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Season1完結!製作陣の本気が詰まった圧巻のドラマシリーズ「沈黙の艦隊」の魅力

劇場版からずっと着目している映像作品「沈黙の艦隊」のSeason1が完結した。
まさに、劇場版が序章なら、このドラマシリーズこそ第1章。
さすが、世界のAmazonと、「キングダム」や「ゴールデンカムイ」を実写化大成功に導いてきたCREDEUSだ。
映画好きの筆者だが、これほど圧巻の映像体験を邦画で経験したのは初めてだったので、今回のAmazonのドラマシリーズへの期待はかなり大きいものだった。
それだけに、今回は特に熱を入れて感想文を書きたいと思う。

(映画版の感想文はこちらから↓)

以下、本noteの感想文は、
・劇場版を3回、IMAXで視聴済み
・ドラマシリーズ「沈黙の艦隊」Season1全話視聴済み
・原作漫画をドラマシリーズ該当箇所まで読了済み
の状態で書いたものである。


その迫力たるや洋画超大作並み!〜圧巻の映像体験〜

まず何よりも目を引くのは、その圧倒的な映像のスケール。原子力潜水艦対原子力空母という規格外の戦闘が、迫力ある映像によって眼前に展開される。こんな迫力ある映像は、私はこれまで洋画超大作でしかあまり見たことがなかった。序章である劇場版を見た時から、「これ、今までの邦画のスケール遥かに超えていないか?」と思ったほどに。

CGやVFXの力もさることながら、本物の潜水艦が劇中に登場している迫力はかなり大きいだろう。私が劇中で好きなのは、本物の潜水艦が実際に沈降していくシーンである。本物の潜水艦にGoProをつけて撮影しているからこそ、水面にキラキラ輝く泡と共に潜水艦が沈んでいき、今までに見たことがないほどリアルで美しいシーンになっている。これも防衛省と海上自衛隊の全面協力があってこそ、実現できた映像と言っていい。

と、このような映像体験にハマって、映画は3回IMAXで視聴済みだった。
しかし、今回のドラマシリーズ、「映画に未公開シーンを加えて再編集しました」のレベルではない完成度である。というのも、「こんな迫力満点の戦闘シーンが未公開だったの!?」と思わせる新規カットがいくつもあったのだ。例えば、ドラマ第1話の「グッド・モーニング・U・S・A」の件からの哨戒機との戦闘、これは劇場版ではなかったシーンなのである。
毎話毎話で迫力ある見どころがあり、本当に1話1話ごとに見応えが凄まじいことこの上ない・・・。こんな超大作が日本で作れるんだ、と感動に震えた

劇場版「沈黙の艦隊」 映画パンフレット裏表紙より

潜水艦での戦いと、政治家の戦い!〜鬼気迫る俳優陣の熱演〜

広大な海で展開される潜水艦の迫力ある戦い、そして政治家たちの静かなる頭脳戦。それが豪華俳優陣の熱演によってリアリティを持って感じられる。

大沢たかおさん演じる海江田四郎(シーバット艦長→やまと元首)。
艦長としての、そして独立国家元首としての威厳に圧倒された。今まで大沢さんの作品は数多く見てきたが、毎回別人のように見える。でも今回ほど「この人、何者だ?」と思ったことはない。改めてすごい俳優さんだと思う。原作ではよりフランクな描かれ方をしているのだが、大沢さんの怪演と言うべきある種の不気味さによって、海江田の全能さが一層引き立っていたと思う。一言一言に哲学のような強さと美しさがあり、発言の説得力が尋常ではなかった。さながら、海の怪物・リヴァイアサンの比喩に相応しい、カリスマ性溢れる海江田だった。

玉木宏さん演じる深町洋(たつなみ艦長)。
海江田の実力を一番に認めつつも、だからこそ許せないところ。その葛藤がすごく滲み出ていた。艦長命令を発する時の迫力たるや、まさに艦長そのもの。とりわけ、ドラマシリーズ最終話の深町には心揺さぶられずにはいられなかった。原作では海江田と同期で、より豪胆なキャラクター。ここがもしかしたら原作ファンの方々にとって「?」と思うポイントかもしれない。一方、実写版では海江田への対抗心を燃やすエピソードが盛り込まれており、これがより感情移入しやすい構造になっている。ある種の繊細さも兼ね備えた玉木さん演じる深町だからこそ、というところも多分にあると思われる。

水川あさみさん演じる速水貴子(たつなみ副長)。
迷い悩む人間味があり、尚且つ毅然としていて凛々しい。乗組員への思いやり溢れる上に、すごくかっこいい女性だなと思った。艦長と副長の関係性として、男女関係なく同じ潜水艦乗組員として信頼し合っているんだなと感じた。原作では男性の設定だが、パッと見て女性にも見えるような中性的な見た目。実写化に際して女性に変更されていたのも、これなら違和感がないし、時代に即した秀逸な改変ではないだろうか。

