天使と悪魔が争うように、「人生に無駄なことなどひとつもない」陣営と「いや普通に無駄なこともあるっしょ」陣営も永らく互いを罵り合い言い争って来た訳であるが、それ見た天使と悪魔が口を揃えて「そんなことで言い争うのが一番無駄」と言ったことで一応の解決を見たとか見ないとか。

そもそも人生に意味はあるのかという話にもなるし、無駄にこそ最も価値があるのではないかという話にもなり得るし、我々は兎角二項対立で物事を捉えがちではあるものの実際には世界はグラデーションである。

無駄毛にだって生まれ持った役割はあるし、金をかけてVIO脱毛をしている男はただ積極的に尻の穴を舐めて欲しいだけのエロ河童です。

歴史の教科書に載りたいという願いも昨今聞かなくなったのは自分が載った歴史の教科書が刷り上がる頃にはとっくにくたばっているからに他ならないが、私たちにとって最も重要なのは結局のところリアクションの知覚であるということはいつか誰かと何かを考える際の参考になる気はしないでもない。

毎朝仕事行く前に寄っていたカフェが潰れた。

これがどんなに大変なことかあなたに分かりますか。

典型的な魚座のＢ型のわがまま長男であるところの私はとにかくルーティンを崩されるのがダメ中のダメ。

電車一本逃して5分予定ズレるだけでもう会社休んじゃうのが私。

それが朝飯食う場所を失った訳ですから、主観で捉えれば35年ローンを組んだ持ち家がタバコの不始末で燃え落ちたのと変わらん訳です。(必ず入ろう火災保険)

それからの私は文字通りあちらの駅をこちらの駅をウォーキングデッドしましたよ。

乗り換えの駅を変えてみたり、入ったことのない路地裏を歩いてみたりしながら、どこかに良いカフェはないか、400円以下で美味しいパンとコーヒーとあと何か気の利いた何かを出す店はないものかと。ないんだよな。

「大切なものは失って初めて気づく」という国民的説教は、怒り狂った嫁に書きかけの論文データが入ったPCを思い切り床に叩きつけられたあの冬に履修済みだったはずなのだが、やはりどれだけ文明が発達しても人間とはそもそもからして生まれながらに罪を背負った白痴であるということなのでしょうか、なかなか良いカフェを見つけることは叶っておりません、夏。

仕方がないので大人しくロッテリアでチーズバーガーなどを食べております。

こうしてまた不健康な人間が一人出来上がる。

ルシフェルの陰謀という訳ですか。

いわゆる漢字ドリルや計算ドリルのような類のものには限りなく多角的な意義が内包されているがそれをわざわざ説明する者はほとんどいない。

それはその意義、あるいは意図性と言っても差し支えないが、それを汲み取れる「ようになる」こともまた目的のひとつであるからだろうが、種明かしを受けた後ではもう手品を楽しく鑑賞することは難しいとかそういう話なのかもしれない。

ドリルは正しく解かねばならぬと思っている人間にとっては雑に解かれたバツだらけのドリルは無駄の象徴になるかもれないし、問題をひとつひとつ丁寧に解いていくことが人生の全てであるというような顔をして生きている人間が稀にいるが同じ問題を雑に解いた者の方が社会的に良い評価を受けた時に他所では絶対に見られないような面白興味深い表情(かお)を見せてくれるのでこれからも注視して行きたい、という話なのかもしれない。

さて、私たちはAIとの共存を本気で考えると共に、如何にしてAIからの「判定」を掻い潜るかという生存戦略を本気で考えねばならぬ時期に差し掛かっているようである。(差し掛かっていると認識した時点で既に腰まで浸かっている)

教育学を齧ったことのある人間にとっては常識中の常識であるが、教室の中では教員の監視の目を掻い潜れる「余白」にこそ計り知れない価値があり、それは教師も生徒も人間であり完璧でないからこそ実現する絶妙なバランスの中でのみ成立していた珍環境であった訳です。

それがここ数週間の内にニュースとして流れて来たものを読めばやれ生徒の居眠り監視AIだの早期退職者判定AIだのと煩喧しいことこの上ない。

いつだって「こんなのあったら良いよね」が世界を変える。

それはもちろん良い方にも悪い方にもである。

そこが私たち人間が人間である所以の一番可愛いところでもあるのだが、私たちは自分自身の夢や希望が魂の成長に繋がっているのか堕落に繋がっているのかをほぼ認識できない。(できていたらこんなことにはなっていない)

それが仕様だしそれが十字架だ。

この行為に意味はあるのか、この行為の果てに俺の魂はどこへ向かうのか…

そんなことを考えながら今朝もシャワーを浴びて風呂場から出たら、私の喧しい生活音で目覚めてしまった娘(天使)が洗面所の壁にもたれたまま半目で私を見ている。

とりあえず一旦無視して(話しかけても寝惚けているのでどうせ返事はない)、身体を拭いてパンツを履き、髭を剃って、ドライヤーで髪を乾かしてからビッチビチに整髪料をつけたらようやく人前に出られる様相となった。

これが社会人の身だしなみってやつよ。

こう見えてマナー講師もやったりするんですから。

「どう？かっこ良くなった？」

最初から最後までずっと見ていた娘に尋ねると、

「髪濡れてる時の方がかっこ良かった」

だってさ。

はい今俺がやった行為全部無駄〜〜！！！！

終わり！！！！！！！！

令和5年8月7日
草々