大正ロマンとかって言うけれど。

 そんなものはどこにもなかった。
 とりあえず、また本を読み終えることができたので、記録として読書感想文を書いておこうと思う。

「白蝶花」
 宮木あや子/新潮文庫

 花の名前をタイトルに冠した短編(ひとつは中編?)が四本収録されている本書。読み進めていくと、このお話たちは連作になっていることが分かる。
 大正の終わりから昭和・平成までの激動の時代を、数々の理不尽に苦しみながらも、運命の相手と出逢って、愛し、愛する人の子どもを宿し、必死に命を繋いで生きた女性たちを描いた物語。
 戦前に限らず、戦後もしばらくは、女性というのは家のための道具・財産として生きて死ぬものだったのかな、と読みながら考えてしまった。特に、貴族や華族など、お金のある家の娘であればあるほど。そういった意味では、農村とかで生まれた女性の方が、貧しいながらもそこそこ自由に生きられたのかなぁ、と思ったり。
 そして、女性の人権というのは本当に、つい最近、やっとこさそれなりに保障されるようになったものなんだな、とも思った。読んでいた期間が、ちょうど参院選の投票期間と重なっていたので、なんというか……改めて、今の自分に当然のように与えられている選挙権は、実はとても大切にしなければいけない貴重なものなんだな、としみじみ考えさせられたりもした。

 あと、個人的に宮木さんの小説で楽しみな、女性同士の、所謂“百合”というジャンルに分類されるような関係性の描写が、今回もお話の中に出てきてうれしかった。二人の少女間に流れているのは決して微笑ましいと言えるようなものではないし、むしろひりつくような痛みとか冷たさを伴うものだったけれど、個人的にはぞくぞくしながら読んだので、多分その時の自分の口元はにやけていただろうなと思った。……気持ち悪くて申し訳ない。百合好きなんです。はい。

 宮木さんの小説は文章が美しくて、頭にすぅっと入ってくる感じがとても好きなので、これからも読んでいきたいと思う。
 次は「官能と少女」が読みたいけれどまだ買っていない。他作家さんの積読がまだいっぱいあるので、もう少し消化できてから買いに行こうかなー。

ここまでお読みいただき感謝します。もしサポートいただけましたら、文章力を磨くために、本の購入資金にしたいと思います。