他にも、日本を代表する俳優陣が競演されているが、中でも笹野高史さん演じる竹上内閣総理大臣が印象的だった。最初は、「国民に知られるわけにはいかないな〜」と弱腰で「大丈夫か?」と思わずにはいられない頼りのなさ。それが、「やまと」をめぐる一連の事件によって、一気に国民と平和を守るという責任感が目覚める。「まずは国民に知らせなくてはならない」と決意してからの竹上総理はまさに日本のリーダーと言うべき姿だった。この劇中で、一番成長したのはおそらく総理だったのだろう。

特に政治ブロックと、潜水艦乗組員のバックグラウンドは、劇場版では時間の関係で割愛したところもあったようだ。このドラマシリーズではそれが存分に盛り込まれており、登場人物たちの描写の厚みが一層増している。物語の説得力が格段に上がっていたのだった。

劇場版「沈黙の艦隊」 映画パンフレット表紙より


忖度なしにタブーに挑む!〜ど直球に国防を問う強いメッセージ性〜

そして特筆に値するのが、核抑止力について、平和について、真正面から切り込んでいるということだ。これまでの映像作品で、ここまでど直球に国防を問うたものはなかったのではないだろうか。少なくとも、
たかが半径5キロのこの海域に、 私は世界の現実を詰め込んだ
という海江田四郎の言葉を初めて聞いた時、私は震えずにはいられなかった・・・。

私は原作全巻を劇場版鑑賞後に購入し、じっくり読んでいるところである。これが実に迫力満点で、スリリングで、とても面白い!そして今や対岸の火事とは思えない、緊迫した国際情勢をギリギリまで描いている。30年前にこんな凄い漫画があったのかと、感嘆せずにはいられない。

核抑止力。
世界で唯一の被爆国である日本にとって、このテーマは他国以上に特別な意味がある。そんなテーマをど直球に扱い、国会でも議論を巻き起こした原作「沈黙の艦隊」。今回の規格外の映像化によって、世界唯一の被爆国としての日本が考えるべき平和の姿について、観た者に自分事として考えるきっかけを生んだ。ここまで考えさせられた作品はこれまでなかった。それでもエンタメとしての面白さと両立できている「沈黙の艦隊」は本当に凄いと言わざるを得ない。

かわぐちかいじ先生による原作「沈黙の艦隊」。
講談社漫画文庫版にして、劇場版は第2巻途中まで。
ドラマシリーズ「東京湾大海戦」は第6巻途中まで。
全16巻(講談社漫画文庫版)。


個人的感想〜映画から配信へ、新しいエンタメの形〜

本物の潜水艦とCG・VFXを駆使した大拍力の映像。
それぞれの正義をかけて戦う、鬼気迫る俳優陣の熱演。
そして、ど直球に国防を問う強いメッセージ性。
全てにおいて製作陣の本気を感じる。
それも30年前から愛されている、かわぐちかいじさんによる骨太な原作と、映像化不可能を可能に変えてしまう、本気のプロフェッショナルチームあってこそだ。その本気が、防衛省をも動かしたのだ。

劇場版であの圧巻の映像を体験できたワクワクが忘れられず、今回のPrime Video配信を待ち侘びていたが、それでもその期待を遥かに超えてきた。
「沈黙の艦隊」
濃密な内容の超大作の原作だからこそ、映像化媒体選択はかなり難しかったのでは無いかと、勝手ながら推察する。
それでも、劇場版を序章に持ってくることで、スクリーンいっぱいに展開しても負けない圧巻の映像を体験できた。それは映画だけの特権であるし、私は劇場版を見られて本当に良かったと思っている。
でも、やはり映画2時間ではどうしてもこの超大作は描ききれない。「ああ〜いいところで終わってしまう・・・」と思ったのは事実である。
それを完全版としてPrime Videoドラマシリーズにすることで、続編への期待に早々に応える形で、日本が世界に打ち出す新しいエンタメとしてアピールできた。映画から配信へという全く新しい試みだが、これは大成功と言って良いのでは無いだろうか。

なぜ、私がここまで熱くレビューを書いたか。
それは、観た者の声が次の作品づくりに大きく関わっていく、と強く思うからだ。
この壮大な挑戦の芽が育てば、日本のエンタメはもっと良くなるはず。
一本の映画やドラマが観た者の人生を変えうるということを身をもって知っているからこそ、いいと思ったものは「良い!」と声を大にして伝えたい。
それが観客サイドにとって、製作陣にできる一番のプレゼントだと思うから。

最後に。
本当に、これは見た方がいい。
今までにない映像体験ができることをお約束する。

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