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サイコロジカル・ファーストエイドとは?

この記事は3,589文字あります。個人差はありますが、6分〜9分でお読みいただけます。

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連日、非常時の対応や心構え等について投稿しています。ご負担になる人もおられるかもしれません。そうした方は閲覧を避けてもらえればと思いますが、必要な情報でもあると思い書いています。特に、これからさまざまな地域に支援やボランティアが入ると思い、そうした活動に携わる方々に知っておいてもらえればと思っています。昨日の記事では、「サイコロジカル・ファーストエイド」について取り上げました。専門用語なので、わかりにくいかもしれませんが、災害時には大事な考え方になりますので、今回は「サイコロジカル・ファーストエイド」をテーマにします。どうぞお付き合いください。


サイコロジカル・ファーストエイドって?

サイコロジカル・ファーストエイド(Psychological First Aid;PFA)は、災害等の直後に伴う苦痛や困難を和らげ、被災された方々が回復することを助けることを目的としています。その対象は、被災された方々だけでなく、復旧・復興のための救助者の方々まで含みます。

本来はきちんと勉強した上で、被災現場に入ることが望まれると思います。それでも、専門的な介入方法でなくても、その考え方だけでも知っておくことはマイナスにはならないと思います。

基本的な目的は昨日の記事で書いた以下のようなものになります。
・被災者の方々の精神的苦痛を悪化させないように配慮して支援にあたる
・控えめに関与すること(いきなり介入しようとするのではなくて、穏やかに見守ることから)
・傾聴するけれども、無理に話をさせ過ぎないという態度
・水や食料など生活上の基本的なニーズを満たす手助けをする
・家族などの大切な人と連絡を取るのを助ける

避けるべき態度

昨日も、「避けてほしい対応」として、
・そうした体験を無理に思い出させようとしない
・無理に絵を描かせたり、作文を書かせたりしない
・無理に聞き出すことは傷口を広げる可能性がある
ということを書きました。

それ以外にも、サイコロジカル・ファーストエイドでは、避けるべき態度としていくつかあげられていますが、「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」の中で紹介されている事柄について触れていきます。

  • 被災者が体験したことや、いま体験していることを思いこみで決めつけないでください。

  • 災害にあった人すべてがトラウマを受けるとは考えないでください。

  • 病理化しないでください。災害に遭った人々が経験したことを考慮すれば、ほとんどの急性反応は了解可能で、予想範囲内のものです。反応を「症状」と呼ばないでください。また、「診断」「病気」「病理」「障害」などの観点から話をしないでください。

  • 被災者を弱者とみなし、恩着せがましい態度をとらないでください。あるいはかれらの孤立無援や弱さ、失敗、 障害に焦点をあてないでください。

  • すべての被災者が話をしたがっている、あるいは話をする必要があると考えないでください。しばしば、サポーティブで穏やかな態度でただそばにいることが、人々に安心感を与え、自分で対処できるという感覚を高めます。

  • 何があったか尋ねて、詳細を語らせないでください。

  • 憶測しないでください。あるいは不正確な情報を提供しないでください。被災者の質問に答えられないときには、 事実から学ぶ姿勢で最善を尽くしてください。

子どもへの対応

子どもへの対応の原則については、以下のように考えられています。

  • 幼い子どもに対応するときには、椅子に座るか、子どもの視線の高さにあわせてしゃがみましょう。

  • 学童期の子どもに対しては、感情、心配なこと、疑問を言葉にできるように手助けしてください。普段気持ちをあらわすのに使っているシンプルな言葉(頭にきた、さびしい、こわい、心配など)を用いましょう。「恐怖」「脅え」などの極端な言葉は、かえって苦痛を増すので、使わないでください。

  • 子どもの話を注意深く聞き、あなたのことをちゃんと理解しているよ、と伝えましょう。

  • 子どものふるまいや言葉が、発達的には退行しているように見えることがあることを知っておいてください。

  • 言葉づかいを子どもの発達レベルにあわせましょう。幼い子どもには通常、「死」のような抽象的な概念は伝わりにくいものです。可能な限り、シンプルで直接的な表現を用いてください。

  • 思春期の人に対しては、大人同士として話しかけましょう。そうすることによって、かれらの気持ちや心配や疑問にあなたが敬意を払っているというメッセージを送ることができます。

  • 子どもに十分な情緒的支えを提供できるよう、親の機能を補強し、支えてください。

高齢者への対応

高齢者の方々に対応する際の原則についてもまとめられています。

  • 高齢者はもろさをもっていますが、同時に強さももっています。かれらは人生のなかで逆境を乗り切ってきた人たちであり、多くの人が効果的な対処能力を身につけています。

