岩瀬翔(Kakeru)@離島の家庭医

東京都の離島で医師として働きながら、1人の住人として島に暮らす人々と幸せな暮らしを創る…

岩瀬翔(Kakeru)@離島の家庭医

東京都の離島で医師として働きながら、1人の住人として島に暮らす人々と幸せな暮らしを創る場づくりに取り組み発信します。スキのお礼は島の方言です。

マガジン

  • まちづくりしたい医学生のイギリスレポ

    イギリスって医療費がタダなんです。でもそしたら病院に人が殺到してしまいます。だから政府は国民が病気にならないよう必死です。 そんな国で、みんなが健康になる秘訣を学んできました。 果たしてニーズはあるのかな、、?

最近の記事

式根島を学生と地域診断したら、島づくりが動き出した

「式根島に行きたい!」 私が式根島について紹介すると、そう言ってくれる人は多い。 しかし実際に来る人は少ない。 その理由は様々だが、受け入れる私達側も一度に受け入れられる人数という課題がある。 学生団体「ちいここ」の学生さんが声をかけてくれた時も同じ問題に当たった。 ちいここは、学生達が暮らしや地域、医療に対する考え方を広げるために全国各地で地域医療を体感する合宿を主催している。 地域医療の現場での学びを大切にする彼らの熱意は、 出会った時からこちらの背筋が伸びるような真

    • 式根島のおじいさんと始まった、島の健康と幸せを育てる挑戦

      「先生、この本すごいよ」 診察室に入ってきた千松さんは、見覚えのある本を握りしめていた。 カラフルな表紙には、『コミュニティナース』と大きく書かれている。 何を隠そう私の本だ。 数日前、診療所の待合室のレイアウトを変える際に、 待ち時間で少しでも読書や雑談をして楽しみながら待ってほしいと思い、 私の本を数冊試しに置いてみたのだ。 まさかこんなに早く、私の蔵書を読んで面白がってくれる人と出会えるとは。 私は感想を共有する程度のつもりで話そうとしたが、彼は本気で、かつ前の

      • 瀬戸内国際芸術祭を訪れて、ここに医療の未来があると確信した話

        それは、衝撃の3日間だった。 多忙極める社会人3年目の貴重な夏休みを当ててもなお、贅沢な時間だったと思えた。 次から次へと訴えかけてきたメッセージ達は、私の心を揺さぶり掴んで離さない。 頭の処理が追いつかない。 この体験が私の人生と価値観に、少なからず影響を与えたことは間違いない。 しかし残念ながら、私にはこの経験をすぐに言語化できるほどの能力はなかった。 日常生活の中でようやく頭の整理がつき始め、 重い筆を取る覚悟ができたのは1ヶ月以上経ってからだ。 現在通っている

        • だから僕はワクチンを打つ

          2021年早春 医師として働き始めて、初めて亡くなった担当患者さんはコロナ患者でした。 亡くなった日は、同居するご家族の隔離解除がでる1日前。 生きてる内にご家族と顔を合わせて声を聞けたらな、 と思うと悔しかった。 でも、転院時から人工呼吸器をつけて眠ったままで 意思表示はできなかったから、 そういう僕の思いやりも結局エゴなのかもしれない。 80代、基礎疾患もそれなりにあり、 COVID-19のガイドラインに照らし合わせても、 重症化した場合の予後は、元々かなり厳し

        式根島を学生と地域診断したら、島づくりが動き出した

        マガジン

        • 広尾スケッチ
          4本
        • まちづくりしたい医学生のイギリスレポ
          5本

        記事

          コロナ専門病院に残ることにしました

          今日から、職場は完全にコロナ専門病院になった。 他の選択肢もある中で、僕は今いる病院で重症患者を診ていくと決めた。 1月頭、 「うちがコロナ専門病院になる」 誰も考えていなかった噂が駆け巡ってから1ヶ月弱。 地域の方々であふれていた都心の総合病院の雰囲気が、ガラリと変わってしまった。 大勢の入院患者の転院調整や、新しい診療体制の構築など。そして研修医のためのプログラム調節まで。 全く前例がない中で奮闘した事務の方々や、幹部の先生方の苦労は計り知れない。 まだ研修中の身

