育成年代のトレーニングvol.4敏捷性
いつもお読みいただきありがとうございます。
C-I Baseballの佐藤康です。
前回までは2回にわたって「ジャンプ動作や腱機能」についてまとめてきました。まとめる中で敏捷性の要素である”方向転換能力”の向上には、Stretch-shortening cycle(SSC)の運動要素が一要因となっていることが挙げられておりました。
育成年代のトレーニング現場でも、敏捷性向上を目的としたラダーやミニハードルなどを利用したSAQトレーニング(SAQ:Speed/Agility/Quickness)が実践されている場面が多くみられます。
そのため、今回は「敏捷性」をテーマに、なぜ育成年代の時期にトレーニングを行うべきか?何をすべきか?を中心にまとめていきたいと思います。
▶敏捷性とは
まず、はじめに「敏捷性」についてまとめていきます。
スポーツ科学の分野では以下のように示されています。
敏捷性の構成要素は
「視覚・認知スピード」(上図左側)と
「方向転換スピード」(上図右側)の要素に大別されます。
言い換えれば、認知・感覚系の機能+フィジカル系機能といえます。
つまり刺激に対して素早く認知・入力し、
その情報を統合・処理して、
すばやく動くことができる能力が求められます。
そのため、
アジリティ能力を向上するためには、
両側面のアプローチが必要であるといえます。
野球における敏捷性とは、走塁での方向転換やダッシュ・守備では打球のチャージでの加速→減速などといった要素が該当してきます。加えて、方向転換により起こる足底からの地面の反力を強く受ける場面は、投球やスイング動作にも反映できる要素であると捉えています。
直接的な野球の技術の面を踏まえた、
要素へのアプローチを考察していきます。
▶成長期に敏捷性を向上するメリット
つぎに、成長期に敏捷性を向上する点についてまとめていきます。成長期の選手に関わる上で、身体の成長・発達の観点を無視した指導はできません。
育成年代シリーズの記事では
何度か出させていただきましたが、
”スキャモンの発達曲線”を挙げます。
ここで着目しておきたいのが、
「神経型」の発達の軌跡です。
(20歳の値を100%として曲線で示したもの)
「神経型」とは
”脳や神経系の働き”を表しており、図でも10歳頃までに大人とほぼ同じくらいまで発達していることが分かります。つまり、神経系の機能がもとになる敏捷性の能力の基礎の向上が10歳頃までにピークを迎えるということを意味しています。
そのため、敏捷性のトレーニングを実施するには成長期が最適な時期であり、刺激を加えれば加えるほど、その伸びも大きくなることが見込めます。「ゴールデンエイジ」と称される所以の一つです。
敏捷性の構成要素としての反応時間やステッピングの発達過程を知っておくことは、選手の敏捷性能力を向上させる上で重要であると考えられます。
▶反応時間に対する考察
上記のスライドより、反応時間の短縮には情報処理に関するPMTが大きく関与しています。PMTは幼児期から成長期に、反応課題に対するステッピング能力も思春期前までがトレーニングの至適時期であることが報告されており、この時期に反応を速めるトレーニング(反応課題)を行うことが効果的であるとされています。
他の研究でも下記のような報告がされています。
ここから先は
野球トレーナーマニュアル
【C-I Baseballトレーナーのトレーナーマニュアル】 投球障害肩・肘、腰痛、捻挫、肉離れ、下肢障害など野球におけるケガの関りを専門…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?