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私の税理士事務所敗戦記 情けは人のためならずは本当か?EPISODE15

リーマンショックのころ、ある顧問先が破産しました。

比較的顧問料が高かったので100万円以上の未収があり、結局全額貸倒れました。

その社長も自己破産されました。

社長には身寄りがなくアパートを借りるにも保証人になってもらえる人がないので、途方にくれて私に相談の電話がありました。

おりしも、その頃わたしは、ある著名コンサルタントの先生のセミナーを受講していました。

その先生から、クライアントに教えるのではなく、一生寄り添うつもりで支援するということを学びました。

さらに、「報酬はお金ではなく、感動の涙」とも教わりました。

その社長から相談の電話を受けたとき、「ついに、その時がやってきた!」と心の中で快哉を叫びました。

素直さだけがとりえの私です。

「社長、なんなら私がアパートの保証人になりましょうか?」

しばらく絶句されたあと嗚咽が聞こえてきました。

「そんなつもりで電話したんじゃなかったんです。お支払いもできていないし・・・」

元社長も今は元気に暮らされているようで、3年に一度のアパートの更新の時に電話があります。

実は、その頃の私と言えば、敗戦記のEpisode5に書いたように私自身がドツボの状況でした。

件の著名コンサルタントの先生は感動の涙を報酬に中小企業の経営者支援をされていましたが、よく考えてみたら、一方で1回の講演料は70万円程もらわれていたり、大企業のコンサルティングをされていたので私とはキャッシュフローが全然異なるのでした。


その後も、駆け込み寺か、赤ひげ先生のように税理士が逃げ出したようなお客さんがやってきたり、貸倒れを食らったりしました。

なかなか断れない性格なのでさすがにこれではやばいと思って今は一切税理士として新規のお客さんをとらないことにしています。
 
情けは人の為ならずということわざがありますが、その時かけた情けが自分に戻ってきているのかどうか今もって全く分かりません。

ただ出会う人には恵まれていて、今もいい人達に囲まれています。顧問料を結局払えなかった人たちも皆さん本当に良い方ばかりでした。

私欲があんまりないと騙そうとする人も寄ってこないようです。

私のささやかな夢は、私が死んだあと

娘たちが、知らないおじいさんから

「あんたのお父さんには、昔世話になったんやで。」

と、声をかけてもらえることです。。

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