          コロナ専門病院に残ることにしました

          家族に歴史あり 〜1番近いのに知らないもの

          今年のお正月は、いつもの見知った風景ではなかった。 いつもなら、静岡にいる父方の祖父母の家に行って年を越す。 新年は親戚が入れ代わり立ち代わりこの家に挨拶にくる。おばあちゃんは6人姉妹だったので、孫まで入れるともう大家族だ。 物心ついた頃から、ひっきりなしに挨拶に来る親戚のおじちゃんおばちゃんの間で遊ぶ風景が「僕のお正月」だった。 「このおじちゃんは、おばあちゃんの◯番目の妹の子供でね・・・」と言われても、結局誰が誰だか分からないまま、お年玉をもらって、気がついたらお年

          家族に歴史あり 〜1番近いのに知らないもの

          【SHIPメンバーインタビュー】新しい自分・新しい仲間に出会えた!しるこ流SHIPの楽しみ方

          医療をキーワードに様々なバックグラウンドや目的を持った人達が交流するオンラインコミュニティ「SHIP」に4月から所属している。 SHIP内のライティングセミナーに参加した際に、メンバー同士のインタビューに取り組んだ。同じ4期生で、ヘルスケアベンチャー経験やマンガライターなど様々な顔を持つしるこさんにインタビューさせて頂いた。 しるこ プロフィール 大阪出身。筑波大学生物学類卒業。筑波大学大学院で脳神経解剖学を研究。その後IT企業でのヘルスケア部門勤務を経て退職。2020年4

          【SHIPメンバーインタビュー】新しい自分・新しい仲間に出会えた!しるこ流SHIPの楽しみ方

          広尾スケッチ #3 広尾湯

          マガジン『広尾スケッチ』は、広尾に住み始めたばかりの若者が、 広尾に訪れる/住むだけで健康で幸せになれる秘密を考えていく。 ブルーボトルコーヒーやスターバックス、タピオカ屋さんなどがしのぎを削る広尾散歩通りのメインストリート。 その中に、90年の歴史をもつ銭湯がある。 マンションの1階にある横幅2mちょっとの狭い入り口で、意識しない通り過ぎてしまうだろう。 しかし、おしゃれなカフェが立ち並ぶこの通り沿いで、この銭湯の存在に一度気がつくと、かなり気になって無視できなくな

          広尾スケッチ #3 広尾湯

          対話型鑑賞スケッチ

          森永先生にお誘い頂き、参加した対話型鑑賞体験会。 終始暖かい雰囲気の中で、沢山のモヤモヤと気づきを得られました! 今回は対話型鑑賞のレポートをお届けます。 対話型鑑賞とは?そもそも対話型鑑賞というものを知らずに参加しましたが、その意味から分かりやすく解説してくださりました。 作品に関する知識偏重のアート教育への疑問から1980年代に米ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開発された,参加者同士の対話による気付きや感じ方を重視した鑑賞法である。 (医学界新聞2020/7/

          対話型鑑賞スケッチ

          SHIP 夏の自由研究 〜Orihimeから見えた withコロナ時代の地域再発見〜

          医療をキーワードに様々なバックグラウンドや目的を持った人達が交流するオンラインコミュニティ「SHIP」に4月から参加している。普段は講演会や情報交換と受け手一方だが、今回、SHIP内のメンバーで自由なテーマで研究を深める機会があった。 1, テーマが決まるまで自由研究をするにあたって、興味関心のある分野ごとにチームに分かれた。 僕は地域チームに入ることにした。 しかし、「地域」とは大分ふわりとしたくくりだ。僕は地域づくりなどに興味があったが、他の参加メンバーからは、地域の

