20240313

 戸田彬弘監督の映画『市子』を観た。昨年公開され、一部話題になっていたので気になっていた。若葉竜也演じる恋人である長谷川義則のプロポーズしてすぐに失踪した杉咲花演じる「市子」を巡って、様々な人間が「市子」について回想していく構造で物語の進行とともに「市子」の過去が明らかになっていく。筋ジストロフィー症を患っていた川辺市子の白骨化した遺体が見つかったことで、川辺市子は「月子」という彼女の姉だったことが分かる。
 ヤングケアラー、性的虐待、日本における戸籍の法的問題など重いテーマを扱っていて、問題提議の重要性は分かる。しかし、肝心の殺された市子、彼女に対する家族の心情や苦労がすっぽりと抜け落ちており、まったく彼らに共感できなかった。唯一、理解できたのは幼い月子がお金がなくて、金持ちの同級生に引け目を感じているところだった。子どもの貧困はそのまま社会のヒエラルキーを反映している。子どもが親の資産状況で惨めな思いをするというのは、不条理を感じる。

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