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人生邂逅 ・まなび編 ◆日常から -36

北摂文化大学講演会より
法政大学名誉教授 江戸東京研究センター特任教授 田中優子先生
「江戸から考える持続可能社会」

文献をもとに江戸の文化や社会の仕組み、教育など幅広くお話をして頂きましたが、とくに心に残っていることをいくつか取り上げてみます。

先生は、江戸時代を次のように総括しています。
1.1500年代からのグローバリゼーションに独自に対応
2.270年間戦争回避
3.循環システムで持続可能社会
4.輸入依存から国産技術へ転換

このなかで、3.と4.に焦点をあててみます。

まず、
ものの循環の見事さを強調されました。
1.伐採制限と育林
2.下肥の商品化
3.ゴミ収集
4.布、紙の循環、灰の肥料化
5.竹、藁の活用
6.修理職人

この中でも出色は「下肥の商品化」

ここに江戸社会特有の知恵が垣間見えます。

糞尿を有料で買い取って、加工を施して肥料にして売る。

これは見事な循環システムです。

処分したいものを引き取ってもらい、なおかつお金がもらえて
どこにも無駄がなく、だれも損をしない。

だからこそ、持続可能なのです。


また、江戸時代は修理文化隆盛の時代でもあります。

この時代、庶民はもとより武士も貧しく、新しいものを手に入れるような余裕はなかったそうです。

とにかく、あるものを修理して、できる限り長く大事に使う。

その例として、着物があります。
着物は反物でできており、糸さえほどけば自由なサイズに縫い直せます。
そのため着る人に合わせて使い続けることができるのです。

さらに使い込んで古くなると、手ぬぐいや雑巾などにして、別の形で役立てる。
そして、最後は燃やしてその灰を肥料として活用する。

徹底した無駄の排除。


つぎに興味深かったのは、
人材育成。

寺子屋制度は、今でいうフリースクールの原型のようだったそうです。

画一的な指導ではなく、個々人に即したきめ細やかな学びを実現し、また、ただ遊びに来るような子供も快く受け入れていたそうです。 

自由でおおらかな環境がひとを伸びやかに育て、後世に名を遺す人材を輩出したとも言えそうです。

また、教育に重要な教科書を大量に供給するために活版印刷が一役買ったのですがこれを普及させたのは、誰あろう家康だったとのこと。

そのため、この活字は駿河版銅活字と呼ばれていたそうです。

先見の明に敬服します。

一方、鎖国制度のもとで醸成されたのが、モノづくり力

輸入に頼らず、国内で独自の技術をもって作ることを奨励し
これがものづくり日本の誕生へと繋がるのです。

閉鎖された国家だったからこそ、生まれた独自の文化や技術。

そこには、それを実現させるに足る人材が育っていたことは不可欠です。

物質的に豊かではなかったからこそ、知恵を出し合って、ヒトとものを最大限に生かそうとしたところに、江戸の魅力と底力を感じます。

そして、現代社会の重要な課題を解決するヒントが、ここにある。
と田中先生は結ばれましたが、わたしもまさに納得です。

”温故知新”  「貧しいけれど豊かな時代」

江戸時代には、持続可能な日本再生のカギが隠されているのです。

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