると言われる。

脂肪肝は、肝小葉内の
①30%以上の肝細胞の細胞質に
②脂肪滴(トリグリセリド/中性脂肪)が蓄積した 状態。

肝臓はもともと脂肪酸の合成→分解は行うものの、蓄積するのは目的ではない。

脂肪酸は、
①肝臓に届いたグルコースを解糖系より取り込み、ミトコンドリアのクエン酸回路にてアセチルCoAから脂肪酸合成を行う経路 と、
②全身の脂肪組織から血中に遊離して肝臓に届いた脂肪酸
の2つの経路で肝臓に出現する。。

①の産生物と、②での取り込みすぎ、①②双方で出来た脂肪酸の分解量が少なくなると、肝臓に脂肪酸が駐留し、解糖系や血中のグリセリンと結合してトリグリセリドを合成→肝細胞内に脂肪滴として蓄積してしまう。

どちらにしても要は「取り過ぎ」。必要以上の脂肪酸(に限らず)を作り過ぎてしまうこと(亢進)、それを分解するための物資(酵素やミネラルなど)が足りない事、が蓄積の主因となる。


☆血液検査では
検査値が AST<ALT と1でもALTの方が値が高ければ、脂肪肝を疑う。
(ASTは筋肉・赤血球の細胞の内部流出、ALTは肝細胞の内部流出
また、肝臓で生成されるLDLコレステロール値、コリンエステラーゼ、アルブミン(合成亢進による)がそれぞれ高値を示しやすい。
※肝臓の働きが落ちている時は、肝臓生成物の項目値は揃って低値をとる。
 脂肪肝が、まだ肝臓の働きをどれくらいしているかの指標にもなり得る?
(単純にタンパク不足で酵素が生成できないだけの可能性も充分あり得る)

脂肪肝に、自覚症状はほとんどない。

病気ともまだ言えないが、放置していると肝臓の血液循環が悪化、脂肪肝炎を発症しやすくなる。脂肪肝炎の状態になると、人によってはだるさを訴えることもあるが、風邪などの症状と区別がつきにくく、見過ごされがち。

さらに症状が悪化すると、肝臓の線維化が進み、機能が極度に低下。肝硬変の状態となり、さらに悪化すると肝がんになる。

肝硬変の主な原因とその割合は、
・C型慢性肝炎 約65%
・B型慢性肝炎 約15%
・アルコール性肝障害 約10%
残り約10%が、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性の代謝疾患などとなる。


肝硬変の段階へと進んでも、肝臓は粘り強く、一部が破壊されても他の部分が替わって働くため、当初は自覚症状があまりみられない。
徐々に、全身のだるさや食欲不振、皮膚や白目の黄疸、胸や肩にクモの巣状の血管が浮き出たり、胸がふくらむ(男性の場合)、腹水などの症状が起こる。


☆血液検査では、
・脂肪肝と同様、ALT・ASTが肝細胞の壊死により漏れ出す→高値
・直接ビリルビン・間接ビリルビン両方が、処理しきれず蓄積→高値
・肝細胞の解毒機能の低下による 血中アンモニアの蓄積→高値
・肝臓で合成する因子の項目が低下
 アルブミン・コリンエステラーゼ・総コレステロール・血小板 etc

※肝臓の活動量(低下まで行かないものの落ちてきている)や脱水によって、合成因子が標準までマスキングされていることもあるので注意


(参考)
https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/67.html


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