Jazzのレコードとおじいさんと若者
もう20年近く前の話ですが、一人でニューヨークに行ったことがありました。
当時の私は会社員になって少し稼げるようになり、独身で実家暮らし。
そしてほぼ友達がいないという無敵状態でした。
洋楽かぶれで中古のレコードを買い漁っていた頃です。
特にSOUL、FUNK、R&BやJAZZなどのブラックミュージックが好きでした。
ですので本場ニューヨークに行ってリアルな音楽事情を感じてこようと思ったワケです。
きっとニューヨークに行ったら、日本では手に入らないレコードが売っているはず。
ストリートミュージシャンがそこらでライブをしているんだろう。
地下鉄のホームではブレイクダンサーが踊っている。
テレビでは音楽番組が流れていて、いろんなアーティストが出演しているんだろう。
と考えていました。
英語はよくわかりませんが、まあ行けばどうにかなるだろうということでオーケー。
行き帰りの航空券と、現地のホテルだけ予約して単身乗り込んだ次第です。
そして着いたのはマンハッタン、ペンステーション近くのボロいホテル。
まずホテルの部屋にテレビがありませんでした。
安いホテルを予約したせいか、寝るだけの部屋。
音楽番組が見れなかった。
まあ実際、そんな番組はホテルのテレビでやってるワケがないのですが、その時はつゆ知らず。
ガラケーは使い物にならないので電源オフ。
誰とも電話もメールもできません。
そして時差ボケなのか猛烈に眠い。
夜はぐっすりと眠るだけでした。
JAZZクラブはどうやってチケットを買うのかわかりませんでした。
値段も高そうだし、英語で予約なんて無理ですからそこは諦めました。
ストリートダンサーやミュージシャンも意外と少なかった。
というか、夜の街の喧騒や行き交う人々にビビってしまい、暗くなってからは出歩けなかった。
レコード屋さんに入っても、日本と変わらない品揃えか、むしろ日本の方がいいくらい。
全然イメージと違うじゃん・・・。
そして別の日にハーレムという地域に行ったのですが、そこで小さなレコード屋さんを見つけました。
期待しないで入ってみると、年配の黒人おじいさんがひとり、多分店主だと思います。
他に客はいません。
店内は雑多として静かでした。
「・・・ハロー。」
と小さな声で挨拶すると、おじいさんが何か言ってましたが、よくわかりませんので無視します。
早速レコードを掘っていると、やたらとジャズが多いようでした。
ここはジャズの専門店なのだろうか。
気になるレコードを見つけたのですが、値札がありません。
「これいくらですか?ハウマッチ?」
と聞くと、おじいさんはなんか言ってます。
どうやらどっから来たのか?と。
「ジャパーン。」
と答えると、おじいさんは、やっぱりね的なことを言っていました。
そしておじいさんは、「日本人がジャズ好きってのはよく知っているぞ。」というようなことを言っています。
「そうそう、その通り!ザッツライト!」
久しぶりに楽しい会話をしました。
おじいさんは、値段を教えてくれるのかと思いきや、店の若者を呼び出します。
彼に聞けば値段はわかるらしいです。
そしておじいさんはバックヤードに消えていきました。代わりに高校生くらいの黒人の若者が出てきました。
すると若者が、
「ワッツアップ?なんか用?」
「あー、これいくらですか?ハウマッチ?」
「オーイエ、すぐにわかるよ。」
そしたら若者、レコードを見つめて次の瞬間・・・。
「おーい、おじいちゃん!値段書いてないよコレ!?いくらなのー⁉︎わかんないよこれじゃ!」
なんだ、君もわからないのかよ(笑)
そしたらおじいさん再びニコニコしながら現れました。
二人で何やら話をして値段が決まったらしい。
そして私は無事に支払いをすることが出来たのでした。
帰りにおじいさん達が何か言っていたのですが、なんだかよくわからないので
「グッバイ、サンキュー!」
と言って帰りました。
小さいけどいいお店だった。
おじいさんと若者も優しかった。(何言ってるかわからなかったけど、、、。、)
だけど、もう店の名前も場所も思い出せません。
今思えば、無知で無謀な一人旅でした。
昔の話です。
文+イラスト : ケーモティック
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