4-お勧めの本19

【本】杉浦真由美『ナースのための教える技術』:ナースによるナースのための教え方

木曜日はお勧めの本を紹介しています。

今回は、杉浦真由美『ナースのための教える技術』(メディカ出版, 2019)を取り上げます。

■要約

教えることは決して難しくない。誰でも「教え上手」になることができる。インストラクショナルデザインの原則を看護現場の具体的な事例を使って無理なく学ぶことのできる本。

■ポイント

この本は私のゼミで博士号を取得した杉浦真由美さん(札幌医科大学)の最初の本です。杉浦さんはすでに雑誌で連載記事を書いていましたし、同じ出版社が提供しているキャンディリンクというeラーニング教材の制作もしていましたので、初めての本でありながら、とても読みやすく、完成度の高い本になりました。

インストラクショナルデザインの本ですから、この本の内容もよくデザインされています。まず、マンガによる短いイントロから始まります。マンガの強みは、解決すべき問題とそれを取り巻く状況をすばやくイメージで伝えることができる点です。このマンガをさっと読むことで何が問題なのか、そしてそれに取り組むための動機づけがされます。

章の文章もインストラクショナルデザインの原理や理論を伝えながら、常に具体例を挙げることで読者が具体的に使えるように書かれています。そして、ところどころに「ワークのレシピ」が差し込まれています。これは、理論として扱った内容を、実際に手足や頭を使ってやってみようというものです。1人でもグループでも、このワークをやってみると抽象的な理論が具体的にどういうことなのかを実感することができます。その結果として内容が身につき、応用できるのです。

章末には「確認テスト」がつけられています。これは成績をつけるものではなくて、自分が分かっているのかどうかを自分で確認するためのものです。成績ではないので気楽にできますし、あやふやな知識を確実なものにすることができます。こうしたところがよく行き届いた本です。

看護職に限らず、対人援助に関わる人たちに広く読んで欲しいと願っています。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。