こーひー

コーヒーとアレルギーの話

 この前、友人からの誕生祝いで、とある珈琲店の様々なブレンドをひとつずつドリップバッグにして、それを詰め合わせにしたものをもらった。
 好きな飲み物を聞かれたらまず「紅茶!」とためらいなく答える自分だけれど、コーヒーも同じくらい大好きである。あのとてもいい香りが溢れているカフェなんかに入ると、深呼吸してうっとりしてしまう。大人を感じさせるあの苦味も好きだ。あんまり苦過ぎるのは苦手だけれど……。
 そしてさっき、ドリップバッグをひとつ開け、マグカップの半分より少し多めの高さまで抽出したものを、いつものようにブラックの状態でひとさじ分味見して。その後、これまたいつものように、スティックシュガー6gを2本と、マグカップの容量ギリギリまで牛乳を入れ、よく混ぜてカフェラテにした。いや、してしまった。

 スーパーに売っている安いインスタントの物のみならず、戴き物の高額だったり独特なブレンドのコーヒーでも、それを私は、ブラックの状態で最後まで楽しむことが出来ない。いつも最初に、好奇心と罪滅ぼしを兼ねて、ブラックの状態のものをひとさじ分味見する。そして「もったいないよなぁ…」とか「ごめんなさい…」とか思いつつ、砂糖とミルクをたくさん入れる。それは、どうしてなのか。
 ……なんてもったいぶった書き方をしなくても、コーヒーの香りや味は好きなのに、という同じ悩みを抱えている人を、TwitterやSNSを始めてから現在までの数年で、Webでたくさん見て来た。すると、やはりほとんどの人が自分と同じ理由だった。

 コーヒーを摂取すると、お腹が痛くなったりゆるくなってしまうことがある、という。

 私の両親はコーヒーが好きで、私が幼い頃からずっと、朝食時は二人ともほぼ必ずコーヒーを飲んでいた。母はよくある普通の濃さを好み、父は普段は母と同じものを飲んでいたけれど、イタリアンの店などに行くと食後に濃いエスプレッソを好んで飲んでいた。そして、二人ともいつも必ず飲む時はブラックの状態で飲んでいて、そんな二人を見ながら、自分もいつかかっこよくブラックコーヒーを飲める大人になりたいなぁと思っていた。そして、家のインスタントコーヒーをブラックで入れて挑戦しては、結局苦さに耐えられなくて、砂糖と牛乳をたくさん足して甘いカフェオレに改造して飲んでいたりした。
 それに気が付いたのはいつだっただろうか。社会人になって、眠気覚ましのために薬だと思って、たまに缶コーヒーのブラックを出先で買って全部そのまま飲むということをするようになった。すると、結局ブラックをまともに飲めないまま大人になった自分には、缶一本分のブラックコーヒーはただの苦味の強い刺激物と胃が認識したようで。いつからか、ブラックコーヒーもしくは牛乳の少ないカフェオレを飲むと、ほぼ必ず胃腸が痛くなったり、お腹がゆるくなったりするという症状が出るようになった。
 そして、このことに気付いてからは、コーヒーを売りにしていたりコーヒー以外のドリンクメニューが極端に少ないお店以外では、コーヒー以外のドリンクしか注文出来なくなってしまった。人から勧められたり、どうしても興味があったりしてコーヒーを売りにしているお店に行く時は、その店に行った後はすぐに帰るというスケジュールを組めた時だけにして、飲めそうだったらブラックで、難しかったら三口くらいブラックで飲んでみてから砂糖とフレッシュを入れて飲むようにしている。

 上記のことを、それなりに困ってはいるものの、コーヒー好きだから悲しいな、くらいにしか自分は考えたことがなかった。……が、昨年勤め先で、明確にコーヒーアレルギーだという人に出会って驚いた。そして、話を聞くと、その大変さに「自分は恵まれているなぁ…」と思わず考えてしまったほどだった。
 同じ部署で仲良くなったその人の、アレルギーの度合いは軽度とのこと。しかし、コンビニのコーヒーマシンの近くを通っただけで胸焼けがしたり気持ち悪くなることがあるそうで。このことを話すきっかけも、職場に某メーカーのコーヒーマシンが導入されたことだった。導入当初、強い香りが建物の玄関や自分たちの部署までふわふわと届いている内は、他の人たちが嬉しそうにしている中、その同僚さんだけがしばらくしんどそうにしていたことを覚えている。
 あと、飲んでしまうとどうなるか聞いたら、昔から苦手で飲んだことがない、飲まされた覚えもない、とのことだった。幸い、理解してくれる人が周りに多かったようで。自分も同じように、周囲に理解者がそれなりにいないと冗談抜きに生きていけないタイプの人間なので、良かったなぁと一緒にホッとしたのを覚えている。

 日本だけなのか分からないけれど、世の中オフィスでの飲み物としてコーヒーが当然のように広まっているように感じる。みんなコーヒー好きだろうし、コーヒーサーバーやコーヒーマシンが会社にあれば喜ばない人はいないだろう、的な。
 けれど、コーヒーは好きだけれど思うように飲めないので他ドリンクの方がありがたいという人や、コーヒーをそもそも嫌いな人、そして、今回後半に書いたように、アレルギーがあってコーヒーを飲めない人も居る。
 色々なタイプの人がいる中で、みんなでお金を集めてコーヒーマシンを導入するだとかそういった話になった時に、コーヒーが苦手だったり飲めない人まで、全員から割り勘の代金強制徴収で肩身の狭い思いをしたりする人が出てくる、出ている会社とかありそうだな……そういうの無いといいな……と、ふと色々思い出して書いている内に考えてしまった。

 以上、悲しいマイノリティの、コーヒーについてのひとり言でした。
 でもやっぱり、いつかブラックで、いろんなブレンド楽しめるようになりたいなぁ……治療とか出来ないのかなぁ……。

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