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「ひろがるデザイン」—NTT Designer Meetup 2023イベントレポート

こんにちは、KOEL UXデザイナーの廣瀬です。
NTTグループのデザイナーが集うイベント、『NTT Designer Meetup』が2023年6月16日(金)に開催されました。その企画や運営に関わらせていただいたので、今回は、そのイベントの様子をお伝えしていこうと思います。

NTTコミュニケーションズの事業共創の場である「OPEN HUB PARK(オープンハブパーク)」にて開催。NTT東日本の配信部隊「V-TECHX」にご協力いただきオンラインでのライブ配信を実施した
昨年度に続き司会を務めたのは、NTTコミュニケーションズ KOELの金 智之さん

NTTグループ内ではさまざまな場所でデザインが実践されていますが、デザインの実践者が情報を共有し合い繋がっていくことで、それぞれのデザイン活動をさらに加速できると考えています。NTTグループのデザインの力をもっと高めるためにも、NTTグループ横断でデザイン実践の情報を共有する場として、本イベントを昨年度から開催しています。

昨年度の様子もnoteにまとめていますのでぜひご覧ください。

第二回目の開催である今回のテーマは「ひろがるデザイン〜顧客体験のその先に、何を創り出せるか?~」です。近年NTTグループ内でも特に注目され、デザインとも関連の深い『CX(顧客体験)』にフォーカスしました。顧客体験を軸にしたNTTグループのさまざまなレイヤーのデザイン事例を共有し、デザインの取り組みがどのように顧客・組織・社会へ広がっていくのか体感してもらえる機会を目指しました。

NTT Designer Meetup 2023のキービジュアル。「ひろがるデザイン」をテーマに、昨年度から一貫したビジュアルの世界観を構築した

昨年度同様、NTTグループを中心としたデザイン実践者の方々に実際の活動事例をお話しいただきました。NTTグループ内に閉じたイベントであるため簡易的にはなりますが、ここからは各プログラムについてご紹介していきます。

NTT Designer Meetup 2023のタイムテーブル

OPENING REMARKS:NTT持株会社 島田社長「草の根活動でレベルアップして欲しい」

オープニングのご挨拶は、NTT持株会社 島田 明代表取締役にお願いしました。パブロ・ルビオ・オルダス著の「デジタル・ブランディング――世界のトップブランドがいま実践していること」を片手に、NTTグループがブランディングの好事例として紹介されていることをご紹介いただきました。また、顧客体験に関わる全てにデザインが絡んでいること。そして本イベントのような草の根活動を通して、NTTグループ全体のデザインスキルがレベルアップすることへの期待など、デザインに取り組んでいく私たちの後ろ盾となるような熱い言葉をいただきました。

NTT持株会社 島田 明代表取締役社長

NTTグループ内でのデザインの実践例を共有するSESSION & LIGHTNING TALK

セッションでは、15分の発表と10分の質疑応答を交え実施しました。
1つ目のセッションはNTTコミュニケーションズ デザインスタジオKOELの 福岡陽さん、舘賢太郎さんにご登壇いただきました。「習慣を変える。社会を変える。〜社会課題をビジネスとデザインで超えていく〜」をテーマにお客さまとビジョンを考えるワークショップからお客様の中期経営計画を共創した事例や、ヘルスケア分野の社会課題の解決を見据えた「みえるリハビリ」アプリのUI/UXデザインの事例まで、幅広いデザイン実践を共有していただきました。

(左)NTTコミュニケーションズ KOEL 福岡 陽さん
(右)NTTコミュニケーションズ KOEL 舘 賢太郎さん

2つ目のセッションでは、NTTデータ Tangityの山口 瑶子さんにご登壇いただきました。「未来シナリオから見える新しいサービスデザイン」をテーマに未来を洞察することの重要性と、具体的な未来シナリオを用いたデザインアプローチについてお話しいただきました。

NTTデータ Tangity 山口 瑶子さん

3つ目のセッションでは、NTTアーバンソリューションズ総合研究所の長岡 公一さんにお話しいただきました。データを活用したまちづくりの事例の紹介に加え、その事例の中の業務プロセスからデザインの必要性を感じた気づきについて、「『まちづくり×デジタル』の取り組みから見る、業務プロセスのリデザインの重要性について」というテーマでご登壇いただきました。

NTTアーバンソリューションズ総合研究所 長岡 公一さん

各セッションの質疑応答では、苦労したポイントや、デザインプロセスを導入していくためのコツなどの質問が寄せられました。NTTグループならではの課題感や乗り越える壁が回答され、参加者はデザインへの理解が深まるとともに、よりデザインを身近に感じてもらえたのではないでしょうか。

また、持ち時間5分で多種多様な事例を共有していくライトニングトークも実施しました。NTTコミュニケーションズ 津守由記子さんからは、事業部が取り組むユーザビリティ改善の取り組みとその重要性。NTTテクノクロス こころを動かすデザイン室の田中貴子さんからは、アジャイル開発にデザインプロセスを導入していくためのTipsを共有いただきました。

(左)NTTコミュニケーションズ 津守 由記子さん
(右)NTTテクノクロス こころを動かすデザイン室 田中 貴子さん

NTT社会情報研究所の林瑞恵さんからは、Well-beingな地域社会の実現に向けて、地域に密着したデザインリサーチについてご紹介いただきました。NTTコムウェアの花田伸治さんには、システム開発におけるUXデザイン活動の実践と困難について超現場目線で語っていただきました。

