こあず

楽しく読み書きします。本の感想を書きます。

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マガジン

  • 普通免許への道

    一人暮らしの独身女性が働きながら普通免許(AT限定)を取るまでの悲喜交々を記録します。いつだって挫けそうなので応援してください。

最近の記事

#3 車の運転を学びに来たのに

手続きはさくさく進んだ。 事前に電話をかけて必要なものを揃えて向かう。 住民票、マイナンバーカード、そして、現金。  おおよそ三十万円。コンビニで引き出して、封筒に入れて急いでカバンに仕舞う。一気に落ち込む貯金残高を見て「もう引き返せない」と追い詰められたような気持ちになった。不労所得はないので働かないと生きていけない私にとって、お金は大切なものだ。しかし、今まで一度もお金持ちになるために働いたことがないように思う。仕事は自分の時間を費やす楽しいものとして、社会と繋がるた

    • ♯2 向いていない技術・見たくないところ

      教習所の近くに住みながら、私はしばらくそこに行かなかった。  そして一年以上経って通うことを決心した。  毎朝バスで教習所の前を通るたびに目にしていた「今こそ免許!」という手作りのポップを見て、  「そうだ、今しかない」と思った。 大きな理由は仕事の変化だ。  転居の理由になった仕事はとても忙しかった。しかし、それまで勉強して来たこと、社会にこんな取り組みががあったらいいなと思うような事業に従事していた。所謂、好きなことを仕事にしているという状態だった。好きなこと

      • #1 通りすぎるあるいは乗り過ごして来た車

        私にとって車とはずっと乗せてもらうものだった。 これは、三十代半ばで突然普通免許取得に踏み切った女の奮闘記だ。  普通免許とは、普通自動車の免許のことである。日本の人口のどうやら半分ぐらいが持っている道を走る車を運転する免許のことだ。私が育った街では、多くの人が高校卒業と同時に普通免許を取得する。進路が決まった時期から同級生の間では自動車学校の話題が上っていた。車は一人一台持っているのが地方都市ではおそらく普通の光景だろう。私は東京の大学に進学することが決まっていたので、取

        • 出会って別れていく私たちの『一心同体だった』

          「女同士の関係は友情ではなく連帯」とは言いますが、実際のところどうでしょうか? まぁわからないではない。  我が身を振り返ってみる。三十代前半。何度目かの結婚出産ラッシュだ。大学に長く残った友人が多いせいか、第一次の時よりも近しい友人が多く結婚している印象がある。私自身も結婚を考えたりもした(が、破局した)。結婚した後も長く友人関係が続いている人もいれば、結婚後どうも話が合わなくなって疎遠になった人もいる。ここで気づくのは話題が合わなくなったと言うわけではなく価値観が合わなく

        #3 車の運転を学びに来たのに

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        • 普通免許への道
          2本

        記事

          綿矢りさ『手のひらの京』を読んで

          ※ネタバレがあります 綿矢りさ『手のひらの京』 3人姉妹の人生の岐路に立ち会う小説東日本で育った私が初めて京都に行ったのは、二十歳の誕生日の旅行だった。京都出身の友達や知人に案内をしてもらいながら、バスや自転車に乗ってぐるぐると回る京都。東京で知り合った京都の人々は口々に京都についての知識を披露し、どこか誇らしげな雰囲気を漂わせている。地方都市の港町で育った私は自分の街に愛着はあれど、人に疲労するほどのことはなに一つないので少々面食らったのを覚えている。 そして、何度か訪

          綿矢りさ『手のひらの京』を読んで

          地元ラブにはなれないけど、私はここにいるしかないと腹を括った。『ここは退屈迎えに来て』

          気持ちが沈んで、何のやる気も出ないとき。 そういうとき、大体私は自分のことを言語化する気力がない。ただ漫然と理由もなく、いや、理由について思考を巡らす気力もなく、自分が漫然と沈んでいていい理由を並べているのだ。お手軽に使えそうな理由を並べて、「沈んだ気持ちをそのまま放置して良し」の自分に言い訳をする。まさに自家中毒気味だ。 2020年は大変だった。 コロナ禍で海外生活を中断し帰国したのが3月末。18才で上京した連絡不精の私には地元の友人なんてひとりもいない。仕事もない。お先

          地元ラブにはなれないけど、私はここにいるしかないと腹を括った。『ここは退屈迎えに来て』