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『科学と生命と言語の秘密』松岡正剛×津田一郎 | 春秋文庫

 私は松岡正剛が校長をされているISIS編集学校の卒業生になる。十年目の「離」なるコースを卒業(編集学校では退院という)したから、共読仲間とともに「十離」と呼ばれることもある。たまに老舗の居酒屋にて本で乾杯する仲だ。本書との出逢いはそんな十離仲間の「半分もわかっていなかった」というメッセージからはじまった。

 思い起こせば、離に入院してからの数ヶ月はひどかった。幼い頃、病弱だった私は医者に幾度も「今夜が峠です」と云われてきたが、そんな私でも離の入院中は厳しいものがあった。極限の睡眠不足が幾日も続いているのに、万巻の書が電氣を媒体としてゴーストのように飛んでくる。ちょうど海外起業をしようと、こっそり職員室で定款を英語で書いていた時期と重なったのも大きい。離論という卒業論文のようなものは、電波が著しくフラジャイルなプノンペンから提出した。

 そんな戦友とも云うべき仲間が「半分もわからない」というのであれば、私も壊滅的だろうとおもい、本屋に足を運んだ。ちなみに十離の仲間は私などではとても敵わぬ読書量と知性を有している先輩方になる。本をもとめて車内で一読したものの、噂通りの骨が折れそうな本であった。おもわず改札でPASMO代わりに本書を置いたが、やはり改札口すら入場できないレベルである。

 上の写真はそのときの一葉になる。写真付きで十離仲間に「改札すら入れない」旨を伝えると、「会社のIDとしても本書が使えなかった」とこれまた写真付きで返信がきたりした。どこかに本で入場できる駅や企業はないのかしら。いや冗談抜きに、本書はどこぞの秘密の改札に入る鍵となってもよい一冊である。よくぞ担当編集者も出産を挟みながら、まとめてくださったものだ。

 閑話休題。『科学と生命と言語の秘密』を私の言の葉で明らかにしていきたい。久々にS.T.Dupontのペンを持ち、本に書き込みながら読書したので、その電子的記録といったところか。

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