見出し画像

【教える技術】#03 けん玉で学ぶスモールステップの教え方

火曜日は「教えること/学ぶこと」のトピックで書いています。早稲田大学エクステンションセンター中野校での「教える技術」講座に並行してその内容を連載しています。定期購読者が増えるたびに、感謝を込めてその日の記事を全文公開にしています。【表紙画像はうたたねさんの作品です】

前回は、運動技能の上手な教え方の3つのコツを説明しました。これは運動技能に限らず、あらゆる技能を教えるときの、ゴールデンルールとも呼べるものです。

・スモールステップで課題を出していく
 (スモールステップの原則)
・活動に対してすぐにフィードバックを返す
 (即時フィードバックの原則)
・相手のスキルに合わせて挑戦の難易度を変える
 (挑戦/スキルレベルの原則)

この写真はエクステンションセンターの授業の様子です。ここでは運動技能の教え方の練習として、けん玉を使いました。4人グループの中で、けん玉をやったことのない人を選んで、その人にけん玉の技を教えてみようというワークです。写真の中に、けん玉をやっている人を見つけることができます。

今回は、けん玉の技として「もしかめ」をゴールにしました。これは入門段階の技の1つです。まず玉を大皿に乗せ、続けて中皿→大皿→中皿→大皿→……というように玉を移動させていく技です。「もしもし亀よ」のリズムに合わせて技を進めていくので「もしかめ」と呼ばれています。

この技を教えていくわけです。とはいっても、けん玉をやる人は初めての人ですから、最初の玉を引き上げて大皿に乗せるという最初のステップだけでも大変です。何回やってもなかなか乗りません。

実は、最初のステップとして大皿に乗せるという目標を設定することがよくないのです。これはスモールステップではないからです。指導者が「まあ、やってみて」といってやらせてみると、案の定一回では乗りません。何回も何回もやってみても乗りません。そのうち変な癖がついてしまい、このあとその癖を直すのに苦労します

ですから、大皿に乗せるというステップをさらにスモールステップに分解することが必要です。まず、姿勢とけん玉の握り方を教えることです。大皿に乗せるために最適な握り方がありますので、まずそれを教えるのです。これは失敗する余地がありません。ですからスモールステップなのです。

姿勢も同様です。足をピンと伸ばした直立した姿勢ではうまくいきません(初めての人はそういう姿勢をとりがちです)。ですので、足を適度に開いて、膝を少し曲げておくという姿勢を教えます。これも説明すればすぐにできますから失敗する余地がありません。

このように入門期では必ず成功するような形で、ステップを細かくしておくことが大切なのです。これがスモールステップの原則です。教える人は、自分にもそういう入門期があったことを忘れてしまっています。そのときの入門者の不安な気持ち、そしてできたときの喜びをもう一度思い出すことが、教え上手になるためのコツです。

マガジン「ちはるのファーストコンタクト」をお読みいただきありがとうございます。このマガジンは毎日更新(出張時除く)の月額課金(500円)マガジンです。テーマは曜日により、(月)アドラー心理学(火)教えること(水)フリーテーマ(木)お勧めの本(金)連載記事(土)注目の記事(日)お題拝借で書いています。ご購読いただければ嬉しいです。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。