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「Dappi」名誉毀損裁判当事者尋問 2

甲当事者尋問(主尋問)

(被告訴訟代理人が乙第2号証の陳述書について甲の話したとおりに記載されていること、誤り、不足している部分がないことを確認した。)
被告代理人「会社ですが、部署が企画制作部、システム開発部、業務管理部で構成されているということでよろしいですか。」
甲「はい。」
被告代理人「令和2年、令和3年の組織も同様ですか。」
甲「はい。」
被告代理人「それぞれの部署の業務についてお聞きします。企画制作部はどのような業務を担当していますか。」
甲「ウェブサイトの制作などを行っています。」
被告代理人「システム開発部は。」
甲「システム開発の依頼を顧客から受けて開発する部署です。」
被告代理人「業務管理部は。」
甲「総務部のような部署です。」
被告代理人「乙の補佐する役割ですが、会社ではどのような役割分担となっていたのですか。」
甲「私が経営全般、営業などを担当、乙が経理などを担当しています。」
被告代理人「甲と経営に関する相談をすることはありましたか。」
甲「銀行等の交渉などで相談することはありました。」
被告代理人「システム開発部や企画制作部がツイッターなどのSNSを作る業務は行っていましたか。」
甲「業務として行ったことは現在も令和2年、3年当時もありません。ただ、企画制作部がSNSをテスト的に投稿してみたことはありました。その時は、投稿したらどのように表示されるのかということについてクローズドでチェックしていたと思います。ただ、社として運用することはありませんでした。」
被告代理人「社としてSNSで発信することはありましたか。」
甲「ありません。」
被告代理人「アカウントを所持しているということはありますか。」
甲「ありません。」
被告代理人「本社の従業員は何人ですか。」
甲「約15人ぐらいです。」

注釈)ここで甲の回答を詳しく解説します。被告側の準備書面では株式会社ワンズクエストの茅ヶ崎市のドッグイベントクラブ事業部の従業員を除き、15人が勤務していると述べています。その内訳は、業務管理部で3人、役員が2人、企画制作部とシステム開発部で10人でそのうち9人が正社員、1人がパート従業員となっています。原告訴訟代理人が業務管理部に3人いる前提で尋問を行っているのは、この準備書面の内容に基づいているということになります。

被告代理人「勤務形態はどうなっていますか。」
甲「従前からフレックスを採用していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってテレワークを進め、出勤するかどうかは従業員の裁量に基づいています。」
被告代理人「フレックスについては当初からですか。」
甲「はい。」
被告代理人「何時間出社するかも最良ですか。」
甲「はい。」
被告代理人「出社している従業員の割合はどれぐらいですか。」
甲「日によってバラバラですが、2割ぐらいです。」
被告代理人「2割というと3人ぐらいですか。」
甲「はい。」
被告代理人「あなたの出社の頻度はどれぐらいですか。」
甲「週1回から2回ぐらいです。」
被告代理人「被告準備書面(3)2頁を示します。この準備書面にはレイアウト図が掲載されていますが、会社の配置どおりですか。」
甲「はい。」
被告代理人「令和2年や令和3年も同じですか。」
甲「はい。」
被告代理人「執務室に3人とか4人とかいた場合に席から他の従業員の仕事は見えますか。」
甲「いいえ。デスクの上にディスプレイが2台設置されており、周りを見回すことができません。そのディスプレイは顔の高さぐらいあります。」
被告代理人「それでは他の人の仕事内容はわからないということですね。」
甲「聞いたり席まで行って観ないとわからないと思います。」
被告代理人「あなたはツイッターをやっていますか。」
甲「いいえ。」
被告代理人「投稿したことはありますか。」
甲「ありません。」
被告代理人「画像や動画の投稿の方法はご存じですか。」
甲「たぶんできないと思います。」
被告代理人「問題となっている投稿を知ったのはいつですか。」
甲「令和3年の4月上旬頃だったと思います。」
被告代理人「NTTコミュニケーションズから意見照会が届いたのが4月13日ですからそれ以降ではありませんか。」
甲「そうでした。」
被告代理人「NTTコミュニケーションズの意見照会で投稿があったことを知ったということでよろしいですか。」
甲「はい。」
被告代理人「知ってからどういう行動をとりましたか。」
甲「中身を確認してどういうことか調べてみました。」
被告代理人「理解することはできましたか。」
甲「よくわかりませんでした。」
被告代理人「この調査で投稿の内容を知ったというわけですか。」
甲「はい。」
被告代理人「この投稿について調べましたか。」
甲「はい。聴き取りで調べました。」
被告代理人「誰が投稿したか心当たりはありましたか。」
甲「いいえ。」
被告代理人「聴き取りの結果いかがでしたか。」
甲「早い段階で『自分がやった』と聴き取ることができました。」
被告代理人「その後どのように話しましたか。」
甲「業務時間内に業務外の投稿を行っていたことを指摘し、厳重注意としました。」
被告代理人「令和3年11月に減給の懲戒処分をしたわけですが、半年以上そのままであったことに不自然であるとの指摘があります。どういう経緯だったのですか。」
甲「令和3年4月から10月までの間についてですが、初動の段階で事態の重さを理解しておらず、通知等がなかったためそのままにしていました。」
被告代理人「NTTコミュニケーションズからの意見照会が4月になされたわけですが、その回答の対応はあなたが行いましたか、それとも投稿者が行いましたか。」
甲「投稿者が行いました。」
被告代理人「投稿者は弁護士を頼みましたか。」
甲「はい。」
被告代理人「その弁護士とはどのように関わりましたか。」
甲「挨拶したぐらいです。その時にテクニカルな事案であるとお聞きしたので、報告を待っている状態でした。」
被告代理人「ご挨拶というのは顔合わせのような感じですか。」
甲「はい。」
被告代理人「弁護士からどのような説明がありましたか。」
甲「問題がないと聞きました。」

