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【対談】「iichico」「STAND BY ME」「Nagi」…アートディレクター・二井賢治郎が“刺激を受けたデザイン”を語る

かくしごと代表の編集者・黄孟志が業界を超えて様々なクリエイターと対談する本シリーズ。第2回は、株式会社Standbyの代表でアートディレクターの二井賢治郎さんと「デザイン」をテーマに話しました。

二井賢治郎
株式会社Standby代表取締役社長。ファッション・ライフスタイル・ラグジュアリー領域の総合演出を手掛けるアートディレクター。 国内外の受賞歴多数。
https://standby-inc.com/

「どんだけシンプルで、どんだけかっこいいか」

 二井さんとは表参道&原宿のローカルメディア「OMOHARAREAL」のアートディレクターと編集長として出会って、その後も表参道ヒルズさんの特設サイトや館内ポスター制作など、様々な形でご一緒させていただいています。

表参道ヒルズに掲示中の館内ポスター

付き合いは長いのにあまり聞いたことなかったのですが…まずは、二井さんがプロになる前の時代に影響を受けたデザインなどあれば教えてください!

二井 プロになる前に最も影響を受けたのは、やっぱり原研哉さんですね。無印良品の広告を見て「こういうことだよな」と思ったのは覚えてる。デザインの考え方というか、ロジックというか。デザインがどれだけ難しいことなのかを、誰よりもわかりやすく教えてくれた人って感じですね。

 二井さんってファッション系、特に裏原とかストリートとか、そっちがルーツだと思ってました。

二井 勉強という視点では原研哉さんですけど、ルーツは完全にストリートです! 中学生の頃からずっと変わらず、アメカジや渋カジ、90年代、裏原ストリートに没頭して、今もなお厨二です(笑)。でも今はそれがハイブリッドで仕事に活きてきてると思ってます。 

 ちなみに僕は学生時代、中村勇吾さんが手掛けたWonderwall®(片山正通さんの空間設計会社)のサイトに衝撃を受けました。片山さんのWORKSがグリッド上に無限に並んでて、カーソル合わせた部分が立体的に飛び出てくる、という。

二井 僕も黄くんと同じ建築デザイン専攻だったんですごく分かります。ユニクロが世界進出し始めて、佐藤可士和さん、片山正通さん、中村勇吾さんとかのチームでリアルな空間とデジタルをがっちゃんこしたような面白いクリエイティブもどんどん生まれてた頃。

 最高のチームですね。

二井 その後もしばらくは予算かけまくってリッチなウェブサイトが当たり前みたいな時代が続いたけど、ある時期からデバイスも増えてきた影響もあって「デジタルならではの斬新な動き」みたいなのはスマホで見づらいしイケてない…って感覚が生活者にもクライアントサイドにも明確に芽生えたと思います。

 それはデザイナーさん的にはどうなんですか?

二井 稼ぎにくくはなったけど、楽にもなった(笑)。結局デザインの根源って、どんだけシンプルで、どんだけかっこいいか。それを追求する執念仕事であるということに辿り着くのかなと思ってます。

映画「STAND BY ME」のアメリカ版ポスター

 プロになってから影響を受けたのは?

二井 やはり極めてシンプルに削ぎ落とされたメッセージ性のあるものに惹かれるんで、国内でいえばiichikoの広告。「デザインはこれだけでいい」って教えてくれます。今でも自分のデザインしたものが「シンプルすぎないか? これでいいんだっけ」と迷った時に、安心させてくれます(笑)。デザインする量は関係ない、デザインの存在は弱くていい。この意志の強さが、一番デザインに必要なんだと。

三和酒類株式会社「iichico」ポスター(2015年)
https://www.iichiko.co.jp/design/poster/?year=2015

 二井さんは国内だけでなく、海外の事例もたくさんインプットしてそうですよね。

二井 海外なら、今でも一番参考にするのは映画の広告です。配色、画像のトリミング方法、フォント、余白のバランス、世界観。1本の映画の中にある魅力って数えきれないけど、それらを1枚のメインビジュアルにする行為って、iichikoの広告と同じような意志の強さを感じるんですよね。

 言われてみると、二井さんのデザインって映画のポスターっぽいかも。

二井 ちなみに自分の中でデザインもファッションも原点は「STAND BY ME」

自分の会社名もここから拝借しましたし、昔から白Tの袖を必ず折って着ているのもクリス(リバー・フェニックス)の影響です(笑)。

 Standbyさんの由来、初めて知りました!! 「STAND BY ME」のポスター、余白多いし、人影小さ…(笑)。でもそれが効いてますね。

二井 あと、ジブリの海外版もめっちゃおしゃれ。

 僕が知ってるポニョと印象違います(笑)。てかこの映画広告のまとめサイトめっちゃいいですね。もっと他のポスターも見たくなってきました。

二井 でしょ? 映画広告って、実はすごいデザイナーが絡んでるってこと多いから、参考になるんですよ! ちなみに僕らも2つほど映画広告作ってます。

日本・ベトナム共同製作映画『海辺の彼女たち』(2020年)

新世代の女性デザイナーに注目中

 では、最近いいなと思ったデザインってありますか?

二井 特定の作品ってことでもないんですけど、若手の女性デザイナーさんに面白い方が多いなと感じてはいます。インディペンデントな感じで、自分流にやってそうだけど、バキバキにイケてるなー、みたいな。今まで僕らが学んできたデザイン文化とは明らかに違うデザインジェネレーションを感じます。こういう方たちと組めたら最強だなと勝手に思ってます(笑)。

 特に注目してる方などいます? この対談をきっかけにぜひコラボしてほしいです!

二井 誰目線やねんという話ですが、たとえばJURI OKITAさんとか。Nagiとかでもう十分活躍されてますけど。独創的なんだけど、ちゃんと整理・計算し尽くされてますね。

あと、AYUMI TSUCHIDAさんという方も気になってます。Sun and Soilのクリエイティブに驚かされたんですけど、ロゴだけでブランド全体を牽引する力があって、素晴らしいです。

まだまだたくさんいるんですけど、総じて言えるのは、僕なんて最近やっと会社のスタイルみたいなものが確立されてきたけど、今の若手は、クライアントワークでもしっかり直球で自分を表現しきってるなーという軽い憧れを感じるってことですね(笑)。

 たしかに、SNSでアウトプットして世の中からのフィードバックをもらいやすい時代ですし、「多様性」というワードが重要視される流れもあって、あらゆる領域のクリエイターが自分らしさを出しやすいいい時代ですよね。

二井 「若い人すごい」って話で終わるの、なんか良くない気がするけど、まぁいいか(笑)。ありがとうございました!

構成:鎌田あゆみ(かくしごと広報担当)

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