(左)NTT社会情報研究所 林 瑞恵さん
(右)NTTコムウェア 花田 伸治さん

NTT東日本 尾形哲平さんからは、睡眠を題材にした新たな事業の取り組みを共有いただきました。「スリープテック」という聞き馴染みのない言葉にみなさん興味津々でした。NTTドコモの伊美裕麻さんからは、デザイナーがいない現場でのデザイン活動を実現するために、あらゆるステークホルダーを巻き込み実践した事例をご紹介いただきました。NTTコミュニケーションズ のデザインスタジオKOELの塚原 章裕さんから社会インフラ企業が持つべきエシックスについて、デンマークでのリサーチを基にしたお話しをしていただきました。

(左)NTT東日本 尾形 哲平さん
(中央)NTTドコモ 伊美 裕麻さん
(右)NTTコミュニケーションズ KOEL 塚原 章裕さん

各社のあらゆるプロダクトを対象としたデザイン事例の共有によって、参加者の方々にはデザイン活動の幅広さを体感していただけたのではないでしょうか。

デザイン組織を率いるリーダーたちの実感を持った戦略が共有されたPANEL DISCUSSION

NTTグループ各社のリーダーによるパネルディスカッションも実施しました。今回のパネルディスカッションでは「デザイン活動でぶつかる壁と解決方法」をテーマに、組織としてのデザインの始め方や進め方、これからのNTTグループにおけるデザインのあり方についてディスカッションいただきました。

(左上)NTTコミュニケーションズ KOEL 福田 直亮さん
(右上)NTTデータ Tangity 村岸 史隆さん
(左下)地域創生Coデザイン研究所 木村 篤信さん
(右下)NTTテクノクロス こころを動かすデザイン室 天野 健太さん

ディスカッションの内容を簡単にご紹介します。2つの問いをたててみました。
1つ目は「デザインの意義を伝え、活動を推進していくために、まず何から始めればよいか?」という問いです。これに対しては、3つのポイントが語られました。

  1. 現場と全社の課題について、社内で視点を合わせる。
    事業戦略に対して、デザインで解決できることを組織長や経営層と合意しながら実績をつくる。また、現場の課題感についてのデザインの効果を、現場の社員と目線を合わせて理解を広げる。このボトムアップとトップダウン、両面の活動が重要。

  2. 社内のデザインの輪を広げる。
    1点目の活動の結果、得られたデザイン人材・協力者・理解者から、さらにデザインの活動の輪を広げて行きやすいように、コミュニティをつくる。

  3. 社内外にデザイン活動の実績を伝える。
    社内外問わず、より多くの仲間を増やすため、活動を適切に広げていくことが重要。社内での活動の位置付けや提供価値などブランディングを整えた上で発信すると、外部からのデザイン人材の獲得に繋がる。

2つ目の問いは「今後のNTTのデザインはどうあるべきか?」でした。こちらの内容も3つのポイントでご紹介します。

  1. 社会的責任を持っているからこそ取り組むべきデザインの対象がある
    NTTは規模感からも事業活動に社会的責任が伴う企業。そのため、サステナビリティなど地球規模の課題に取り組むべきであり、それらの活動が局所的ではなく、全体感を持って大きなシフトを生み出すため、その有り様を示す理念やビジョンが重要になる。

  2. 理想や理念を実現するための事業を構想する
    抽象的な目標を掲げるだけでなく、事業性も両立すべき。SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)のような新たなビジネスモデルを構築する必要がある。そのため、あらゆる企業と手を取り合い、構想するためのアプローチを作ることが重要。

  3. 社員一人一人を巻き込み、問いかけること
    上記の2点は経営層や幹部で語られることが多いが、現場の社員の理解がなければ実現には至らない。社員目線で、皆の心を動かすような問いを作り、投げかけていくことがデザインに求められる。

デザインを組織のなかでどう広げていくのか、具体的なエピソードに加え、これからのNTTに必要となるであろうデザインの対象や持つべき視野の広さ、未来へ向けてチャレンジしていく領域の広がりなど、テーマである「ひろがるデザイン」を大いに感じられた時間でした。

会場の一角ではNTTグループ内で活動しているグラフィックレコーディングチーム「NGRA」によってグラレコが実施されていた

株式会社ビービット遠藤さんによるKEYNOTE:顧客との関係は、売り切り型から長期循環型へ

株式会社ビービット 代表取締役 遠藤 直紀さん

各社のあらゆるデザインの実践事例が共有された最後に、それらのデザイン活動がなぜ実施されているのか。その理由がストンと懐に入ってくるようなお話をしていただきました。参加者からも「実例がわかりやすく、考え方の根幹にあたるようなヒントを多くもらえた」「CXの意味合い、重要性、取り組み方について分かりやすくかつ納得感が深まる形で紹介された」など、なぜ取り組むべきなのか、デザインやCXへの根本の理解に対するコメントが数多く寄せられました。

デザインを33万人のNTTグループ社員に広げたい

各社の多種多様なデザインの実践事例が共有され、デザイナーではない方々にも、デザインと関わる方法があることを体感していただけたように思います。参加登録者数は1000人を超え、デザインの意義をさらにNTTグループに広げられたのではないでしょうか。

まだまだ草の根的であるNTTグループのデザイン活動。ですが、このような活動を続けることで、33万人のNTTグループ社員にデザインが広がり、島田社長のお話にもあがったCXの向上に誰もが取り組める組織になるのではないでしょうか。
デザインの浸透に取り組むことは、より多くの社会課題に対して、長く愛されるサービスを生み出せる様な企業への成長に繋がると思います。NTTグループとして、KOELとして、より大きなインパクトを生み出していきたいですね。

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