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分かりっこない

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【序文】このみの物語(目的と説明)

このみちゃんは〈私〉を見つけに旅に出る それは友達作りの旅である なぜなら〈私〉は他者との間に生まれるものだからだ マンドレイク わに 衛星 ラウローチカ 友達はたくさんできた そこに〈私〉が浮かび上がってくるはずだ しかし、できた友達はみな この私の中から生まれたものである 不確かな私の中から生まれたものは また不確かである 本当に〈私〉は いるのだろうか このみちゃんは、自分の奥深くにも目を向け始めた 心象風景の中から〈私〉を見つけようとしたのだ そして気づ

    • 少しさよなら、

      オリオン座から離れてく 少しさよなら、と言った ロケットができる前の人たちに 「春」と呼ばれた場所に来た 平安時代の霞と雲がかかる山 恐竜時代の光が降るほとり 僕の衣は使い古しで なのに何も分からない 思い出すこともあまりない 温かい君を抱いて 分かった気分になった 僕と僕以外の境界線が 君と君以外の境界線が きれいだね どこまでも広がっていって 重なれないままだね 懐かしさだけが幸せの 生きものになっている、今は

      • へらへらわらってる空

        中央線沿いの河川敷 草野球の上の空は へらへらわらっている そうか土曜日だもんな 土曜日の空はいつも へらへらわらっている 河川敷には時間がまあるく流れる 私には真っ直ぐ流れる この気持ちがいつかなくなっちゃっても 空は変わらず笑ってるだろうから 良かった 次いつ生まれても 笑っているだろうから 良かった

        • 泣き疲れて寝たあとの、夕暮れ カーテンが網戸に吸い込まれては離れ 吸い込まれては離れしている 夏の、蒸し暑さの残る 風があった あの頃は、夜には涼しい風が吹いたんだ ぱきぱきのタオルケットに 足の甲を擦り付けて眠る 豆電球眺めてたら 今日の記憶が寂しく思い出されてくるなあ 走ったら耳の横でびゅんびゅんと鳴る 私の起こした風が どこにも行かない びゅんびゅんの音に閉じ込められて 後ろ振り返れない 向こうの林をなでた風がもうすぐこっちに来るぞ 川面を超えて 私を攫って行く気

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          すみか

          境内には風が吹かない そして時も流れない よく見てご覧 桜の花弁がいくら散っても 咲いている花自体は減っていないのだ 君はここで木々のざわめきを聞いたことがあるかい ないだろう 途方もなく遠くへ来てしまっているのだよ ここは地上と地続きにあって 地上ではない場所だ 何もかも、仮の姿だ あまり気付かない方がいい 帰れなくなる 境内にはこちらの風は通らない 同じ時は流れない ほんとうの 四季の巡りがあって なにかが住んで創っているのだねえ

          映画「PERFECT DAYS」感想ーお前にとってのパーフェクトデイズを綴れー

          ※ネタバレを含みます。 役所広司さん主演の映画、「PERFECT DAYS」を観てきた。めっちゃ面白かった。 キャッチコピーは、「こんなふうに 生きていけたなら」だ。ネットの声(笑)を見てみると、「別にこんな暮らししたいとは思わなかったが……」「皮肉か??」などと言った反応が多々あった。 確かに主人公の平山は、決して裕福な生活をしているとは言えない。清掃作業員として朝早くからトイレ掃除をし、ぼろアパートに帰る。家財道具も必要最低限で、妻子もいない。 孤独で貧乏な可哀想な

          映画「PERFECT DAYS」感想ーお前にとってのパーフェクトデイズを綴れー

          きつねの日記帳

          きつねです 今日は寒くて、焚き火に当たらしてもらいました しっぽの先が少し燃えてしまいました でも大丈夫です すぐ治ります 早く眠ろうと思います きつねです 今日は友達とでかけました 久しぶりにずぼん履いてきました すごく疲れました いつもよりやたらと笑ってしまった気がします 帰って少し泣きました きつねです 夢見が悪くて 昼過ぎに起きました 夕方急いで散歩に出てみましたが つまらなくなってすぐに帰りました きつねです 干しぶどう食べました しっぽを撫でたりぎゅっと抱き

          きつねの日記帳

          バスの車内で

          見送られる人が乗り込んだバスの車内で、息をひそめる 「雪ですね」とみんな心の中で挨拶をする 雨が止んで、傘を持っているのは私だけだ 前の席の人と同じものを目で追っていた 光る看板、散歩する犬 優しくなろうとした視線が、冷たく見える 左肘ばかり冷える アキレス腱ばかり暖まる 私の隣だけ空席のまま 眠っちゃっても、大事なものは握りしめて落とさない さっき下ろした人をバスが追い抜いていく 子どものために「とまります」を取っといてあげたい

