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花 2020.2.17 私と父と家族の事

先日,今年はツツジがいっぱい咲いたのよ,と母から電話がありました。
父が亡くなってから2年。忙しさがようやく落ち着いた頃でした。
ツツジの鉢植えは,元々父が集めたものでした。次第に手入れがされなくなり,鉢の数もずいぶん減りましたが,残った鉢植えを,母が少しずつ手入れをし続けていたようでした。母は父の介護と病院への送迎の毎日で,一人で出かけることもできなくなっていましたが,庭にいっぱいのお花を育てることが,母のささやかな楽しみのようでした。
思えば,母とお花の思い出はたくさんあります。
私がまだ小学生のころ,学校の教室に飾りなさいと,庭で育ったお花を持たせてくれました。先生に褒められたのが嬉しくて,庭にお花が咲くたびに,また持っていきたいとお願いしていました。
毎日お仏壇のお花も欠かさず,お正月には,いつもよりちょっと豪華なお花を活けていました。
お花が好きな母に,兄弟でお小遣いを出し合い,母の日にカーネーションをプレゼントしたこともありました。
私は成人して実家を離れましたが,時々無性に部屋にお花を飾りたくなるのは,母の影響なのかもしれません。

私に子供が生まれてからは,子供が幼稚園で育てたふうせんかずらの種を,小学校の授業で育てた朝顔の種を,旅行先で偶然もらったコスモスの種を,手紙と一緒に母に送りました。
母はそれらの種を庭に植え,こんなに育ったのよ,とまだ小さな私の息子に見せてくれました。それを見た息子は,おばあちゃんの家の庭は,ポイっと種を蒔いておけば何でも育つ,と不思議そうに話していました。
母の日にピンクの紫陽花の鉢植えを贈ったときは,庭に植え替え,次の年に水色の花を咲かせました。
母にとって庭に咲く花は日常の一部で,そして今も唯一の癒しなのかもしれません。
そんな母に,日常とは少し離れた,ちょっとよそ行きの花束を贈りたいと思います。母があまり目にしたことのない,珍しい,そして気分が晴れやかになるようなお花を見せてあげたいです。きっと,まず最初に,仏壇の父に見せて,一緒に喜んでくれると思います。

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