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明るくて、あたたかなデザイン。進化する公立図書館

「堅い」や「暗い」「冷たい」のイメージをお持ちかもしれません。市立や県立の図書館です。しばらく足を運んだことのない人なら驚くような斬新な施設が登場しています。読書の秋、播州人3号が進化する図書館へと誘います。

神戸市ではここ数年、市立図書館のオープンが相次いでいます。
10月には神戸市の西端のニュータウンに、新たな文化拠点が生まれました。図書館も目玉の一つです。

なでしこ芸文センター開館
文化芸術育む 中核拠点誕生
西神中央駅西側

 神戸市が市営地下鉄西神中央駅西側に建設していた「なでしこ芸術文化センター」が完成し1日、オープンした。ホールや図書館、カフェ、交流スペースなどが一体となった複合施設。記念式典には市民や行政関係者が集まり、文化と芸術を育む新たな中核拠点の誕生を喜んだ。
 同センターは敷地面積4千平方メートル、延べ床面積6172平方メートルの3階建て。「格子模様」や「多面体」をモチーフにしたデザインで、駅前で存在感を放つ。
 1、2階部分に整備された「西神中央ホール」は収容人数500人で、県内産のスギ材で組んだ天井が特徴的だ。舞台背面の壁を開けると、外からガラス越しに鑑賞することができるほか、防音の貸しスタジオも備える。
 西図書館は西区文化センターから移転し、広さ3倍以上、座席数4倍以上に拡充された。窓から光が差し込み、開放感あふれる雰囲気の中、1階に児童書、2、3階に一般書が並ぶ。
 1日の式典では、ピアノ演奏や高校生によるダンスで開館を祝福。久元喜造市長は「神戸市西部に本格的な芸術文化拠点はなかったが、誕生した。狭い、暗い、本が少ないと言われた西図書館も一新された。ホールは100%の稼働を目指す」と述べた。

(2022年10月3日付朝刊より)

光が差し込むと格子状の影ができる仕掛けです。
市長が言うように、これまでの図書館は「狭い」「暗い」施設も多かったようです。

1年半前には、神戸市須磨区の市営地下鉄駅前にも図書館がオープンしました。開設した場所がちょっとした話題になりました。

百貨店内に名谷図書館
親子くつろぐ木のぬくもり
神戸市須磨区

 大丸須磨店(須磨区)に24日、市立名谷図書館が開業した。百貨店内に本格設置される全国初の公立図書館となる。初日から多くの家族連れらが訪れ、木のぬくもりが感じられる真新しい空間で、早速、読書を楽しんでいた。
 人口減少対策として、市が鉄道沿線で進める駅前再整備事業の一環で、12番目の市立図書館となる。同店4階の約1300平方メートルで、最終的な蔵書数は約7万冊(一般書約5万冊、児童書約2万冊)を見込む。
 内装には六甲山の木材などを使用。丸太ベンチやテーブル席、ソファのほか、グループ学習室(4席)を含め計138席を確保した。このうち個人ブース席など計44席は、専用端末で予約して利用(1日最大180分)できる。
 児童書のコーナーには、「おはなし会」などを開く部屋や、靴を脱いで利用する「寝ころびスペース」を設置。新聞コーナーや多目的スペースは飲食が可能で、休館日も開放する。
 友人家族と一緒に来館した同区の主婦(39)は「広々としていて絵本も見やすい。小さい子どもも楽しめる」。近くに住む男性(65)は「好きな歴史書のほか、専門書も多く、館内が明るくて本が読みやすい。図書館が街の活性化につながれば」と期待した。

(2021年3月25日付朝刊より)

木材が多用され、ぬくもりが感じられます。
先日訪れると、買い物袋を提げた親子も多く見られました。

郊外だけではありません。
JR三ノ宮駅近く、神戸市役所の南にある公園には、子ども向け図書館がオープンしました。世界的に有名なあの建築家の寄贈です。

「こども本の森 神戸」東遊園地にオープン
絵本や図鑑、児童文学書…壁面の本棚から選び

 神戸・三宮の東遊園地に25日、建築家の安藤忠雄さんが手掛け、神戸市に寄贈した図書館「こども本の森 神戸」が開館した。当初の蔵書は約1万8千冊で、絵本や図鑑、児童文学書などが壁面の本棚に所狭しと並べられている。
 同図書館は、阪神・淡路大震災の復興事業に携わり、神戸に思い入れがある安藤さんが市に寄贈を提案。名誉館長には、詩の朗読を通じて震災の記憶の継承に取り組んできた俳優、竹下景子さんが就任した。
 施設は2階建てで、延べ床面積約570平方メートル。「しぜんの森」や「げいじゅつの森」、「こうべの森」など15のテーマに分類され、高さ約8メートルの吹き抜けの壁面などに多様な本がそろう。将来的に2万5千冊まで増やす予定という。
 本棚の本は、5段目までは手に取ることができるが、6段目以上は免震対策で固定されている。このため、同じ本が下段に用意されている。本は借りられないが、屋外のウッドデッキや東遊園地内に持ち出して読めるのが特徴だ。安藤さんが手掛けた「こども本の森」の開館は、大阪市・中之島、岩手県遠野市に続き、3カ所目。

(2022年3月26日付朝刊より)

