見出し画像

【第2回】里山の今

(1)小林農産の里山について
 
小林農産の里山についてお話をする前に、そもそも「里山」とは何なのか、私が考える里山についてお話をしたいと思います。

国は里山を

里地里山とは、原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域。

(“自然環境局 里地里山の保全・活用”.環境省. http://www.env.go.jp/nature/satoyama/top.html)

と定義しています。

 小林農産は倉敷市玉島黒崎という、丘陵と海兵地からなる地域にあります。市道沿いに家屋が存在している以外は大半が農地です。縄文時代から人々の暮らしの場となっていたようで、近くには貝塚もあって、私が営む里山から鏃(やじり)も見つかっています。まさに原生的な自然の中に人々が生活を営んできた場所なのです。
そんな地域で育った私は、里山をこう考えています。
・自然の恵み、山の恵みを収穫できる場所
・山林と人間の営みの境界
・獣侵入を防ぐ防波堤であり共存の場所

 前回、耕作放棄地の増加で森林荒廃が進み獣の被害が増えてきているとお話ししました。里山は人間と獣の居住エリアの境界の役目を担っています。里山が手入れされていると、獣たちは「お!人間が近くにいるんだな!」と気配を感じ、それ以上深入りはしてきません。しかし里山が荒廃することで、境界の役割を果たすことが出来なくなり、人間の生活圏へ獣が侵入してしまうのです。
 そういった意味で、私は里山を「境界」「防波堤」と考えています。
 ただ、里山は境界線でありながら、人間と獣の共存する場所でもあると思います。里山にはたくさんの実りがあります。人間も獣もずっと昔からその恩恵を受けてきました。お互いがお互いの生活圏を侵食しないようにしながらも、「里山」という場所では同じ自然の恵みを共有しています。獣を追い出すのではなく、共存する。里山はそういった場所でもあります。

 さて、小林農産の里山では自生している野草や草花、栽培している果樹など100品種以上の植物の世話をしています。果樹として植えているブドウ(ピオーネ)や温州みかんなどの柑橘類は、収穫して地元の農協や直売所で販売しています。また植栽だけでなく自然に生えている山菜や野草・薬草、セリやナズナといった春の七草や、キキョウやナデシコといった秋の七草なども少しだけお世話して、恵みとして収穫しています。
 小林農産を訪れてくれた方には、そういった自然の恵みの収穫を通して里山の良さや自然の癒しの力を体感してもらっています。

 自然の恵みや癒しの力をくれる里山ですが、課題も多くあります。
6,200坪という広大な面積の里山を管理するには、たくさんの人手が必要です。
一般的に1エーカー(約1,224坪)の里山には4~5人分の仕事があると言われています。
小林農産の里山面積で考えると、約25人分の仕事量があることになります。到底、私一人ではすべての仕事をすることが出来ません。手が回らない部分の仕事を委託する資金不足というのも小林農産の喫緊の課題です。

(2)日本の里山の今
 
それでは日本の里山は今、どのような状況なのでしょうか?皆さんももう想像がつくと思いますが、都市部への人口流出でかつての豊かな里山はますます少なくなってきています。里山が機能しないことで獣と人間の距離が今までよりも近くなり、獣が人里へやってきて畑を荒らす、人に危害を加えるなどの実害も出ています。そういった獣の駆除も簡単ではありません。
 例えば、鳥獣保護区に指定されている私の里山では、勝手に駆除することが出来ないので猟友会の方に依頼したり、市に許可を得て電気柵を設置したりと手間もお金もかかります。
 
 そして人口流出に加え、里山を管理する方々の高齢化と後継者不足も課題となっています。私も現在67歳です。日本の里山全体でも里山を手入れする人、守る人の減少が大きな課題となっているのです。

(3)小林農産がこれから取り組もうとしていること
 
小林農産においても、日本においても課題が山積みの里山ですが、小林農産では里山を守るために農業と福祉を繋いで里山維持活動する新しいビジネスモデルや、資金、人手不足解消のため企業からの協賛金で里山管理の一部を委託する仕組みづくりに挑戦しようとしています。
 取り組みの詳しい内容については、また次回。ご興味のある方はぜひ次回も目を通していただけるとうれしいです。