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ミャンマーで隔離され続けるロヒンギャ

ミャンマー西部ラカイン州シットウェ。2019年10月。町の中心から2ブロック歩いた場所に在る「アウンミンガラー地区」の入口。ここには2012年に起きたラカイン族とロヒンギャの民族間の衝突から約4000人のロヒンギャが隔離収容されている。7年間経った今も彼らは公然と文字通り「閉じ込められている」。いつの間に電信柱の上に監視カメラまで付いている。

彼らだけではなく、約13万人のロヒンギャが町郊外の劣悪な国内避難民キャンプに収容され外部とのアクセスを遮断されており、2017年8月25日以降ラカイン州北部で発生したロヒンギャ住民に対する大弾圧からはこの地域の警備も強まり外国人が難民キャンプに潜入することも基本不可能になった。

背中に警察の鋭い視線を受け止めながらアウンミンガラー地区の入口の写真を撮る。バリケードの向こうには立ち入れない。ロヒンギャに話しかけると警察に職質されてしまう。周辺をカメラを持って歩いているとラカイン族の住民に嫌な顔をされる。多少なりとも後ろめたい気持ちがあるのだろう。

私は基本的に他人に干渉しない自己中心的な性格なので、「人権侵害」なんて声高に訴えるような人間ではない。しかしまるでゲームのように人が閉じ込められている状況を目の当たりにしてしまうと、「これはマズいでしょ...」と例えようのないしんどい気持ちになる。このバリケードで囲われた狭い区画で生まれて外の世界を知らない子供たちだって多いのだ。

ミャンマー政府は国連や諸外国が指摘するロヒンギャ住民に対する人権侵害を真っ向から否定する。「我々はベンガリ(ロヒンギャに対する蔑称)を隔離して人権侵害を行っているのではない、彼らを安全のために保護しているのだ」というとんでもない思想がこの土地、この国ではまかり通っている。

彼らが命をつなぐための援助や、長期的な教育支援等はもちろん重要だが、ロヒンギャの人たちはいつか(数十年後?)ミャンマーの民主主義が成熟し、他の少数民族問題が収束、ラカイン州が豊かになり、人々の暮らしや心に余裕ができた時にようやく解放されるのだろうか?彼らの存在はミャンマーの真の民主主義の実現には微々たる犠牲と軽んじられてしまうのか。

ラカイン州の州都シットウェはヤンゴンから飛行機でたった1時間で着く。複数の国内キャリアが運航している。シットウェ空港から市街へは歩いて行ける。現在はミャウーのようにミャンマー軍とアラカン軍の衝突が起きてネットが遮断されていることもないので、ミャンマーに関わる方々や旅行者は是非シットウェまで足を伸ばしてみて欲しい。バガン観光のついでで構わない。このバリケードの前に立って考えて欲しい。知恵を分けて欲しい。

11月16日、17日の東大での写真展では2017年にこのエリアで撮影した写真も展示しますので、是非観にいらしてください。

写真展
「われわれは無国籍にされた」— 国境のロヒンギャ —
"We are made Stateless" : Rohingya on the Border

【写真家】
狩新那生助・新畑克也

【場所】
東京大学駒場Ⅰキャンパス(東京都目黒区駒場3-8-1)
21KOMCEE East B1F ホワイエ
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/visitors/maps-directions/index.html

【アクセス】
京王 井の頭線(吉祥寺方面行)駒場東大前駅下車

【日時】
2019年11月16日(土)9:00~18:15
2019年11月17日(日)8:30~17:40

【共催】
「人間の安全保障」フォーラム(HSF)、在日ビルマ・ロヒンギャ協会(BRAJ)、無国籍ネットワーク、無国籍ネットワークユース

【後援】
東京大学大学院総合文化研究科グローバル地域研究機構・持続的平和研究センター(RCSP)

【問い合わせ】
officer@stateless-network.com
https://stateless-network.com/

【参考】
国際開発学会&人間の安全保障学会 2019共催大会
https://www.jasidjahss2019.org/general-information

【イベントページ(無国籍ネットワーク)】
https://stateless-network.com/?p=2180

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