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学生服リユースショップさくらや研究【ウィズ・コロナの店舗運営編その2】

 新型コロナ感染症の拡大に伴う今年2月の学校の休校を受けて、馬場さんはさくらや高松店に「ちいさなとしょかん」を開設しました。学校や図書館で本を読むことができなくなった地域の子どもたちが気軽に本を借りたり読めたりできるように、さくらやの店先に作った空間です。置いてある本は、企業や、子育てが一段落した家庭から「さくらや」に寄贈されたものです。

●いつでも借りていい
●いつでも返せばいい

がコンセプト。

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 雨よけのひさしはありますが、屋外に置いてあるのでどうしても砂ぼこりが本に付きます。そのため、ハタキを置いて本を見に来た子どもたちにはたいてもらう仕組みです。

 散歩途中の親子連れや、近所の子どもたちが「ちいさなとしょかん」に立ち寄って、絵本を探す光景が見られました。「ちいさなとしょかん」は、地元香川のテレビ局のニュースでも取り上げられました。香川県以外のパートナー店舗にも、この取組みが広がったそうです。

 緊急事態宣言が終了し、5月にお店を再開した後も、県をまたぐ移動は自粛を要請されていたため、馬場さんは以前のようにパートナー店舗に訪問してアドバイスすることができませんでした。

 そこで、希望するパートナーを対象に、営業や売上アップの方法を講義するオンライン研修を行うことにしました。講師は、馬場さんが起業する前の生命保険会社時代に上司だった「鬼課長」で、現在はフリーランスで企業向けの研修講師をしている吉川修司さんです。

 馬場さんがいまだに「課長」と呼んでいる吉川さんは、生命保険会社時代の馬場さんが営業成績が上がらず弱気になって退職を考えていた頃に、コーチングをして馬場さんの「スイッチ」を入れ、その後は社長表彰を受けるまでに営業成績を上げたのだそうです。

 馬場さんが当時受けていた研修の一部でもいいからパートナーに習得してもらいたいと吉川さんに話を持ちかけて、研修を実施することになりました。

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 オンライン研修は全8回。子育て中だったり家庭の用事をしながら店舗を運営しているお母さんパートナー(さくらやオーナー)たちが、継続して8回受講したことが馬場さんには驚きだったそうです。受講料は1回500円。講師料の不足分は馬場さんが被ってのディスカウント料金でした。受講したパートナーたちからは、研修で学んだことの好意的な評価のほかに、他のパートナーと交流できたことが良かったという感想が多く寄せられたそうです。情報共有して自分のお店づくりに役立てたかったのだろうと馬場さんは言います。

 このオンライン研修をきっかけとして、今では「月イチさくらやオンライン研修&ミーティング」を開催して、毎回テーマを決めて全国のパートナーたちが(オンラインで)集まっているそうです。

「絶対に参加しなければならない」ではなく、子供の用事が終わった後だったり、子どもの送迎途中だったり、用事の途中だったり、「前回は無理だったけど今回は参加できました」だったり。

無理しなくていい
自分たちのペースでできることを考えていく

 それが、「さくらや」なのだそうです。

 また、新規に「さくらやパートナー」になることを考えている人向けの相談会も開催できなくなったので、馬場さんは「さくらやオンライン見学ツアー」を思いつきました。Zoomを使って「さくらや高松店」の店内を案内しながら解説するやり方です。馬場さんがこれを思いついたのは、パートナーのオンライン研修をやってみて、

オンラインがあれば
どこでも繋がる!

と実感したのです。

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 そして8月には、高知県の四万十町で行われた「地域イノベーター養成講座」で講師を務めた馬場さんは、リモートでの講義を行いました。以前は現地に赴いて講義したこともある馬場さんは、リモートよりもやはりリアルで話したいという思いが強まったようでした。

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 このように、コロナ下で制約がありながらもできる範囲で活動を続けてきた馬場さんですが、さくらやの営業に関してダメージが大きかったのは、4月から5月にかけて制服の買取り点数が例年よりもかなり少なくなってしまったことだそうです。

 この時期に買い取った制服が、来年3月から4月の繁忙期の商品になります。新品の制服やランドセルを購入するのが困難な家庭は「さくらや」を頼りにして来店するのですが、商品が集まらないと、こうしたニーズに応えられなくなってしまうのです。

 そこで今、馬場さんがもっとも力を入れているのが、学生服回収ボックスの設置のお願いだそうです。制服が集まれば、クリーニングや刺しゅう取りで地域の障がい者就労支援施設や高齢者の工賃につながり、そして商品として割安で販売されてお母さんたちの笑顔につながる、と馬場さんは言います。

 企業や学校、さらには小売店まで、回収ボックスを置いてもらえる場所を求めて、さくらやのスタッフが動き回っています。

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 地方の町の外れにある13坪の小さなお店でも、地域の人たちと一緒にできることを続けることが、持続可能な地域社会につながると信じています。さくらやでは、Next New Normal 時代を生き抜くために、現場を大事にして、お母さんの声を聞きながら、支援をしていきたい。

と馬場さんは言います。

 最近は、毎日のように全国のママオーナー(パートナー)たちから電話が来るそうです。メールのやり取りだけでは分からないことも多く、「みんな頑張っているんだ!」と思うと、馬場さんも「コロナに負けんぞ」と勇気をもらえるのだそうです。



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