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広尾スケッチ #2 味福あさの

マガジン『広尾スケッチ』では、広尾に住み始めたばかりの若者が、ドクターの目線から広尾に訪れる/住むだけで健康で幸せになれる秘密を紹介していいきます。


 広尾散歩通りの中盤あたり、メインストリートから分かれた石畳の道沿いに、思わず足を止めてゆっくりと眺めたくなる古民家があります。

 7階建てくらいのマンション達に囲まれた木造2階建の家の奥には青空が広く見えて、壁つたいに伸びた蔓の青々とした葉と、歴史を吸い込んだ山吹色の壁が重なり合い、1枚の絵のような佇まいです。周りのお店とは異質な構えなのに違和感がないのは、広尾に昔からある家だからでしょうか。

 のれんをくぐると中にはもっと落ち着く空気が流れています。誰よりも白割烹着と布マスクの似合う女将さんが迎えてくれます。このお店を見つけてすぐの頃はリーズナブルで美味しく量も十分なお弁当を買っていましたが、お店の醸し出す空気に惹かれて店内でも定食を食べてみました。お店は広すぎず、6人がけのカウンターの前には本日のお惣菜が並び、おでんの鍋からゆっくり湯気が上がっています。

 壁には控えめな筆使いで木札に書かれたお品書きが並び、その上には名前が書かれた提灯が並んでいます。長年のお得意さん達な名前かな、と思って眺めていると聞いたことのある有名人の名前もありました。

 ゆっくりとそれらを眺めていると、期待通りの香りと彩りを載せて温かい定食が出てきました。

 ここの看板料理はじゃこ飯で、ツンとした山椒の香りが熱いご飯の湯気と一緒に鼻を通り抜けます。おでんも人気で、透き通っただし汁は薄味だからこそ程よく煮込んだ素材の味を引き立てます。山椒やお酢など、塩以外の味付けが楽しめる和食で、塩分も油分も控えめな健康食かな、と思える優しい味付けになっています。

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 そんな料理を一品ずつ味わっていると、隣では常連らしきおじさん達がソーシャルディスタンスを保って飲みながら話しています。会話に入るタイミングはまだ掴めませんが、料理を味わいながら1人で物思いに耽っていても居心地は全く悪くないです。

 一息つきたい時に、優しい味わいの和食とお店に癒やされながら、ゆっくりと1人の時間を過ごす。ちょっぴり頑張って女将さんや常連さん達と話してみる。いずれにしても自分のペースで時間を過ごせるサードスペースになりました。
 定休日はありません。たまに月曜日がお休みになるようです。

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