          バスの車内で

          〈他者〉との出会いと孤独

          はじめに 誤解しないでいただきたいが、これから私が言う「孤独」とは、寂しさのことではない。両者は全く別物である。世界は、この〈私〉から開かれたものだ。そして、誰もが皆 その“開け”を持っているのだが、私は、〈私〉以外の見地に立つことはできない。それゆえの「孤独」である。 中2の頃、オーストラリア人を好きになったことをきっかけに、「誰とも現在を共有できない」ことに気付いてショックを受けた。 繋がれない寂しさが生まれるのは、距離があるからではない。同じ家に住んでいる家族であって

          〈他者〉との出会いと孤独

          なぜ文学なのか

          利己心を全く含まない、本当に純粋な利他の行動なんてないと思う。 突き詰めていけば何もかも、自分の「快」に辿り着くように、感情も感覚も上手くできている。 「あなたは本当に優しいよね」 「一途だね」 そう言われる度に激しく否定し自嘲するのは、謙遜なんかじゃない。人間とはそういうものだから。 自分のエゴイズムを呪っている人は、早く諦めた方がいい。矛盾を許せ。そういうものだから。 しかしだからと言って私は、人間を卑しく愚かな生き物だとは思わない。 人間として生きていることを悲観した

          なぜ文学なのか

          詩 鋭敏なる

          空間の彼方に飛ばされていく現実感 耳元では絶叫そして抜け殻の身体 お前は居ない居ない居ない居なかった 街灯が照らし損ねた暗闇に独り凍える僕がいる 合わせ鏡に連なる私、私、私が見つめる私の目 そして衝動的な、…… 正しい日本語を間違いのタイミングで喋る機械 ロボットが泣いているよと嗤われる そろそろ脳髄に油を差してやらないとなあ 身体が壊れちゃいました 私が私を壊してしまいました 骨は僕を震わす全ての音となり 肺は膨張する世界を捉え続け 心臓は全てを置き去りにする 僕は耳鳴

          詩 鋭敏なる

          故郷の季節

          田んぼ燃す匂いして、運転席の窓いっぱいに開ける ロール、ロール、ロール 群青色の山肌に雪が積もった山脈の景色は張りぼてじゃないか 嘘みたいに青いや 天も地も地平線まで続く灰色 閉じ込められた盆地 無音 木を打つのが遠くから響く 毎年人も物も潰される いつも水の滴る音がして 朝の外気に肺まで凍る きっと清潔になれるんだ じゃがいも畑の臭いとじいちゃんと自転車 生命の芽吹きにおいてかれて縮こまる 見て、夏みたいな雲だ 山の向こうから湧いてくる 峠越えたら雲の根元が見えそう

          故郷の季節

          そんなものない

          春の風は 日陰の氷やつららを通ってくるから清潔だ 秋の風は 熟れすぎた柿や腐乱死体を通ってくるから眠くなる 冬を通り越して、今日は春の風が吹いていた 膜が張っちゃって 世界がよく分からないなあ 鈍れ、鈍れ 言葉を手放せ 闇にも消えないススキの穂 河原の上の広い空 どの橋にしようか選びながら帰った 日が落ちて 感傷がしらけた オリオン座が追いかけてくる 走っても走っても追いかけてくる 隔てるものが何も無いことにゾッとする

          そんなものない

          あるいは、あ

          地平線から滲んだピンクは 橙となって 赤となって 天上に辿り着くことはないけれど 明日は血濡れの青空になるだろうねぇ どうして頭をぶつの 頭が痛いからだよそう言った あんたの眼は 私の向こうを見てるねぇ ああ今時間がたゆんだ 知らない言葉でなかよく話す 一人増えている 裏返しになる、からだ ダンボールを運ぶ 全身を切りつけてくる そんなことはなかった 芯を繰り出す ペン先が突き刺してくる そんなこともなかった 溺れる空想で溺死する 喉にA玉が詰まって 夏祭りで

          あるいは、あ

          詩 居た子ども

          愛されるべきだってこと知る前に 蟲にむしゃむしゃ食べられちゃった子ども 赤色と緑の点滅を 轟音が追いかけて行く 屋根も壁も通り抜けて拐いにくるよ 大丈夫は何処にも無いよ 夕暮れに シューシューとトントンと微睡みと ほんの少しの頭痛とあって 胸が空っぽで変な気持ち 言葉を持たない子どもがいたんだってさ その子も、ものを考えたりしたんだろうか わるい子だから仕方がないね 怒ったより怖い顔の大人が 目で頷くようなことさ あの子に気持ちがあったとしたら 蟲の嫌な腹に 閉じ込めら

          詩 居た子ども

          詩 竜よ

          竜、どうしてお船になってしまったの 僕またひとりぼっちだよ 怖がって近寄らなかった人たちもみんな 船になった君に乗ってさ 水墨画の景色の中を行ったね どんな大きな波も君を飲みはしないんだ すぐに頭をもたげて 頼もしい船さ しばらくして、また君と僕だけになったね 一緒に飛んだ空を上に見上げて 君は黙ったままでさ 僕がいなくなったら 君の松の体はどうなるの 本当のひとりぼっちにしてしまうね 竜、僕はまだ 君と出会った時の少年の僕のままだ