神戸市ではほかにも図書館整備計画が進んでいます。
2023~24年度には垂水図書館、26年度以降は三宮図書館の整備も検討されています。

紹介した神戸市の図書館もそうですが、「明るさ」が最近の図書館の特色ではないでしょうか。
お城で有名な姫路市にも開放的なデザインの市立図書館があります。

非日常へいざなう開放感
姫路市立図書館広畑分館

 4階まで吹き抜けとなった開放的なたたずまい。ガラス張りと白い格子状の壁が異彩を放ち、来館者を非日常へといざなう。
 ユニークな空間が広がる姫路市立図書館広畑分館(同市広畑区)。トレーニングルームやホール、カフェを併設した6階建てで、市民の憩いの場となっている。
 市内に14館ある図書館分館の一つ。5年前には1階にも書架を置き、図書館のスペースを拡大した。
 近未来感あふれる雰囲気だが、開館は1994年。市や担当した設計事務所によると「担当者が退職し、資料がない」と建築デザインの詳細は不明だ。利用者の女性(33)は「子連れでも気軽に足を運べて過ごしやすい場所。写真映えして気に入っている」と話す。

(2022年9月29日夕刊より)

図書館は、本を借りるか、調べ物に使う場所だと思い込んでいましたが、本を通じた交流を促す機能も紹介されていました。

本通じ交流する談話室
お薦め本交換コーナーも
県立図書館にオープン

 県立図書館(明石市明石公園)は、読書や調べものの合間に休憩できる談話室を1階入り口横に開設した。新たに利用者や職員のお薦め本を並べたコーナーを設け、その場で読んだり持ち帰ったりできるユニークな試みも開始。本と出合い本を通じて来館者同士が交流できる場としてPRし図書館のさらなる活用を促す。
 同館にはこれまで、1、2階に休憩用のいすやカウンターがあったが、席数が限られていた。利用者から飲食スペースを要望する声もあり1階入り口横の新聞閲覧室を改装。いす約10脚とテーブル約10台を置いた。
 新設の「おススメ本交換コーナー」では、利用者や職員が「ぜひ読んでほしい」と思う本を持ち込み、共有できる。当人がアピールしたい読みどころ、読後感などを書き込んだ帯も作成でき、貸し出しカウンターに本と帯を持って行けば談話室の棚に並べてもらえる。利用者が読んで気に入った本は、返却不要で自由に持ち帰ることもできる。
 談話室は「おススメ」から着想した「雀庵すずめあん」と命名。飲食自由で、イベント情報のチラシを集めた棚もある。同館は「休憩だけでなく、いろんな情報が得られる場所として活用してほしい」としている。

(2022年2月24日付朝刊より)

コンセプトが「公園」という図書館もあります。

「公園のような図書館」定着
地域に愛され ことば蔵5年
伊丹

 伊丹市立図書館「ことばぐら」(宮ノ前3)が7月1日で開館5周年を迎える。「公園のような図書館」をコンセプトに、本好きでない人たちも呼び込もうと、市民と一体となって企画。運営する交流イベントは昨年1年間で120回に上り、全国的にも注目を集めている。7月1、2日には、ことば蔵の源流となった私設図書館の歩みなどを紹介する企画展やシンポジウムを開く。
 ことば蔵の原点は、1912(明治45)年に大阪医学校(現在の大阪大学医学部)教授だった小林杖吉じょうきちが開いた私立伊丹図書館。杖吉は主宰する私塾「三余学寮さんよがくりょう」で地域の子どもたちに英語や数学、地歴などを教え、その授業料などで書籍を購入し、伊丹初の図書館を開設した。当時、公立図書館でも閲覧や貸し出しは有料が一般的で、無料利用が地域の教育向上に貢献した。
 43(昭和18)年に閉館されるが、4万冊の蔵書の一部は51年に開設された最初の市立図書館(行基町4)に引き継がれた。その後、市役所そばに移転したが、2012年7月に現在の場所にオープン、名称は公募でことば蔵に決まった。
 気軽に利用できる図書館を目指し、毎月1回の「交流フロア運営会議」では市民が自由な発想で企画を話し合う。英会話教室や本作り体験、手作り帯でお薦めの本を紹介するイベントなどを催してきた。また、杖吉が発行していた郷土新聞「伊丹公論」にちなみ、同名の情報誌を年4回発行。地域の話題を取り上げた市民の寄稿を掲載している。
 こうした数々の取り組みが評価され、昨年は先駆的な図書館を表彰する「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー」の大賞に県内の図書館で初めて選ばれた。館長は「市民と共働し、杖吉が残したストーリー性を大事にしながら、今後も新しいことにチャレンジしていきたい」と話す。
 5周年記念の企画展を開催中で、杖吉の原稿や蔵書印などを展示。また1日午後2時からは、ライブラリー・オブ・ザ・イヤーの選考委員による記念講演や、ことば蔵の未来を考える交流フロア編集会議の特別版を実施。2日午後2時からは、市立伊丹郷町館の館長が杖吉の功績について講演する。

(2017年6月30日付朝刊より)

本好きだけでなく、だれもが気軽に集まれそうです。

<播州人3号>
1997年入社。高校生のころ、利用したのは近所にあった公立図書館の分館でした。木造平屋で、玄関で靴を脱いで上がり、冬場には石油ストーブがたかれていました。本を借りるには表紙裏の袋に差し込まれたカードに名前や日付を記入する必要がありました。たまに「最初の読者」になるときがあり、名前を記入しながら前人未踏の地に足を踏み入れたような気分になりました。

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