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貧困の連鎖を考えた。「黄色い家」を読んだ

画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。
黄色が重要なイメージになっている本です。黄色という色はお金の色でもあり、幸せの象徴の色でもあります。

新聞連載時から気になってはいたが、単行本にまとまって、やっと読むことができた。

物語は、主人公「花」の視点で語られる。
「花」の母親は、花をほったらかしてしょっちゅういなくなる。

花は、そんな生活から抜け出そうと、何度も何度もチャレンジする。
しかし、そのたびに不幸に見舞われ、決して高望みをしていないのにもかかわらず、まるで悪いことをしたかのように、どんどん思いがけない方向に流されて行ってしまうのだ。
帯には「人はなぜ、金に狂い、罪を犯すのか」とあるが、私は、貧困の連鎖という言葉を連想し、差別や、境界知能の人々の問題と合わさって、そういった人々の起こす犯罪がテーマになっていると感じた。
花は、最終的には金の亡者のような態度をとるようになっていくが、決して金に操られ、その魅力に取りつかれたのではなく、どちらかというと生活や将来への不安から、道を踏み外していくのであり、これはどうしようもない、そこから抜け出せない子供達の話だと思った。

「でもわたしがわからなかったのは、その人たちがいったいどうやって、そのまともな世界でまともに生きていく資格のようなものを手にいれたのかということだった」

本文から

親になり切れていない母親、しかしその母親の母親も世間でいう「まとも」ではなかったのだ。
そして子供目線でいえば、映水や琴美、ヴィヴなど。花をとりまく大人たちもまたろくでもないやつばかりで・・・しかし、彼らも昔はろくでもない大人たちに囲まれた子供だったのだろう。

花は母親のもとをでるが、物語の中盤で、母が花のもとを訪ねてくる。花はまた母によってどん底に落とされるのだが、それでも母を見捨てられない、いや、母の愛情を求めているとさえ思えるのが悲しい。
まともに生きたくても、スタート地点にさえも立てない。そんな花が悲しい物語だった。

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