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楽しさよりも正しさ インバル/都響の「ロマンティック」

サントリーホールで都響定期を聴いてきた。

ウェーベルン:管弦楽のための6つの小品 op.6(1928年版)
ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 WAB104 《ロマンティック》(ノヴァーク:1874年第1稿)

指揮:エリアフ・インバル
管弦楽:東京都交響楽団

インバルを聴くのは2回目。

前回は2008年の都響のプリンシパル・コンダクター就任披露公演のマーラー「千人の交響曲」だった。

サントリーホールの1階席最前列(チェロの首席の前)で「千人」🤣

音の洪水でカオス状態😂

名演だったとは思うが自分には馴染みのない曲なので、インバルの良さがハッキリわかったかというと微妙。

14年ぶりのインバルだった。

インバルは1936年生まれ。ちなみにデュトワも同い年。
86歳コンビの両者、今となっては「最後の巨匠」だろう。

ブロムシュテットは別格として、インバルもデュトワも一時代を築き(フランクフルト放送響とのマーラー&ブルックナー、モントリオール響とのフランス音楽)、常に第一線で活躍してきた。紛れもない巨匠だ。

ベルリン・フィルやウィーン・フィルからは呼ばれないまま終わるのかもしれないが、昔ながらのカリスマタイプの両者が客演したら面白いだろうな。

さて、ウェーベルン。

振り始めから特別感がなかった。

ブロムシュテット/N響のグリーグやニールセンは、指揮者への敬慕の念が痛いほど伝わってきたが、31年共演しているわりにはそうした特別な緊張感は感じとれなかった。

ブルックナーよりウェーベルンの方が面白く感じた。
聴き慣れてないから新鮮に感じたのだろう。

金属製の薄い板(鐘の代わり?)をこすって不気味な音を出したり、息を潜めて耳をそばだてる場面も多かった。

ただ、気持ちのよさそうな寝息の御仁🤣とプログラマー(プログラム読む人)が。

演奏中のプログラムやめてくださいね。
美術館でポケモンGOやってる人みたいです。

何しに来たの??

って毎回思います😂

緊張感を強いられる静寂が多発する曲だったが、寝息が聞こえるのでそこまでの緊張感はなく、何か不完全燃焼のまま最後を迎えた。

新ウィーン楽派は生であまり聴いてこなかったので、これから聴ける機会を増やしたい。

休憩中に係員が1階をゆっくり歩きながら何か言ってると思ったら、休憩時間終了間際にアナウンスが。

また電子音(補聴器のハウリング?)が発生したらしい。

ダウスゴーのときもそうだった(東京芸術劇場)。
他のコンサートでは聞かないから、都響の定期会員?

近くにいる人でもわからないのかなぁ。
自分だったら「この人が原因?」と思ったら慎重に確かめた上で係員に伝えるけどな。

お客がノータッチで係員任せにしてたら、この先当分見つけられないんじゃないかなぁ😞

ブルックナーのときはピアニシモになるたび電子音が響きわたって、興醒めも甚だしかった。

「ロマンティック」の初稿は7月にグザヴィエ=ロトでも聴いた。

なかなか生で聴けない初稿がたまたま続いたわけだが、ロトの方が面白く聴けた。

今日のインバルはブルックナーの筆の粗さを際立たせているように感じた。

未完成さ、青さを全面にということ。

それって、博多華丸・大吉が新人のころのネタを今また演じるみたいなものでは?😅

それはそれで面白い見せ方だけど、ネタ自体の完成度は低いからそのままやられてもあまり笑えないはず。

今の視点からのツッコミなどがあって笑えるものだと思う。

インバルの今日の演奏は昔のネタをただやりましたってだけに聴こえた。

一番つまらなく感じたのは、団員が面白そうに弾いていなかったこと。

学校の授業は、先生が自分の教えてる内容を面白く感じてるかで生徒の感じ方が変わってくる。
先生自身がつまらなく感じながら教えてて生徒が楽しく感じるわけがない。

オーケストラから「この曲こんなに面白いんですよ!」という声が聞こえてこなかった。

インバルのレクチャーのせいなのかもしれないが、いわゆる「この曲はこう演奏するのが正しい」というタイプの演奏。

みんな「楽しい演奏」より「正しい演奏」を目指してるから、聴いててつまらない。

ブルックナー自身は表現意欲に駆られて、作曲技法が下手なりに頑張って書いたはずなので、そこには作曲の喜びや満足があると思うのに、今日聴いててほとんどそうしたものを感じなかった。

第4楽章後半になってようやくブルックナーらしい管弦楽の充実した厚みが出てきたが、それまでの響きはわりと薄かった。

オーケストラの編成は16型(コントラバス8!)。
いまどき珍しいストコフスキー配置(チェロが1stヴァイオリンの向かい)だった。

今日は今年最後のオーケストラ公演。

都響は今年一番聴いた。リットンのコープランド。マケラのマーラー。マケラのショスタコーヴィチ。大野のブラームス。ダウスゴーのニールセン。そして今日のインバル。

都響って汗をかかないオケという印象。
矢部さんの印象もあるかもしれない。

都会的、スマート、スタイリッシュな雰囲気は美点だろうが、東響やシティフィルに比べると熱さやアマチュア精神が乏しい。

N響も似たところはあるが、マロさんではなく白井さんがコンマスだとみんなのびのび弾いてるように見える。
都響もたまに若いゲストコンマスに来てもらうといいかもしれない。

インバルは日本人的に全員を平等に立たせたりせず、きちんと順番をつけて立たせているのがよかった(本来そうあるべきだ)。

「ロマンティック」が終わってインバルがはけると、バタバターっと大勢の客が帰り出してびっくりした。遠方の人だったのか。

ブロムシュテットは12年ぶりに聴いて感動を強くしたが、インバルはよくわからないまま。

2024年度から第3期都響マーラー・シリーズを開始するらしい。
インバルはマーラーの方が合ってる気がする。

もう一回聴かないと何とも言えないな。

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