(その後被告訴訟代理人の質問に原告訴訟代理人のフクダ弁護士から誘導尋問であると異議申し立てがあり、裁判長が認めて質問が替えられた。)

被告代理人「半年後の事態について説明してください。」
甲「令和3年10月頭ですが、本社事務所に記者が多数詰めかけており、事の大きさを自覚しました。」
被告代理人「具体的には。」
甲「自宅にも記者が押しかけ、業務に支障が出る状態でした。電話は鳴りやみませんでしたし、インターフォンもずっと鳴っていました。ネット上でも大きな騒ぎになっていました。」
被告代理人「業務が進まない状態となったわけですか。」
甲「はい。」
被告代理人「乙第2号証④の別紙1を示します。この画像はテレビ番組TBS『報道特集』、テレビ朝日『モーニングショー』ですね。」
甲「はい。」
被告代理人「乙第2号証④の別紙2を示します。これは有田芳生参議院議員のツイッターの画像ですね。有田芳生参議院議員が会社のビルの写真をツイッターにアップしたものですね。」
甲「はい。」
被告代理人「この画像で被告の会社を特定することは可能ですか。」
甲「多分可能だと思います。」
被告代理人「乙第2号証④の別紙3を示します。これはグーグルマップの『口コミ』ですね。」
甲「はい。」
被告代理人「会社を特定されて誹謗中傷されたというわけですか。」
甲「はい。」
被告代理人「乙第2号証④別紙4を示します。これはどういうものですか。」
甲「会社のウェブサイトのお問い合わせフォームに届いたものです。様々な誹謗中傷と脅迫にあたるような通知がなされました。」
被告代理人「10月16日から連日このようなものが届いたのですか。」
甲「はい。」
被告代理人「この通知は脅迫罪や業務妨害罪にあたるようなものもありますが、どのように対応しましたか。」
甲「対応しませんでした。」
被告代理人「対応することによってネット上でさらに大きな騒ぎになることを懸念しました。」
被告代理人「被告は投稿者が誰か明らかにすることを拒んでいますが、なぜ明らかにしないのですか。」

注釈)この民事訴訟においては裁判所から文書提出命令がなされ、乙第1号証給与明細の投稿者の氏名部分を明らかにするように命ぜられています。文書提出命令を拒否するということは、その文書に対する相手方の主張を正当なものと認めるという制裁がなされるため、被告に相当不利な事実認定がなされるおそれがあります。

甲「今回の事案で会社や私は多くの嫌がらせを受けました。そういう状況に仲間である従業員であるその方を追いやるという判断は私にはできませんので明らかにすることはできないと思っています。」
被告代理人「個人情報などがさらされたことでどのようなことがありましたか。」
甲「自宅前などで不審者が待ち構えているというようなことがありました。」
被告代理人「令和2年10月25日の投稿はあなたがなしたものですか。」

注釈)これは民事訴訟の請求原因である「Dappi」アカウントの投稿

甲「いいえ。」
被告代理人「他にどのような投稿があったか確認されましたか。」
甲「はい。」
被告代理人「これらの投稿に業務との関りはありますか。」
甲「ありません。」
被告代理人「仮にこのような投稿を誰かにやらせることで会社に何らかのメリットがあったりしますか。」
甲「ありません。」
被告代理人「終わります。」