これから幸せになる人へ

遠くに住む友人から、手紙が届いた。

友人と言っても、実際に会ったことはない。
9年間文通を続けている「友人」だ。
月に1回のやりとりの中で、もう6年近く一人の男性が毎回必ず手紙に出てきたんだけど、三人称が「彼」から「彼氏」になって、「元彼」に変化していった。実際は「元彼」時代が一番長く、「彼氏」だった男性のことはほんの数回の手紙の中でしか知らない。

つまり彼女が一瞬だけ「彼氏」になった男性に対して未練タラタラなのだ。内容を読んでいると、遠回しにではなくかなり直接的に何度も断られているのだから、脈がないもいいところ。いい加減あきらめなさいな、と何度アドバイスしたかわからない程度に私たちは仲が良いんだけど、毎月届く手紙の中で彼女は男性への未練を綴り続けた。この人は一生この恋を引きずり続けて生きていくのかもな、と思うほど。

ところで、文通って面白くて、5年間毎月届いてた手紙が突然途絶えたと思ったら、2年後にぽっと届きだして今度は週1回になったり、初回の手紙が最後の手紙になった縁もたくさんあったりする。
そんな中、彼女とはわりとコンスタントに月1ペースでやりとりしていたのに、今年になってから急に届かなくなった。たまたま所用が立て込んでたのかもしれないし、会ったこともない私に自分の(もはや心の支えにすらなってそうな)恋を貶されて傷ついたのかもしれなかった。
でも前述のような例もあるし、まあ気楽に待っていようと思った。

そして届いた手紙。なんかもう、宛名が踊っている。これはと思って早速封を切ると、紆余曲折があって男性はまた「彼氏」になり、結婚を前提に同棲するという。しかし喜びに踊る文字とは対照的に、内容はどんよりしていた。思いが通じた嬉しさというより、自分が幸せになることへの戸惑い、恐れ、躊躇。

なんだいなんだい。距離にして1500kmも離れてるから行けないし、電話番号やLINEのIDも知らないから手紙以外で連絡を取る手段はないけど。
どうか。

安心して幸せになってくれ!

とそれだけを伝えたくて、まずはすぐにはがきを出そうと思う。

これは私の友人だけに言えることじゃないのです。
そこのあなたもあなたもあなたも!
自分の幸せは自分が決めて良いのだよ。誰にも遠慮する必要なんかないの。
もしかして突然戦いが終わって燃え尽き症候群みたいになってるのかもしれないけど、大丈夫です。堂々とその手につかんでください。

さて、次は男性が「旦那」になる日を心待ちにして。


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