          SHIP 夏の自由研究 〜Orihimeから見えた withコロナ時代の地域再発見〜

          広尾スケッチ #2 味福あさの

          マガジン『広尾スケッチ』では、広尾に住み始めたばかりの若者が、ドクターの目線から広尾に訪れる/住むだけで健康で幸せになれる秘密を紹介していいきます。  広尾散歩通りの中盤あたり、メインストリートから分かれた石畳の道沿いに、思わず足を止めてゆっくりと眺めたくなる古民家があります。  7階建てくらいのマンション達に囲まれた木造2階建の家の奥には青空が広く見えて、壁つたいに伸びた蔓の青々とした葉と、歴史を吸い込んだ山吹色の壁が重なり合い、1枚の絵のような佇まいです。周りのお店と

          広尾スケッチ #2 味福あさの

          広尾スケッチ #1 貴バル

          マガジン『広尾スケッチ』では、広尾に住み始めたばかりの若者が、ドクターの目線から広尾に訪れる/住むだけで健康で幸せになれる秘密を紹介していいきます。  明治通りから広尾散歩通りに入ると程なく、歩道に立つかわいらしい黒板が目に入ります。4月に緊急事態宣言が出てどのお店も閉まっていたある日、「店長こだわりの唐揚げ!テイクアウトにどうぞ」と、その黒板に書かれていました。黒板の辺りの通り沿いにお店は見当たらずどこにあるんだろうと少し迷いましたが、スパイスの効いた油の香りが袋小路の奥

          広尾スケッチ #1 貴バル

          健康で幸せになれるまち!?医者が描きだす広尾発見

           東京都渋谷区広尾。言わずとしれた高級住宅街です。  僕もそのイメージを胸に、今年の春に上京して、広尾に移り住みました。  しかしその実、想像もしていなかった多様性と人情にあふれ、たった500mの商店街に個性豊かなお店たちが詰まっていました。研修医として就職した矢先に新型コロナウイルスの流行が起き、心も体も追い詰められていた僕は、既に何度となくこの町と人に救われてきました。  病気は薬で治すこともできますが、人を救えるのはやっぱり人です。医者である必要はありません。必要

          健康で幸せになれるまち!?医者が描きだす広尾発見

          2020年6月30日の風景

          コロナショックで引きこもり、珍しく本でも読むか〜と思っていた時に出会ったこの本。 読むスピードが遅くて読書がとても苦手な僕でも数日間で読み終えられました。普段は1冊読むのに数ヶ月かかるので、体感的には一気読みですね。読み終わってからnoteで全文公開されていることを知りました。 読み終えた感想は2つ 「もっと早く読みたかったな」と「大体もう気付いていたな」ということ。 自分が大学生活を通してやっと学んだことが、ここに書いてありました。 「自分の考えてきた事は間違いなかっ

          Make a Spark, and...

          こんばんは。当直しながら、メモを整理してたら昔の書きかけ記事が出てきました。去年の10月、僕の人生を変えるほどの経験をくれたフルームでのリポートです。 帰国してすぐ国家試験に追われ、4月から研修医として社会とコロナに揉まれる中で、たった半年前の夢を忘れかけていました。 こんなにすぐ夢って忘れてしまうのか。。。でも読みながら心にかすかな火が付きました。 少し恥ずかしいですが、当時の記事をそのまま出します。どんな現実でも逆境でも、この火/sparkは何度でも燃やしてやる。 フ

          【同世代のみんなに届け】24歳研修医からのはなし

          コロナ、やばいですね。 でも自分若いし、1ヶ月前から予定決めてた高校の同級生とのサシ飲みくらいは、大学の帰りにラーメン食って帰るくらいはしていいよね? 自分も先週までそう思ってました。 働きだして3日。「死ぬかもしれない」という現場で働くとは思いませんでした。 このウイルスはもらってから発症までの期間は長く、いま激増している患者数は1週間前の僕たちの行動の結果です。激しく後悔しました。自分が既に感染しているかもと考えると怖くて、週末は実家に帰れませんでした。ただ電話で「長

          【同世代のみんなに届け】24歳研修医からのはなし