  • 聴力に問題が見受けられる人に対しては、低いはっきりした声で話しかけましょう。

  • 見た目や年齢のみに基づいた決めつけをしないでください。混乱した高齢者は、記憶、思考、判断などに、不可逆の問題を抱えているように見えることがあります。環境の激変によって災害に関する失見当識がおこり、 それが一時的な混乱を引き起こすことがあります。環境の激変は、視力や聴力の衰え、栄養不良や脱水状態、 睡眠障害、持病あるいは服薬に起因する問題、社会的孤立、孤立無援や対応できないという感覚などを引き 起こします。

  • 精神的な疾患を抱えている高齢者は、不慣れな環境に対して、さらに混乱したり、困惑したりしやすいでしょう。 そのような人を特定したら、精神保健相談、あるいは適切な機関への紹介が受けられるよう援助してください。

障害児者への対応

障害のある方々への対応の原則については、以下のようにまとめられています。

  • 援助を求められたときには、できるだけ静かな、刺激の少ない場所で対応するようにしてください。

  • 直接のコミュニケーションが困難でないかぎり、介護者ではなく本人に向かって話しかけましょう。

  • コミュニケーション能力(聴力、記憶、発話)の障害が見受けられる場合には、簡単な言葉で、ゆっくりと話しかけましょう。

  • 「障害をもっています」と主張する人の言葉を信じてください―たとえそれが見た目に明らかなものでなく、あなたにとって聞きなれないものであったとしても。

  • どう手助けしたらいいか分からないときには、「何かお手伝いできることはありますか」と聞いてください。そして、 その人が言うことを信じてください。

  • 可能なら、自分のことは自分でできるようにしてあげてください(=わかる情報を伝える)。

  • 目の不自由な人が慣れない場所を移動するときには、「腕をお貸しましょうか」と申し出てください。

  • その人の必要に応じて(耳が不自由など)、情報を書きとめることを申し出たり、お知らせを文書で受け取れるよう手配したりしてください。

  • その人の介護必需品(薬品類、酸素ボンベ、呼吸器装置、車椅子など)を確保してください。

まとめ

「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」には、次のような記載もあります。

人は、他の人の態度から物事を判断します。穏やかな態度とはっきりした考えを示すことによって、被災者はあなたを信頼に足ると考えやすくなります。あなたがしっかりと落ちついた態度を維持していれば、たとえその人が落ち着かず、安全でもなく、事態に対処する力や希望をもっていないと感じていたとしても、あなたの態度に習うかもしれません。希望を示すこともまたPFA提供者のつとめです。被災者は、起こったことや目前に差し迫っている心配に対処することで精一杯なために、必ずしも希望を感じることができないのです。

サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版

ぼくら一人一人にできることは限られていますし、ぼくなんかはこうして誰に届くかわからないまま記事を書くくらいしかできていません。役に立つのかもわかりません。

それでも、自分自身が動揺せずに、穏やかに、落ち着いた態度でいることで、必要なことがあればサポートできるような準備をしておくことも重要ではないでしょうか。

補足はVoicyの配信をお聴き頂ければと思いますので、宜しければVoicyの方も応援していただければと思います!

佐々木康栄

災害時に役立つさまざまな情報

被災地で、発達障害児・者に対応されるみなさんへ(国立障害者リハビリテーションセンター)

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災害時、発達障害の子どもの支援についての医療関係者へのお願い(内山登紀夫先生)

その他お知らせ

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▼9月に大阪にて講演会をさせて頂いた「一般社団法人泉大津・発達支援勉強会Lien」さんが、「大阪府泉大津市、及び、泉州地域である近隣市町村一帯が、発達障がいや多様な子どもたちにとってより過ごしやすい地域に」を目指して、クラウドファンディングをされています。特に、4月2日の世界自閉症啓発デーでは、世界中がブルーライトアップされます。これは色々な人に目を向けてもらうための活動でもある一方で、それだけ予算がかかります。

そのため、どの地域でもできるわけではありません。今回、泉大津市内のブルーライトアップをしたい!という想いを叶えるためのクラウドファンディングです。目標金額は220万円です。ちなみに、これは行政と一緒に取り組んでいるものなので、「ふるさと納税」として寄付ができます。

ぼくも応援メッセージを出させて頂いています。どうか皆さんも応援していただけないでしょうか。

皆さんの応援が力になり、その力が地域を進める行動になり、その行動が当事者やご家族の未来になります。

一緒に地域の未来を変えるお手伝いをしてくれませんか?

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ぼくは仙台会場にいって、一丁前にコメンテーターというのをさせて頂きます!翌日にはTEACCHプログラム研究会東北支部主催でイベント「自閉症支援の未来会議 in 仙台」も開催しますので、2月10日(土)、11日(日)はご予定の確保をお願いします!

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