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社会変化を目指す企業のIPO「インパクトIPO」

はじめに

先日、株式会社雨風太陽様のインパクトIPO支援の実績を公開をした際に、「そもそもインパクトIPOとは何か」という質問をいただきました。インパクト投資については書籍など多くの情報がありますが、インパクト企業、インパクトIPOについては情報は限られています。そこでインパクト企業、インパクトIPOについての記事を書きました。書き始めたらとても長くなってしまったので、ポイントとなる部分を太字にしました。

インパクト投資とインパクト企業

NHKや日経新聞などで「インパクト投資」(事業を通じて社会に変化(インパクト)を起こそうとする企業に投資すること)について報じられることが増えてきました。(インパクト投資についてはこちらの記事をご覧ください。)

インパクト投資への関心の高まりとともに、社会変化(インパクト)を起こそうとする企業(インパクト企業)への関心も高まってきました。例えば以下の企業が、インパクト企業として投資家から認識されています。

五常・アンド・カンパニー株式会社
非上場企業。第一生命保険株式会社、独立行政法人国際協力機構(JICA)がインパクト投資として投資

株式会社CureApp
非上場企業。第一生命保険株式会社、日本インパクト投資2号投資事業有限責任組合がインパクト投資として投資

WASSHA株式会社
非上場企業。第一生命保険株式会社、独立行政法人国際協力機構(JICA)がインパクト投資として投資

株式会社カチタス
上場企業。りそなアセットマネジメント、米国ブラックロックの運用するファンドがインパクト投資として投資

オイシックス・ラ・大地株式会社
上場企業。りそなアセットマネジメントの運用するファンドがインパクト投資として投資

インパクト企業の企業価値とそのIPO

インパクト企業の企業価値は、一般企業と同様に基本的にその企業に投資している投資家によって算定・評価されますが、単純な財務的価値だけではない、社会的な価値を生み出す可能性を持つため、評価する人によってその企業価値は大きく変わる可能性があります。特に、非上場のインパクト企業に投資する投資家は、その企業が生み出そうとする社会変化(インパクト)に対して、世間一般の投資家よりも好意的に見ている可能性があります。

非上場企業が株式公開して上場企業になることを、新規株式公開(Initial Public Offering, IPO)と言い、IPOの前後で、それまで限られた数の投資家の間で認識されていた企業価値が、一般の投資家の目によって評価された企業価値に変わります。

非上場インパクト企業にとっては、IPOをする際に、財務的価値のみならず、自らが目指すインパクトの価値について、今後投資家になりうる一般の投資家に深く理解してもらいたいというニーズが存在します。こうした観点から、インパクト企業のIPOは「インパクトIPO」と呼ばれ、特にインパクト企業の間で、その方法論や環境整備について関心が強まってきました。

インパクト企業から見たインパクトIPOのメリットとチャレンジ

インパクトIPOのメリット

成長するインパクト投資マーケットでのアピール

前述のとおりインパクト投資への関心は高まっており、インパクト投資市場も拡大しています。そのなかで自らをインパクト企業としてアピールすることは、話題性があります。また、創出しようと意図する「インパクト」が共感を得ることができれば、より多くの投資家の関心を呼び、株価を安定させたり、時価総額を高められる可能性があります。

株式を長期保有してくれる投資家へのアピール

インパクト企業への投資を重視する投資家は、投資先企業が長期的に社会を変化させる(インパクトを創出する)ことに関心をもっています。インパクト企業の目指す社会変化が起こることで、その企業が大きく成長することを信じるため、そうでない投資家よりも比較的長くその企業の株式を保有してくれる可能性があり、株価の安定、時価総額の安定に寄与してくれる可能性があります。

インパクトIPOのチャレンジ

ミッションドリフトの可能性

インパクト企業にとってIPOとは、これまでその企業が目指す社会変化に対して比較的好意的だった投資家だけに投資してもらっていた環境から、顔の見えない一般の投資家から投資を受ける環境に踏み出すことを意味します。場合によっては、多数の株式を保有し、経営陣に強い影響力を行使できる株主が現れる可能性もあります。この場合、企業が創業以来目指してきた社会変化(インパクト)を否定し、そのミッション・ビジョンを変えるように圧力をかける投資家が現れるかもしれません。インパクト企業が、社会変化を目指す自らのミッションやビジョンを捨ててしまうことを、ミッションドリフトと言います。IPO後のミッションドリフトは、上場後ずっと続くインパクト企業のチャレンジです。

インパクトIPOの参考事例

上記に述べたインパクトIPOに近い事例は、海外ですでに複数存在しています。一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)による「インパクトIPO実現・普及に向けた基礎調査」(2022年11月)のなかで紹介されています。(下記画像は当該調査の22ページ目から転載)

一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)による「インパクトIPO実現・普及に向けた基礎調査」(2022年11月)

おわりに

今回は、インパクト投資への関心の高まりとともに注目されるインパクトIPOについて、導入のお話しをさせていただきました。日本においては、今後「インパクトIPO」として認識される上場事例も多数出てくると考えられています。

トークンエクスプレス株式会社では、インパクトIPOを目指す株式公開雨風太陽様へのご支援実績や、インパクトIPOへの知見を有する一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)との協業実績もございます。

インパクトIPOについてご興味ご関心のある企業様は、こちらのお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

トークンエクスプレス(株)代表の紺野による関連記事

筆者のTwitterでは、インパクトに関する企業の取り組みを紹介していますので、よろしければご覧ください。


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